「金やプラチナの買取を始めたいけれど、古物商許可は必要なのだろうか」
「中古ジュエリーなら分かるけれど、未使用品や金のインゴットも古物になるのか」
貴金属を扱う事業を始めるとき、このような疑問を持つ方は少なくありません。
結論からいうと、貴金属を扱うからといって、すべての取引で一律に古物商許可が必要になるわけではありません。
中古ジュエリー等を買い取って販売する営業では古物商許可が必要になる一方、金・白金の地金など、古物営業法上の「古物」に該当しないものもあります。
そのため、「金を扱うか」ではなく、
何を扱うのか
→ その物は古物か
→ どのように取得するのか
→ 取得後に何をするのか
の順番で確認することが大切です。
貴金属の売買に古物商許可は必要?まずケース別に確認
最初に、自分の事業がどのケースに近いか確認してみましょう。
| 想定している取引 | 古物商許可の基本的な考え方 |
|---|---|
| 中古の指輪・ネックレス等を買い取って再販売する | 原則として古物商許可が必要 |
| 未使用のジュエリーを買い取って販売する | 「未使用」だけで判断せず、流通の経緯を確認 |
| 金・白金の地金・インゴットを売買する | 地金自体は古物営業法上の「古物」に該当しない |
| 自分で使用していた貴金属を売却する | それだけで古物商許可が必要になるわけではない |
| 壊れたジュエリー・スクラップを買い取る | 現在の状態・用途・買取後の扱いを確認 |
この表だけで個別案件の結論をすべて出せるわけではありませんが、「貴金属」という商品名だけで判断しないことが最初のポイントです。
古物商許可が必要な取引・不要な取引全体の考え方は、古物商許可が必要な取引・不要な取引の境界線を解説した記事でも詳しく整理しています。
小野馨の一言
貴金属の許可要否は、「金だから」「中古だから」と商品名だけで考えると整理しにくくなります。まず、何を、誰から、どのように取得し、その後どう扱うのかを分けて考えると、確認すべき制度が見えやすくなります。
まず、その貴金属が古物営業法上の「古物」かを確認する
古物商許可を考える前提として、法律上の「古物」の意味を確認しておきましょう。
「古物」は一度使われた物だけではない
古物営業法上の古物には、
- 一度使用された物品
- 使用されていない物品でも、使用のために取引されたもの
- これらに幾分の手入れをしたもの
が含まれます。
つまり、「未使用=古物ではない」とは限りません。
愛知県警察も、古物の定義と13種類の取扱区分を公式に案内しています。
たとえば、一般消費者が自分で使用するために購入したジュエリーを、一度も使用せず買取店へ持ち込む場合、「一度も身に着けていない」という事実だけで古物ではないと判断することはできません。
未使用品では、どのような取引を経て現在の所有者へ渡ったのかまで見る必要があります。
金・白金の地金・インゴットは中古ジュエリーと別に考える
一方、金・白金の地金などは、中古ジュエリーと同じ扱いではありません。
国税庁の現行通達では、金・銀・白金といった貴金属の地金について、古物営業法上の古物に該当しないことが明記されています。警察庁資料でも、金・白金の地金等が古物に該当しない例として示されています。
したがって、
「金のインゴットを買い取って売るから、中古の金製ネックレスと同じ理由で古物商許可が必要」
とは整理できません。
同じ「金」でも、
中古の金製ジュエリー
と
金地金・インゴット
では、古物営業法上の出発点が異なります。
ただし、地金が古物ではないからといって、貴金属取引について他の法令確認まで不要になるわけではありません。後述する犯罪収益移転防止法などは別に確認します。
中古ジュエリー等を買い取って販売するなら古物商許可が必要
扱う物が古物に該当する場合、次に確認するのがどのような営業をするのかです。
古物を買い取り、それを販売する営業は、古物商許可が必要となる代表的なケースです。
また、買い取った古物を修理等して販売する場合や、委託売買、交換なども古物営業との関係を確認する必要があります。
貴金属買取店や中古ジュエリー販売を始める場合は、
商品が古物に該当するか
+
その古物を買い取って販売等する営業か
の2段階で考えると分かりやすくなります。
一般消費者から中古ジュエリーを買い取る場合
一般のお客様から中古の指輪やネックレス等を買い取り、再販売する事業は、古物商許可が必要となる典型的なケースです。
ここで重要なのは、
「貴金属だから許可が必要」なのではなく、「古物に該当する物を買い取って販売する営業だから許可が必要」
という点です。
この違いを理解すると、未使用品・地金・スクラップなどの判断もしやすくなります。
業者から仕入れる場合も自動的に対象外にはならない
「一般消費者から買わず、業者だけから仕入れるので古物商許可は関係ない」とは限りません。
扱う物が古物で、それを仕入れて販売する営業であれば、仕入先が事業者であることだけを理由に対象外になるわけではありません。
したがって、
- 一般消費者
- リサイクルショップ
- 他の古物商
- 古物市場
- オークション
- インターネット上の出品者
のどこから仕入れるのかだけではなく、何を、どのような取引で取得するのかまで整理しましょう。
ネットだけで営業しても許可判断は変わらない
店舗を持たず、オンラインだけで中古ジュエリー等を買い取って販売する場合でも、「ネットだから古物商許可が不要」ということにはなりません。
また、宅配買取など相手と直接会わない取引では、古物営業法に定められた非対面の確認方法を使う必要があります。警視庁は、運転免許証等のコピーや住民票の写しを受け取るだけでは足りないと案内しています。
自社の宅配・ネット買取でどの方法を採用すればよいかは、古物商の非対面本人確認方法を解説した記事で詳しく整理しています。
古物商許可が不要となる代表的なケースもある
古物に見える物を売却する場合でも、すべてが古物営業になるわけではありません。
たとえば、
- 自分で使用していた物を売る
- 自己使用目的で購入した未使用品を売る
- 無償で譲り受けた物を販売する
- 自分が売った相手から、その物を買い戻して販売する
- 自ら海外で買い付けて輸入した物を販売する
など、古物商許可が不要となる代表的なケースがあります。
たとえば、自分で使っていた指輪をフリマアプリで売却するだけで、直ちに古物商許可が必要になるわけではありません。
一方、
「自分が所有している物を売る」
と
「販売する目的で古物を仕入れて売る」
のは別です。
最初から転売する目的で商品を仕入れる事業まで、「いったん自分の物になったから許可不要」と考えないようにしましょう。
未使用のジュエリーも「新品だから対象外」と決めない
貴金属買取では、未使用の指輪やネックレスを買い取ることもあります。
ここで確認したいのは、使用したかどうかだけでは古物該当性を判断できないという点です。
未使用品では、
- どのような目的で購入された物か
- 誰から取得するのか
- それまでどのような取引を経てきたのか
まで整理します。
「新品」「未使用」「新品同様」といった販売上の表現と、古物営業法上の「古物」かどうかは必ずしも一致しません。
壊れたジュエリーや貴金属スクラップは状態と用途を整理する
切れたネックレス、片方だけのピアス、変形した指輪などを買い取る場合は、
「元はジュエリーだからすべて古物」
「壊れているからすべてスクラップ」
と一律には整理しない方が安全です。
確認したいのは、現在その物が、
- 本来の用途に従って使用できる物品なのか
- 修理して再び商品として使用するのか
- 溶解等を前提に素材として扱うのか
という点です。
境界が分かりにくい場合は、現物の状態と買取後の扱いを整理したうえで、管轄警察へ確認するとよいでしょう。
なお、2026年6月から始まった特定金属くず買受業の制度について、現在「特定金属くず」として対象になっているのは主として銅により構成される金属くずです。
そのため、金やプラチナのスクラップについて「2026年からの特定金属くず制度がそのまま適用される」と一括して考えるものではありません。
貴金属製品の古物区分は「時計・宝飾品類」
中古ジュエリー等を扱い、古物商許可が必要となる場合は、申請時の取扱区分も確認します。
古物は13種類に分類されており、
- 時計
- 宝石類
- 装身具類
- 貴金属類
などは**「時計・宝飾品類」**に含まれます。
ここで注意したいのは、「時計・宝飾品類専用の古物商許可」という別の許可を取得するわけではないことです。
古物商許可の申請時に、主として取り扱う古物や営業所で取り扱う古物の区分を申告します。
許可が必要だと分かった後、実際の申請書類を確認したい方は、古物商許可の必要書類一覧へ進むと、個人・法人別に準備内容を確認できます。
古物商許可を取った後にも確認すべきルールがある
貴金属事業では、古物商許可を取得すればすべての準備が終わるわけではありません。
特に分けて考えたいのが、
古物営業法上の相手方確認等と、犯罪収益移転防止法上の義務です。
古物営業法では買取時に相手方確認が必要になる
古物商が古物を買い受ける際には、取引内容に応じて相手方確認や帳簿等への記載が必要になります。
古物営業法では、買受けの対価総額が1万円未満の場合、相手方確認や帳簿等への記載義務は原則として免除されますが、一部の物品については1万円未満でも対象になります。2025年10月1日からは、一定の金属製物品も例外対象へ追加されています。
対面・非対面を含む本人確認全体の考え方は、古物商の本人確認方法を整理した記事で確認できます。
宝石・貴金属等では犯罪収益移転防止法も関係する
宝石や貴金属等を売買する事業者には、犯罪収益移転防止法が関係します。
経済産業省は、対象となる「宝石・貴金属等」として、
- 金、白金、銀およびこれらの合金
- ダイヤモンドその他の貴石・半貴石、真珠
- これらの製品
を示しています。
また、現行の公式案内では、200万円を超える現金取引などが「特定取引」とされ、取引時確認等の義務が課されます。200万円以下であっても、分割取引や特別の注意を要する取引などは別途確認が必要です。
さらに、特定業務に係る取引については取引記録の作成・保存が必要で、疑わしい取引の届出対象となる場合があります。
したがって、
古物商許可が不要
=
貴金属取引について確認すべき法律がない
という意味ではありません。
特に金・白金の地金は、古物営業法上の古物には該当しない一方、貴金属取引として犯罪収益移転防止法の確認対象になります。
自分の事業に古物商許可が必要かは4つの順番で確認する
自分の事業へ当てはめるときは、次の4点を順番に整理すると判断しやすくなります。
1.何を扱うのか
たとえば、
- 中古の指輪・ネックレス
- 時計
- 宝石
- 未使用のジュエリー
- 金・白金の地金・インゴット
- 壊れたジュエリー
- 貴金属スクラップ
など、商品を具体的にします。
2.その物はどのような状態・流通経路にあるか
次に、
- 一度使用された物か
- 未使用でも使用のために取引された物か
- 地金なのか
- 本来の用途で使用できる状態なのか
- 素材・スクラップとして扱う物なのか
を整理します。
3.誰から、どのように取得するのか
たとえば、
- 一般消費者から買い取る
- 他の古物商から仕入れる
- 古物市場で仕入れる
- オークションやインターネットで仕入れる
- 自ら海外で買い付ける
といった違いを確認します。
4.取得後に何をするのか
最後に、
- そのまま再販売する
- 修理して販売する
- 委託販売する
- レンタルする
- 溶解等を前提に素材として扱う
など、取得後の事業内容を整理します。
この4点が整理できれば、管轄警察や行政書士へ確認する際にも、「何について判断してほしいのか」を具体的に伝えられます。
よくある質問
自分の指輪やネックレスをフリマアプリで売るだけでも古物商許可は必要ですか?
自分で使用していた物や、自己使用目的で購入した未使用品を売却するだけで、直ちに古物商許可が必要になるわけではありません。
一方、最初から転売目的で古物を仕入れ、継続して販売する場合は別です。
金のインゴットを買い取る場合も古物商許可が必要ですか?
金・白金の地金等は、古物営業法上の「古物」には該当しません。
そのため、中古ジュエリーと同じ理由で古物商許可が必要になるとはいえません。
ただし、貴金属売買として犯罪収益移転防止法など別の制度確認が必要です。
ネットショップだけなら古物商許可は不要ですか?
いいえ。
古物に該当する商品を買い取って販売する営業であれば、インターネットだけで営業する場合も古物営業法との関係を確認する必要があります。
宅配買取など非対面で買い取る場合は、本人確認方法についてもあわせて準備してください。
海外で買い付けた中古品を日本で販売する場合はどうなりますか?
自ら海外で買い付けて輸入した物を販売する場合は、古物商許可が不要となる代表例として公式に案内されています。
ただし、国内の事業者から仕入れた輸入中古品など、仕入れ方法が異なる場合まで同じ結論になるとは限りません。

