中古医療機器の買取・販売を始めるとき、
「中古品だから古物商許可を取れば営業できるのでは?」
と考える方もいるでしょう。
しかし、中古医療機器の場合、古物商許可だけを見て営業できるかどうかを判断することはできません。
まず「中古機器をどのように取得するのか」という古物営業法上の確認が必要です。
そのうえで、「どの医療機器を扱うのか」に応じて医療機器販売業の許可・届出を確認します。
さらに、中古医療機器には製造販売業者への事前通知等のルールがあり、販売前に修理まで行うなら医療機器修理業も別に検討します。
厚生労働省も、中古医療機器のネット販売、販売業許可、修理、製造販売業者への通知をそれぞれ別の論点として整理しています。
最初に全体像を整理すると、次のようになります。
| 予定していること | 最初に確認すること |
|---|---|
| 他者から中古医療機器を買い取って再販売する | 古物商許可の要否 |
| 自社・医療機関が保有していた機器を売却する | 古物営業法上「売却のみ」に当たるか |
| 医療機器を販売する | 機器の分類と販売業の許可・届出 |
| 中古医療機器を販売する | 製造販売業者への事前通知等 |
| 販売前に修理・整備をする | その作業が「修理」に当たるか |
つまり、
どう仕入れるか → 何を扱うか → 中古販売時に何が必要か → 修理まで行うか
の順で考えると、自分の事業に必要な手続を整理しやすくなります。
中古医療機器の販売に古物商許可は必要?
結論からいうと、中古医療機器を販売するという事実だけで、古物商許可が必ず必要とは判断できません。
重要なのは、
その中古医療機器をどのように取得し、どのような事業として販売するのか
です。
警察庁の2026年5月14日付けの最新の解釈運用基準では、古物営業における「営業」は、営利目的で同種類の行為を反復継続して行うことを基本としています。
また、「古物を売却すること」等のみを行う営業は古物営業から除外され、フリマサイト等の取引についても取引実態や営利性などから個別具体的に判断するとされています。
警察庁「古物営業法等の解釈運用基準」(2026年5月14日)
中古医療機器を買い取って再販売する場合
病院、クリニック、事業者などから中古医療機器を買い取り、仕入れて再販売するのであれば、古物営業への該当性を確認する必要があります。
たとえば、
- 医療機関から中古機器を買い取る
- 中古機器を継続的に仕入れて販売する
- 買取りと再販売を事業として行う
といったケースです。
警察庁の解釈運用基準でも、古物の買取りを行って販売する形態は古物営業に該当し得る一方、無償等で引き取った古物を販売する形態などでは異なる整理が示されています。
そのため、
「医療機器だから古物商許可が必要」と考えるのではなく、「中古品をどう取得して再流通させるのか」を確認する
ことがポイントです。
自社で使用していた医療機器を売る場合は同じとは限らない
一方、自社や医療機関が保有・使用していた医療機器を処分するために売却する場合まで、他者から中古品を買い取って再販売する事業と同じになるとは限りません。
警察庁の現行解釈では、「古物を売却すること」のみを行う営業は古物営業から除外されます。
したがって、
他者から中古機器を買い取って再販売するケース
と、
自ら保有していた機器を売却するケース
は分けて整理してください。
大型・据付型の医療機器は「古物に該当するか」も確認する
大型・据付型の機械では、そもそも古物営業法上の「古物」に含まれない場合があります。
警察庁の現行基準では、一定の方法で土地・建造物に固定され、容易に取り外せず、重量が1トンを超える機械について除外に関する具体的な条件が示されています。
そのため、大型の中古医療機器については、
「中古だから当然に古物商許可の対象」と決めつけず、具体的な機器と設置状態を確認する
ことが必要です。
古物商許可だけで営業できるかは判断できない|医療機器側も確認する
古物商許可と、医療機器販売業に関する許可・届出は別の制度です。
古物営業法上の確認が終わったからといって、それだけで中古医療機器を販売できるとは限りません。
医療機器は、取り扱う機器の分類によって販売・貸与に必要な手続が変わります。東京都の公式案内では、医療機器はリスクに応じて高度管理医療機器・管理医療機器・一般医療機器に分類され、これとは別に特定保守管理医療機器が指定されています。
| 医療機器の区分 | 販売・貸与に関する基本的な手続 |
|---|---|
| 高度管理医療機器 | 高度管理医療機器等販売業・貸与業の許可 |
| 管理医療機器 | 原則として販売業・貸与業の届出 |
| 一般医療機器 | 原則として販売業・貸与業の許可・届出不要 |
| 特定保守管理医療機器 | 元のリスク区分にかかわらず許可対象 |
管理医療機器の中には販売業の届出が不要となるものもあるため、「管理医療機器なら必ず届出」と一律には判断できません。
東京都保健医療局「医療機器のリスク分類と販売業・貸与業の許可・届出」
取扱予定の医療機器の分類を確認する
中古医療機器を扱う場合は、商品名や見た目だけから分類を推測しないことが大切です。
東京都の公式案内では、取扱医療機器の分類について、製造販売業者または取引先へ確認するよう案内しています。
まず、
- 高度管理医療機器か
- 管理医療機器か
- 一般医療機器か
- 特定保守管理医療機器に該当するか
を確認し、その結果から必要な販売業手続を整理します。
一般医療機器でも「中古販売なら別に必要な対応」がある
中古医療機器で特に注意したいのが、
「販売業の許可・届出が不要」=「中古品として何の対応も不要」ではない
という点です。
医薬品医療機器等法施行規則では、使用された医療機器を他に販売・授与・貸与等しようとするとき、原則として、あらかじめ当該医療機器の製造販売業者へ通知することが規定されています。
また、製造販売業者から品質確保等について指示を受けた場合は、その指示を遵守する必要があります。
厚生労働省のQ&Aでも、一般医療機器を含む中古医療機器をネットオークション等で販売する場合について、製造販売業者への通知が必要であることが示されています。
東京都の遵守事項一覧でも、「中古品販売時の通知等」は各区分で義務として整理されています。
つまり、中古医療機器では、
①自社に必要な販売業の許可・届出を確認する
②実際に中古品を販売するときの通知等を確認する
という二段階で考える必要があります。
なお、取引相手や取得経路によって通知義務の例外が関係する場合があります。
個別の商流へ当てはめるときは、
誰から取得し、誰へ販売するのか
まで整理してください。
厚生労働省は、中古医療機器販売時の通知に使える参考様式も公表しています。
販売前に作業をするなら「修理」に当たるか確認する
中古医療機器を扱う事業では、
「買い取った機器を整備してから販売したい」
というケースもあります。
この場合は、中古販売と医療機器の修理を分けて考える必要があります。
厚生労働省は医療機器の修理について、故障・破損・劣化等の箇所を本来の状態・機能へ復帰させることとし、オーバーホールも含むと整理しています。業として修理を行う場合には医療機器修理業の許可が必要です。
一方で、同通知では、清掃、校正(キャリブレーション)、消耗部品の交換等の保守点検は修理に含まれないとされています。
したがって、
中古医療機器に何らかの作業をする=必ず修理業許可が必要
というわけではありません。
重要なのは、
販売前に自社が具体的に何をするのか
を整理することです。
また、実際の修理作業を他の修理業者へ委託していても、自社が医療機関等から修理契約そのものを受ける形態では、修理業許可が必要とされています。
中古医療機器事業を始める前の6つの確認
中古医療機器の許認可は、制度名から一つずつ調べるより、実際に行う事業から逆算して整理する方が分かりやすくなります。
1.中古医療機器をどのように取得するか
まず、仕入れ・取得方法を整理します。
たとえば、医療機関から買い取るのか、中古業者から仕入れるのか、自社保有品を売却するのか、といった違いです。
2.古物商許可が必要な取引なのか確認する
他者から中古機器を買い取って再販売する事業なのか、保有品の売却だけなのかを整理します。
大型・据付型の機器では、古物営業法上の「古物」に該当するかも確認します。
3.医療機器の分類を確認する
製造販売業者や取引先への確認などにより、
- 高度管理医療機器
- 管理医療機器
- 一般医療機器
- 特定保守管理医療機器
のどこに該当するかを整理します。
4.販売業の許可・届出を確認する
機器の分類を基に、
- 許可が必要か
- 届出が必要か
- 許可・届出が不要か
を確認します。
これは古物商許可とは別の確認です。
5.中古品販売時の通知等を確認する
製造販売業者への事前通知と、指示を受けた場合の対応を確認します。
一般医療機器だからという理由だけで、この確認を省略しないことが重要です。
6.販売前に修理まで行うか確認する
清掃・保守点検だけなのか、故障箇所の修理やオーバーホール等を行うのかを整理し、必要に応じて修理業許可との関係を確認します。
小野馨の一言
中古医療機器の許認可は、許可名から一つずつ調べるより、「どう仕入れるか」「何を扱うか」「販売前に何をするか」を先に整理すると全体像をつかみやすくなります。古物商許可だけを入口にしても、医療機器側の手続や中古販売時のルールが別に残ることがあるため、事業内容から順番に確認することが大切です。
よくある質問
中古医療機器なら必ず古物商許可が必要ですか?
必ず必要とは限りません。
他者から中古医療機器を買い取って再販売するのか、自ら保有していた機器を売却するだけなのかなど、取引実態を分けて確認します。警察庁の現行基準でも「売却のみ」の営業やフリマ等について条件ごとの整理が示されています。
古物商許可があれば中古医療機器を販売できますか?
古物商許可だけでは判断できません。
取扱医療機器の分類によって販売業の許可・届出が必要になる場合があり、中古医療機器を販売するときの製造販売業者への通知等も別に確認する必要があります。
一般医療機器なら中古でも特別な対応はありませんか?
そうとは限りません。
一般医療機器のうち特定保守管理医療機器に該当しないものは販売業の許可・届出が原則不要ですが、中古品販売時の通知等は別のルールです。
フリマサイトやネットオークションなら許可は不要ですか?
インターネット上の販売だから、古物営業法や医療機器側の規制がなくなるわけではありません。
厚生労働省のQ&Aでは、ネットオークションやフリマサイトで中古医療機器を業として販売するケースも明示的に扱われています。
また、古物営業該当性についても、警察庁はフリマサイト等の取引実態・営利性などから個別具体的に判断するとしています。
中古医療機器を清掃して売るだけでも修理業許可が必要ですか?
清掃しただけで直ちに「修理」に当たるわけではありません。
厚生労働省の通知では、清掃、校正、消耗部品交換等の保守点検は修理に含まれない一方、故障・破損・劣化した箇所を本来の状態・機能へ戻す行為などは修理として整理されています。
中古医療機器の許認可は「何をする事業か」から確認する
中古医療機器の事業では、
「古物商許可を取ればよいか」だけで考えないこと
が重要です。
まず、
- どうやって中古機器を取得するのか
- 何という医療機器を扱うのか
- その区分ではどの販売業手続が必要なのか
- 中古品として販売するとき何が必要なのか
- 修理まで行うのか
を整理してください。
行政窓口や専門家へ確認するときも、
- 取扱予定の医療機器
- メーカー・型式など機器を特定できる情報
- 仕入方法
- 販売先
- 店舗販売かインターネット販売か
- 販売前に行う作業
- 修理の有無
をあらかじめ整理しておくと、具体的な確認へ進みやすくなります。
医療機器側の許可・届出については、営業所所在地を所管する自治体の薬務担当窓口等で確認してください。
一方、中古医療機器事業のうち古物商許可の申請書類作成や申請手続について専門家の支援を希望する場合は、サクセスファン行政書士事務所の古物商許可サポートも確認できます。同事務所の公式サービスページでは、古物商許可の書類作成や代理申請のサービスが案内されています。
なお、医療機器販売業・貸与業や医療機器修理業について当事務所がどこまで受任対応するかは、本記事では確認済み情報として扱っていません。 これらをまとめて依頼したい場合は、対応範囲を確認してから相談してください。
主な公的確認先
古物営業法上の判断を確認する場合:
警察庁「古物営業法等の解釈運用基準」(2026年5月14日)
中古医療機器の販売・ネット販売・修理・通知について確認する場合:
厚生労働省「医療機器の販売業及び修理業の取扱いに関する質疑応答集(Q&A)」
中古販売時の製造販売業者への通知様式等を確認する場合:
厚生労働省「中古医療機器の販売等に係る通知等について」
医療機器の分類と販売業の許可・届出を確認する場合:
東京都保健医療局「医療機器のリスク分類と販売業・貸与業の許可・届出」


