法人から非対面で中古品を買い取る場合の本人確認方法

法人から中古品を宅配・郵送・オンラインなどで買い取る場合、

「法人の登記事項証明書を確認すればよいのか」
「実際にやり取りする担当者の本人確認も必要なのか」
「免許証のコピーを送ってもらえば足りるのか」

と迷いやすいところです。

結論からいうと、法人との取引でも、実際の取引担当者について住所・氏名・年齢・職業を確認する必要があります。

さらに非対面取引では、免許証等のコピーや住民票の写しを受け取るだけでは足りません。

古物営業法・古物営業法施行規則で認められた確認方法の条件を満たす必要があります。

ただし、

「法人から買い取るなら、登記事項証明書+委任状を必ず用意する」

と一律に考えるのも適切ではありません。

法人からの非対面買取は、

誰を確認するか
→ どの確認方法を使うか
→ その方法では何が必要か
→ 自社の申込みから支払いまでどう組み込むか

の順番で考えると整理しやすくなります。

この記事のポイント

1.法人取引でも実際の取引担当者を確認する
法人名だけを確認して終わりではありません。実際に取引を行う担当者について必要な確認を行います。

2.「本人確認書類を受け取ること」と「本人確認が完了すること」は別
非対面では、コピーや画像の取得に加え、選んだ確認方法に応じた措置が必要です。

3.必要書類を先に決めず、使う確認方法を先に決める
登記事項証明書や委任状等が登場する公式例はありますが、すべての法人取引で同じ書類セットが必須とは限りません。

4.本人確認は買取業務全体の仕組みとして考える
申込み、担当者確認、商品受領、査定、支払いまで含めて運用できる方法を選ぶことが重要です。

法人から買い取る場合、誰を本人確認するのか

法人取引で最初に整理したいのは、

「会社を確認すればよいのか、それとも担当者を確認するのか」

という点です。

警察の公式案内では、法人相手の取引であっても、法人の取引担当者の住所・氏名・年齢・職業を確認しなければならないと明記されています。

したがって、

「法人との取引だから、会社の登記だけ確認すれば本人確認は終わり」

とは考えないようにしましょう。

まず実際の取引担当者を特定する

法人から中古品を買い取るといっても、代表取締役本人が手続きをするとは限りません。

総務担当者、店舗責任者、資産管理担当者などが売却窓口になる場合もあります。

そのため、最初に、

  • 売主となる法人はどこか
  • 実際に取引する担当者は誰か
  • どの非対面確認方法を利用するのか

を分けて整理します。

ここが曖昧なまま「必要書類は何ですか」と考えると、登記事項証明書、委任状、本人確認書類等がそれぞれ何のために必要なのか分かりにくくなります。

担当者本人の確認と、法人との関係を混同しない

法人取引では、

「この人は誰か」

という確認と、

「採用する確認方法の中で、この人と法人との関係をどう確認するか」

を分けて考えると整理しやすくなります。

警察が示す法人取引の具体例には、取引担当者が法人の取引を担当している旨を記載した委任状等を使用するものがあります。

ただし、これは後述する特定の確認方法について示された法人取引の例です。

「従業員が担当する法人取引では常に委任状が必須」

と一般化しないよう注意してください。

非対面では、法令で認められた確認方法を使う

インターネット、電話、FAXなどを利用し、相手と直接対面せずに古物を買い受ける場合には、非対面取引で認められた確認方法を利用します。

警視庁は、古物営業法第15条第1項第3号と古物営業法施行規則第15条第3項に基づく複数の方法を案内しています。

ここでは法令上の方法を一つずつ羅列するのではなく、法人買取を設計するうえで理解しておきたい代表的な考え方に整理します。

確認方法の考え方主な仕組み自社で特に確認すること
郵送・到達確認を使う所定の資料取得と、記載住所への郵送・到達確認等を組み合わせる何を送り、どの方法で到達を確認するか
口座への入金を使う所定の資料確認と、預貯金口座への代金入金等を組み合わせる誰の名義の口座を使う方式なのか、必要資料は何か
オンラインで確認する容貌画像、本人確認書類画像、ICチップ情報等を所定の方法で確認する導入システムが法令上の方式の条件を満たしているか
確認済みの相手を識別する初回に確認済みの相手について、所定の識別方法で本人であることを確かめる2回目以降のなりすましをどう防ぐか

※この表は理解しやすくするための整理であり、法令上の正式な分類ではありません。

大切なのは、一部だけを取り出して自己流で組み合わせるのではなく、採用した方法に定められている条件を一つのセットとして満たすことです。

免許証のコピーを送ってもらうだけでは足りない

非対面買取で特に誤解しやすいのが、

「免許証などの本人確認書類を取得した=本人確認完了」

と考えてしまうことです。

警視庁・大阪府警はいずれも、免許証等のコピーや住民票の写しを送ってもらうだけでは不十分である旨を案内しています。

ここは、

「コピーではダメ」ではなく「コピーだけではダメ」

と考えるのが正確です。

本人確認書類のコピーや画像を利用する確認方法自体はあります。

たとえば公式案内には、本人確認書類等のコピーを取得したうえで、

  • 記載された住所へ転送しない取扱いの簡易書留等を送る
  • その到達を確認する
  • 本人名義の預貯金口座への代金入金と組み合わせる

といった方法が示されています。

したがって、自社のWebフォームで免許証画像をアップロードしてもらっている場合も、

画像を取得しているか

ではなく、

画像取得後の措置まで含め、採用している確認方法全体が条件を満たしているか

を見る必要があります。

法人名義口座を使う公式の法人取引例

法人相手の非対面買取を具体的にイメージしやすいのが、警察が示している法人取引の例です。

住民票の写し等と預貯金口座への代金入金を組み合わせる方法について、公式案内では法人取引の例として、

  • 取引担当者自身の住民票の写し等
  • 法人の登記事項証明書
  • 取引担当者が法人の取引を担当している旨を記載した委任状等
  • 同法人名義の預貯金口座への代金振込

を組み合わせる流れが示されています。

この例を見ると、

担当者本人についての確認
と
法人との取引であることに関係する確認

の両方が必要になる理由を理解しやすくなります。

「法人なら登記事項証明書+委任状」と固定しない

ここは非常に重要です。

前記は、警察が示している特定の非対面確認方法についての法人取引例です。

したがって、

法人から買取
→ 必ず登記事項証明書+委任状

というルールではありません。

考える順序は、

自社が採用する本人確認方法を決める
→ その方法を法人取引で使う場合に必要な資料・措置を確認する

です。

最初から必要書類一覧を固定するより、この順番の方が制度と実際の運用を一致させやすくなります。

オンライン本人確認は「画像アップロード」と同じではない

法人向け宅配買取をオンラインで完結させたい場合、eKYCなどの仕組みを検討することもあるでしょう。

古物営業の非対面確認には、容貌画像、写真付き本人確認書類の画像、本人確認書類のICチップ情報等を利用する方式があります。

ただし、

「免許証をスマートフォンで撮影してアップロードできる」

というだけでは足りません。

警察の公式案内では、採用する方式に応じて、

  • 古物商が提供するソフトウェアを利用する
  • その場で撮影した画像を送信させる
  • 本人確認書類の厚み等を確認できる画像を利用する
  • ICチップ情報を利用する

などの条件が示されています。

したがって、eKYCサービスを検討するときは、

「eKYCと書いてあるから使える」

ではなく、

古物営業法施行規則上のどの確認方式に対応し、必要な条件をどのように満たしているのか

まで確認することが重要です。

自社ではどの本人確認方法を選べばよいか

ここまで読んで、

「方法が複数あるのは分かった。では、当社はどれを使えばよいのか」

という疑問が残るはずです。

法令上認められた方法であることを前提に、実際の運用では次の順番で比較すると整理しやすくなります。

Webだけで完結させたいか

オンライン完結を重視する場合は、画像・ICチップ情報等を利用する方式について、自社システムまたは導入予定サービスが必要条件を満たすか確認します。

単に画像を保存できるだけでは判断できません。

郵送工程を許容できるか

住所への郵送・到達確認を利用する方法では、その工程に必要な時間と作業を買取フローへ組み込む必要があります。

多数の取引を継続する場合は、日常業務として安定して処理できるかも重要な判断材料です。

法人名義口座への振込を利用したいか

法人名義口座への代金振込を利用する公式の法人取引例があります。

この方式を検討する場合は、振込だけを見るのではなく、担当者の資料、法人の資料、委任状等を含めた一連の確認方法として検討します。

継続的に同じ法人から買い取るか

初回だけでなく2回目以降の取引も多い事業であれば、初回確認後に「確認済みの相手本人であること」をどう識別するかまで考えておくと、業務設計がしやすくなります。

つまり、選ぶ基準は、

「書類が一番少なそうな方法」

ではなく、

「自社がその条件を正確かつ継続的に満たせる方法」

です。

本人確認を申込みから支払いまでの業務フローに組み込む

方法を決めたら、本人確認だけを独立した作業にせず、自社の買取フローへ落とし込みます。

たとえば、現在の業務について、

申込み
→ 法人・担当者情報の取得
→ 必要資料・情報の取得
→ 選択した方法による確認
→ 商品受領・査定
→ 代金支払い

の関係を書き出します。

ただし、これは法令上の一律の固定手順ではありません。

非対面本人確認には、本人限定受取郵便等による代金送付や、預貯金口座への代金入金そのものを確認措置へ組み込む方法もあります。

したがって、

「本人確認を全部終わらせてから、最後に必ず振り込む」

という一つの順番をすべての方式へ当てはめることはできません。

選んだ方法について、

  • 何を取得するか
  • 誰について確認するか
  • 住所確認等をどう行うか
  • 商品をいつ受け取るか
  • 支払いを確認措置へ利用するか
  • どの時点で必要な確認が成立するか

を一続きで整理します。

ここまで行うことで、本人確認が単なる「身分証を集める作業」ではなく、買取業務そのものの設計として見えてきます。

導入前にこの7項目を整理する

自社の方法が適切か確認するときは、次の7項目を書き出してみてください。

  1. 何を買い取るのか
  2. 取引金額はいくらか
  3. 実際の法人側の取引担当者は誰か
  4. どの非対面確認方法を利用するのか
  5. その方法で何を取得・確認するのか
  6. 申込み・商品受領・査定・支払いのどこで各確認を行うのか
  7. 同じ法人との2回目以降の取引をどう確認するのか

この状態まで整理できれば、管轄警察へ確認する場合も、

「法人から非対面で買い取りたいのですが、どうすればいいですか」

ではなく、

「当社ではこの取引フローと確認方法を予定しています。この方法で必要条件を満たせるか確認したいです」

と具体的に相談しやすくなります。

1万円未満なら本人確認は不要なのか

本人確認義務には金額による例外があります。

原則として取引対価の総額が1万円未満の場合は相手方確認義務が免除されますが、一定の古物については1万円未満でも確認が必要です。

そのため、

「1万円未満だから確認不要」

と金額だけで判断しないでください。

この記事の中心は法人の非対面本人確認なので、品目別の例外をここで細かく広げる必要はありません。

実際の取扱品目について免除対象になるか疑問がある場合は、現行の古物営業法・古物営業法施行規則と警察の最新案内を確認してから判断しましょう。

同じ法人との2回目以降の取引はどうする?

過去の取引で所定の確認措置を行った相手については、一定の条件のもと、確認済みの本人を識別する方法も設けられています。

警察の案内では、本人確認済みの会員について、ID・パスワード等を利用して会員ページへログインさせる例が示されています。

一方、メールや申込書に会員番号・パスワードを書かせるだけでは足りないとされています。

したがって、

「初回に確認したから、2回目以降は何もしなくてよい」

という意味ではありません。

継続取引を予定している場合は、初回確認とあわせて、次回以降に確認済みの相手本人であることをどう確かめるかまで仕組みにしておきましょう。

よくある質問

相手も古物商なら本人確認は不要ですか?

いいえ。

警視庁は、古物商同士の取引であっても相手方確認義務は免除されないと案内しています。非対面で買い受ける場合は、必要となる非対面確認方法を取る必要があります。

代表取締役本人が取引する場合、委任状は不要ですか?

この記事で確認した公的情報だけから、すべての取引方法について一律に「不要」と断定することはできません。

重要なのは、代表者か従業員かという一点だけで決めるのではなく、採用する非対面確認方法について何が必要とされているかを確認することです。

特定の法人取引例に委任状等が示されていることを、そのまますべての方式へ一般化しないようにしましょう。

法人の非対面買取では「書類」ではなく「確認の仕組み」を作る

法人から非対面で中古品を買い取る場合、最初から登記事項証明書、委任状、免許証等の「必要書類一覧」を作ると、かえって整理しにくくなります。

先に考えたいのは、

誰を確認するか
→ どの本人確認方法を使うか
→ その方法の条件は何か
→ 自社の取引フローへどう組み込むか

です。

法人取引でも、実際の取引担当者について必要な確認を行います。

非対面取引では、本人確認書類のコピーを送ってもらうだけでは足りません。

一方、警察が示している一つの法人取引例を見て、

「どの法人取引でも登記事項証明書と委任状が必須」

と決めつけることも避ける必要があります。

最終的に作るべきなのは、

書類をたくさん集める仕組みではなく、採用した本人確認方法の条件を漏れなく満たし、実際の買取業務として継続運用できる仕組み

です。

自社で判断しにくい場合

まずは前述した7項目まで自社の取引方法を書き出し、警察の最新の公式案内と照らし合わせてください。

非対面取引の確認方法は、警視庁・各都道府県警察の公式情報で確認できます。
警視庁「非対面取引における確認の方法」

大阪府警察にも非対面取引の本人確認方法と法人取引の具体例があります。
大阪府警察「非対面取引における本人確認の方法」

自社の具体的なフローへ当てはめても判断できない場合は、予定している取引方法を具体化したうえで管轄警察へ確認すると論点を整理しやすくなります。

また、本人確認方法そのものではなく、

  • 自社ではどの方式を選ぶべきか
  • 既存の申込フローをどう直すか
  • 法人・担当者・支払いをどう整理するか
  • 警察へ何を確認すればよいか

という運用設計の段階で整理が難しい場合は、古物営業を扱う行政書士等へ相談することも選択肢です。