「1万円未満の買取なら、本人確認はしなくてもよい」
室外機や電線、グレーチングの買取について、この認識のまま運用している場合は注意が必要です。
2025年10月1日から、エアコンディショナーの室外ユニット、電気温水機器のヒートポンプ、電線、金属製グレーチングは、古物として買い受ける場合、1万円未満でも相手方の確認義務と帳簿等への記載等義務が免除されない物品に追加されました。
ただし、実際の買取現場では、金額より先に確認した方がよいことがあります。
それは、
「この品物は、本来の用途でまだ使える古物なのか」
という点です。
壊れて本来の用途に使用できない状態なら、古物営業法ではなく、金属盗対策法や地域の金属くず条例など、別の制度を確認する必要がある場合があります。
この記事では、室外機・電線・グレーチングを買い取る古物商が、何をどの順番で確認すればよいかまで整理します。
この記事のポイント
1.対象品は1万円未満でも本人確認・記録が必要
室外機等の対象となる古物は、「買取額が数千円だから」という理由だけで相手方確認や帳簿記載を省略できません。
2.1万円は1品ごとの価格ではなく「対価の総額」で見る
古物営業法上の1万円未満の免除は、買い受ける取引の対価の総額を基準にしています。
3.金額より先に「古物として扱う状態か」を確認する
本来の用途で使用できない金属製品なら、古物営業法以外の制度を確認する必要がある場合があります。
4.本人確認だけでなく、帳簿等への記録までが一連の対応
住所・氏名・職業・年齢の確認に加え、取引内容や確認方法を帳簿等へ記録します。
まず結論|対象となる室外機等は1万円未満でも本人確認が必要
今回の記事で最初に押さえたい結論は次のとおりです。
| 確認すること | 結論 |
|---|---|
| 対象となる室外機・ヒートポンプ | 1万円未満でも相手方確認・帳簿記載等が必要 |
| 対象となる電線 | 1万円未満でも相手方確認・帳簿記載等が必要 |
| 金属製グレーチング | 1万円未満でも相手方確認・帳簿記載等が必要 |
| 1万円の基準 | 1品ごとの価格ではなく、取引の対価の総額で判断 |
2025年10月1日施行の古物営業法施行規則改正によって、これらの物品が、1万円未満の場合でも相手方の確認義務等を免除しない古物に追加されました。
そのため、たとえば対象となる室外機を5,000円で買い取る場合でも、
「1万円未満だから本人確認しなくてよい」
という判断はできません。
ただし、ここでもう一つ重要なのが、その室外機等がそもそも古物として扱われる状態なのかという問題です。
金額より先に「古物」なのか「金属くず」なのかを確認する
室外機や電線の買取では、この判断が特に重要です。
同じ「室外機」と呼ばれていても、その状態によって確認する制度が変わる可能性があります。
本来の用途で使用できる物は古物として確認する
警察の公式案内では、金属製品が本来の用法で使用可能な場合は古物営業法の対象と整理されています。
たとえば、建物から取り外されたエアコン室外機でも、室外機として引き続き使用できる状態なら、古物として本人確認等のルールを確認します。
つまり、
「建物から外した=金属くず」ではありません。
まず見るべきなのは、取り外されているかどうかではなく、
本来の用途でまだ使用できる状態か
という点です。
本来の用途で使用できないなら、金属くず側の制度も確認する
一方、破壊されて修復できない室外機など、本来の用途では使用できない物は、金属くずとして別制度を確認する必要があります。
大阪府警は、切断された銅線についても、本来の用途では使用できないものとして説明しています。
ここで注意したいのは、
古物でなければ、すべて金属盗対策法上の「特定金属くず」になるわけではない
ことです。
2026年6月1日からは、「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」、いわゆる金属盗対策法による特定金属くず買受業の規制も施行されています。
ただし、現行の特定金属くずは、主として銅により構成される金属くずが対象です。
そのため、本来の用途に使えない金属製品については、
- 金属盗対策法の対象になるか
- 営業地域に金属くず営業に関する条例があるか
- 自社の取引にどの制度が適用されるか
を分けて確認する必要があります。
2025年10月1日の古物営業法施行規則改正と、2026年6月1日施行の金属盗対策法は別の制度です。
混同しないようにしましょう。
本人確認の対象になる室外機・電線・グレーチングはどこまで?
「室外機」「電線」「グレーチング」という日常的な呼び方だけでは、対象範囲を正確に判断できない場合があります。
室外機だけでなく電気温水機器のヒートポンプも対象
対象となるのは、いわゆるエアコン室外機だけではありません。
古物営業法施行規則では、
エアコンディショナーの室外ユニット及び電気温水機器のヒートポンプ
が対象となっています。
自社で「室外機」とひとまとめにして管理している場合は、実際に扱っている品物と法令上の対象範囲を照らし合わせておくとよいでしょう。
電線は素材を問わないが、すべてのケーブルではない
今回の「電線」については、素材は限定されていません。
一方、警視庁は次のような物を対象外として案内しています。
- LANケーブル
- テレビ接続ケーブル
- 家庭用延長コード
- 充電ケーブル
つまり、
「銅製なら全部対象」でも、「ケーブルなら全部対象」でもありません。
普段扱う電線・ケーブル類について、対象となる物と対象外の物を社内で整理しておくと、受付担当者ごとの判断のばらつきを減らせます。
グレーチングは金属製のものが対象
グレーチングは、主として側溝のふた等に使われる格子状の物です。
今回の対象は金属製のグレーチングであり、コンクリート製のものは対象外です。
グレーチングについては、品名だけでなく材質も確認する運用にすると判断しやすくなります。
本人確認では住所・氏名・職業・年齢を確認する
古物営業法上、古物を買い受ける際の相手方確認では、原則として次の4事項が重要になります。
- 住所
- 氏名
- 職業
- 年齢
警視庁も、古物を買い受ける際の相手方確認事項としてこの4項目を案内しています。
店頭買取では「身分証を見れば全部終わり」ではない
古物営業法施行規則第15条では、法第15条第1項第1号による確認方法として、
- 身分証明書
- 運転免許証
- 個人番号カード
- その他、住所・氏名・年齢または生年月日を証する一定の資料
などの提示を受ける方法が定められています。
ここで実務上見落としやすいのが職業です。
運転免許証などで住所・氏名・年齢等を確認できても、職業が記載されているとは限りません。
そのため、自社の受付票や買取システムを確認するときは、
住所・氏名・年齢だけでなく、職業まで確認できる運用になっているか
を見る必要があります。
「身分証を確認した」という事実だけで終わらず、法令上必要な4事項が実際に確認できているかを見ることが大切です。
非対面買取は店頭買取と同じ方法ではない
宅配買取やインターネット取引など、相手方と直接対面しない取引では、別途、法令で定められた確認方法を取る必要があります。
警視庁は、
免許証等のコピーや住民票の写しを送ってもらうだけでは足りない
と明示しています。
この記事は店頭・持込買取を中心にしていますが、宅配買取等も行う事業者は、対面買取と同じ本人確認マニュアルをそのまま使わないよう注意してください。
本人確認だけでなく帳簿等への記録まで行う
対象品の買受けでは、
本人確認したら終了
ではありません。
古物営業法第16条では、記録対象となる取引について、主に次の事項を帳簿等へ記載または電磁的方法で記録します。
- 取引年月日
- 古物の品目・数量
- 古物の特徴
- 相手方の住所・氏名・職業・年齢
- 相手方確認について行った措置の区分・方法
古物台帳の公式様式にも、これらの欄が設けられています。
つまり、後から、
誰から、いつ、何を買い、どのような方法で相手方を確認したのか
を追える状態にしておく必要があります。
帳簿等の保存期間は3年間
紙の帳簿については、最終の記載をした日から3年間保存します。
電磁的方法による記録は、その記録をした日から3年間保存します。
この2つは起算点の表現が異なるため、単に「3年間」とだけ覚えるより、社内ルールまで正確にしておく方が安全です。
買取現場では5段階で確認すると整理しやすい
室外機・電線・グレーチングの買取では、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
1.品物の状態を見る
まず、本来の用途で使用できる状態かを確認します。
「室外機だから」「電線だから」とすぐ金額の確認へ進みません。
2.古物として扱う物か確認する
本来の用途で使用可能なら、古物営業法側を確認します。
使用できない金属くず状態なら、金属盗対策法や営業地域の条例等を確認する必要がある場合があります。
3.古物なら今回の対象品か確認する
対象となるのは、
- エアコンディショナーの室外ユニット
- 電気温水機器のヒートポンプ
- 電線
- 金属製グレーチング
です。
電線やグレーチングについては、対象範囲まで確認します。
4.対象品なら金額だけで相手方確認を省略しない
対象となる古物なら、1万円未満だからという理由だけで相手方確認等を省略できません。
住所・氏名・職業・年齢について、法令上認められた方法で確認します。
5.帳簿等へ必要事項を記録する
取引年月日、品目・数量・特徴、相手方情報、本人確認方法等を記録します。
この5段階を受付マニュアルへ落とし込めば、
「1万円未満だったので本人確認をしなかった」
というミスだけでなく、
「そもそも古物ではない物に古物営業法だけを当てはめた」
という制度選択のミスも防ぎやすくなります。
不正品の疑いがある場合は「本人確認したから買い取れる」わけではない
もう一つ覚えておきたい点があります。
古物商が、買い受けようとする古物について不正品の疑いがあると認めた場合は、直ちに警察官へその旨を申告しなければなりません。
本人確認を行ったことと、疑わしい品物をそのまま買い取ってよいことは別問題です。
特に盗難リスクが問題となっている室外機や電線等を扱う場合は、本人確認・帳簿記録だけでなく、不審な持込みがあったときの社内対応も決めておくとよいでしょう。
判断に迷ったら、警察へ確認する前に情報を整理する
室外機や電線の買取では、個別の品物について判断しにくいケースもあります。
その場合は、少なくとも次を整理しておきましょう。
- 何を買い取るのか
- 材質は何か
- どのような状態なのか
- 本来の用途で使用できるのか
- 古物として買い取るのか、金属くずとして買い取るのか
- 対面取引か非対面取引か
- どの都道府県で営業しているのか
これらを整理したうえで、営業所を管轄する警察署や都道府県警察の担当窓口へ確認すると、論点を伝えやすくなります。
特に金属くずについては地域条例が関係する場合があるため、全国共通の説明だけで自社の運用を確定しないことが大切です。
よくある質問
買取額が5,000円の室外機なら本人確認は不要ですか?
その室外機が古物として今回の対象となる物であれば、5,000円だからという理由だけで相手方確認等を省略することはできません。
2025年10月1日から、対象となる室外機等は1万円未満の場合の免除対象から外れています。
1万円は1台・1本ごとの金額ですか?
古物営業法上の免除基準は、対価の総額です。
対象外の古物について1万円未満かどうかを判断するときも、1品ごとの単価だけを見るのではなく、取引全体の対価の総額を確認する必要があります。
なお、室外機・電線・金属製グレーチング等の今回の対象品は、1万円未満でも相手方確認義務等が免除されません。
LANケーブルや家庭用延長コードも対象ですか?
警視庁の公式案内では、LANケーブル、テレビ接続ケーブル、家庭用延長コード、充電ケーブルなどは、今回の規定上の電線の対象外とされています。
「ケーブルなら全部対象」と一律に判断しないようにしてください。
壊れた室外機にも同じ古物商の本人確認ルールが適用されますか?
必ずしも同じとは限りません。
本来の用途で使用できる状態なら古物として確認しますが、破壊されて本来の用途に使用できない状態なら、金属くずとして金属盗対策法や地域の条例等を確認する必要がある場合があります。
また、使用不能な金属製品だからという理由だけで、すべてが金属盗対策法上の特定金属くずになるわけではありません。
宅配買取なら免許証のコピーをもらえば本人確認できますか?
それだけでは足りません。
非対面取引では、法令で定められた方法で相手方の真偽を確認する必要があり、警視庁は免許証等のコピーだけでは不十分と案内しています。
公式情報も確認しておく
制度の最新情報を自社でも確認できるよう、次の公式ページを押さえておくと便利です。
警視庁「古物営業法施行規則の一部改正について」
古物営業法施行規則の一部改正について
警察庁「金属盗対策」
金属盗対策
警視庁「非対面取引における確認の方法」
非対面取引における確認の方法
地域の金属くず条例や運用については、営業地域を管轄する都道府県警察の最新情報も確認してください。
まとめ|「1万円未満か」より先に「何を、どの状態で買うか」を見る
室外機・電線・金属製グレーチングなどを古物として買い受ける場合、2025年10月1日以降は、1万円未満だからという理由だけで相手方確認・帳簿等への記載等を省略することはできません。
ただし、現場で最初に見るべきなのは金額だけではありません。
まず、
本来の用途で使用できる状態か
を確認します。
そのうえで、
- 古物として扱うのか、金属くずとして別制度を確認するのか
- 古物なら対象品に該当するか
- 相手方について何を確認するか
- 帳簿等へ何を記録するか
- 不正品の疑いがないか
という順番で整理すると、実際の買取業務へ落とし込みやすくなります。
室外機や電線を日常的に買い取っている事業者は、身分証の確認方法だけでなく、
- 受付票
- 古物台帳
- 買取システム
- スタッフ向けマニュアル
- 不審な持込みがあった場合の対応
まで一連の流れとして確認しておくとよいでしょう。
自社の取扱品が古物か金属くずか判断しにくい場合や、全国法と地域条例の関係を整理しにくい場合は、品物の状態・材質・取引方法・営業地域を整理したうえで、管轄警察署等へ確認してください。
個別の営業形態や社内の買取フローまで含めて整理が必要な場合は、古物営業や金属くず関係の手続きを扱う専門家へ相談することも選択肢になります。

