百貨店やショッピングモールの催事、期間限定の買取イベント、車両を使った買取など、普段の営業所以外で古物を買い取りたいときに必要なのが「仮設店舗営業届出」です。
ただし、営業所以外で買取するからといって、すべて仮設店舗になるわけではありません。
まず確認したいのは、
どこで、誰から、どのように古物を受け取るのか
です。
古物営業法では、古物商が古物商以外の相手から買受け等のために古物を受け取る場所を、原則として「自分の営業所」または「取引相手の住所・居所」に制限しています。
そのどちらでもない催事場やイベント会場などで古物を受け取るための仕組みが、届出をした仮設店舗です。
この記事では、
届出が必要か判断する
→ 行商を確認する
→ 日時・場所を決める
→ 届出書を作る
→ 提出する
→ 営業当日の準備をする
という実際の順番で解説します。
この記事のポイント
1.営業所以外なら何でも仮設店舗になるわけではない
取引相手の住所・居所で古物を受け取る場合は、古物営業法14条がもともと認めている場所です。
一方、催事場やイベント会場など、自分の営業所でも取引相手の住所・居所でもない場所で古物を受け取る場合に、仮設店舗営業届出の確認が重要になります。
2.その場で古物を受け取るかが重要
古物の受取りを行わない仮設店舗については、仮設店舗営業届出は必要ありません。
ただし、仮設店舗を出すことは「行商」に当たるため、許可証等の携帯や標識の掲示といった義務は残ります。
3.届出が必要なら営業日の3日前まで
使用するのは「仮設店舗営業届出書(古物営業法施行規則別記様式第14号の2)」です。
4.車両営業は「営業場所を特定できるか」が重要
一定の場所に車両を駐車し店舗として使う形は仮設店舗になり得ます。
一方、車両を移動させながら営業し、場所が定まらない形では、届出場所の特定が不十分とされています。
そもそも古物商の「仮設店舗」とは?
警察庁は仮設店舗を、営業所以外の場所に仮に設けられ、容易に移転できる店舗と整理しています。
具体例として、
- 催事場などに設けるブース
- 車両を駐車して店舗として使う出店
- 屋台
などが挙げられています。
たとえば、百貨店の催事場に数日間だけ買取ブースを設けるケースは、仮設店舗を考える典型的な場面です。
長期間、同じ場所で営業する店舗は別に考える
「期間限定」と呼んでいれば何でも仮設店舗になるわけではありません。
警察庁の現行解釈では、一定の期間に限らず、その場所で継続的に営業するために設けられるものは仮設店舗として認められないとされています。
警視庁の記載例にも、長期間となる場合には仮設店舗として認められない場合があるため警察署へ確認するよう注意書きがあります。
長期のポップアップ店舗などを予定している場合は、「仮設店舗営業届出を出せばよい」と自己判断せず、営業所としての扱いも含めて警察署へ確認する方が安全です。
仮設店舗営業届出が必要?まず場所から判断する
届出要否は、次の順番で考えると分かりやすくなります。
自分の営業所で受け取る
仮設店舗営業届出の問題ではありません。
取引相手の住所・居所で受け取る
これも、古物営業法14条が原則として受取りを認めている場所です。
一般に「出張買取」と呼ばれる場面はこちらに当たることがあります。
催事場・イベント会場など第三の場所で受け取る
ここで仮設店舗営業届出を検討します。
つまり、
「営業所以外か」だけではなく、「営業所でも相手方の住所・居所でもない場所か」
まで確認することが重要です。
第三の場所では「古物を受け取るか」を確認する
催事場など第三の場所で営業する場合でも、古物を受け取らないのであれば仮設店舗営業届出は不要です。
警察庁の現行解釈でも、古物の受取りを行わない仮設店舗については届出不要と明記されています。
たとえば、
| 営業内容 | 仮設店舗営業届出 |
|---|---|
| 催事場で一般のお客様から古物を買い取り、その場で受け取る | 確認・届出が必要 |
| イベント会場で古物を販売するだけ | 届出不要 |
| 一定場所に車両を駐車し、そこで一般のお客様から古物を受け取る | 仮設店舗に当たり得るため届出を確認 |
| 車両等で移動し続け、営業場所を特定できない | 通常の仮設店舗届出と同じようには扱えない |
という整理になります。
ここでいう「受け取る」は、古物商以外の相手から、買受け・交換、または売却・交換の委託を受けるために古物を受け取る場面です。
販売だけなら届出不要でも「行商」には当たる
古物の受取りをしないため仮設店舗営業届出が不要でも、仮設店舗で営業すること自体は行商です。
警察庁は、
- 展示即売会での古物の売却
- 仮設店舗での古物の売買
などを行商に含むと整理しています。
そのため、
「仮設店舗営業届出が不要」=「古物営業法上、何の準備もいらない」
ではありません。
許可証等の携帯や標識掲示など、行商として必要な義務は別に確認してください。
届出の前に許可証の「行商」欄を確認する
仮設店舗で営業する場合は、古物商許可が「行商する」になっている必要があります。
熊本県警も、仮設店舗営業届出を行う場合は、許可証の「行商」の欄が「行商する」になっている必要があると案内しています。
準備は次の順番がおすすめです。
- 古物商許可証の「行商」欄を確認する
- 「行商する」になっているか確認する
- 催事の日時・営業場所を具体的に決める
- 仮設店舗営業届出書を準備する
現在「行商しない」になっている場合は、必要な変更届出・書換手続を確認してから仮設店舗の準備を進めましょう。
仮設店舗営業届出は営業日の3日前まで
仮設店舗営業届出書は、仮設店舗で古物営業を営む日の3日前までに提出します。
正式な様式は、
古物営業法施行規則 別記様式第14号の2「仮設店舗営業届出書」
です。
「3日前」は余裕をもって考える
「営業日の3日前」と聞くと、3日前に提出すればよいように見えますが、実際には閉庁日も考慮する必要があります。
奈良県警や熊本県警は「中3日を設ける」と案内しています。届出期限の日が土日祝日などの閉庁日なら、その直前の開庁日が期限になると説明しています。
催事日が決まったら、
届出期限になってから準備するのではなく、先に提出先・提出方法まで確認する
方が安全です。
仮設店舗営業届出書には何を書く?
届出方法を知りたい読者にとって、実際に何を準備するのかは重要です。
警視庁が公開する現行の記載例では、主に次の事項を記載します。
- 届出者の氏名または名称・住所
- 許可証番号
- 許可年月日
- 氏名または名称
- 営業日時
- 営業場所
- 開催場所を管轄する警察署
記載例では、営業場所を単に商業施設名だけで終わらせず、
- スーパー1階入口
- ショッピングセンター3階エスカレーター前
といった形で、施設内の場所まで具体的に記載しています。
また、同じ届出書には複数の営業日時・場所を記載する欄があり、1枚で記載しきれない場合は必要枚数を作成するよう案内されています。
催事を複数予定している場合でも、
日時と場所を曖昧にまとめるのではなく、それぞれ具体的に特定する
ことが重要です。
営業日時・場所はどこまで具体的に書く?
警察庁の現行解釈では、警察が必要に応じて立入り等をできる程度に、日時と場所を詳細に特定する必要があるとされています。
特定が不十分な例として、
- 「○月○日から○月○日までのいずれかの日」とする
- 実際の営業時間を書かず「0時から24時」とする
- 住所を番地まで特定しない
- 大型施設なのに階・フロアを書かない
- 車両や屋台を移動させながら営業し、場所が定まっていない
ケースが示されています。
つまり、催事では、
「いつ・どの施設の・どの場所で営業するのか」
まで決めてから届出書を作るのがポイントです。
届出先は原則として仮設店舗所在地の管轄警察署
届出は原則として、仮設店舗を設ける場所を管轄する公安委員会へ行い、その場所の所轄警察署長を経由して提出します。
ただし、仮設店舗を設ける都道府県内に営業所を持たない古物商は、自分の営業所所在地を管轄する公安委員会を経由して届け出ることができます。
そのため、県外催事だからといって必ず現地の警察署へ提出しに行かなければならないとは限りません。
県外でイベントを行う場合は、
- 仮設店舗を出す都道府県
- 自社の営業所がある都道府県
- どの警察署を経由できるか
を整理して確認しましょう。
添付資料や提出方法には地域差がある
全国共通の基本様式は「仮設店舗営業届出書」ですが、受付時の確認資料には地域差があります。
たとえば愛知県警は添付書類なしと案内しています。
一方、警察によっては仮設店舗の場所を確保していることを確認する資料などを求める場合があります。
したがって、
「届出書だけ用意すれば全国どこでも同じ」
とは考えず、提出先の都道府県警・警察署の最新案内を確認してください。
仮設店舗営業届出については、警視庁・愛知県警・北海道警などが手数料不要と案内しています。
オンラインで届出できる場合もある
警察庁は、対象となる警察関係のオンライン手続について、現在はe-Gov電子申請から申請・届出を行う仕組みを案内しています。
旧「警察行政手続サイト」は2025年12月15日に運用を停止しました。
北海道警察は、仮設店舗営業届出をe-Gov電子申請からオンラインで届け出られると明示しています。
実際に利用するときは、対象地域の都道府県警の最新案内から確認してください。
車両を使った買取は「車」より「場所」で考える
車両を使うから自動的に仮設店舗になるわけではありません。
逆に、車両だから仮設店舗にできないわけでもありません。
警察庁は、
車両を駐車して店舗として用いる出店
を仮設店舗の例として挙げています。
たとえばイベント会場の決められた駐車区画に車両を停め、そこで一般のお客様から古物を受け取るのであれば、仮設店舗として届出を検討することになります。
一方、
「当日はこの地域を車で回りながら、適宜停車して買い取る」
というように営業場所を特定できない形では、仮設店舗の届出場所として不十分です。
車両営業では、車種や設備よりも、
- いつ営業するか
- どこへ駐車するか
- 営業中その場所が固定されるか
- そこで古物を受け取るか
を先に整理しましょう。
届出後も営業当日の準備がある
仮設店舗営業届出を出せば、すべての準備が終わるわけではありません。
本人は許可証、従業員等は行商従業者証を確認する
仮設店舗は行商に当たります。
古物商本人には許可証、代理人・従業員等には行商従業者証の携帯義務があります。
仮設店舗には標識を掲示する
古物の受取りを行うかどうかにかかわらず、仮設店舗では標識の掲示義務があります。
イベント用の看板だけで済ませず、古物営業法上の標識も確認しておきましょう。
買取時の本人確認・帳簿等の通常ルールも確認する
仮設店舗だから、通常の古物営業上の義務がなくなるわけではありません。
取引内容や古物の種類・金額などによって、相手方確認や帳簿等への記載義務が関係します。
ここは仮設店舗営業届出そのものとは別の論点なので、この記事では詳細までは扱いません。
催事当日までに、普段の買取と同じように必要な取引管理ができる状態を準備しておきましょう。
仮設店舗営業の確認フロー
最後に、実際の判断順序をまとめます。
STEP1 古物を受け取る場所を確認する
- 自分の営業所
- 取引相手の住所・居所
- それ以外の催事場・イベント会場等
のどこかを確認します。
STEP2 第三の場所なら、古物の受取りをするか確認する
受け取らない場合は仮設店舗営業届出は不要です。
受け取る場合は、次へ進みます。
STEP3 許可証の「行商」欄を確認する
「行商する」になっているか確認します。
STEP4 仮設店舗として成立する営業形態か確認する
一時的な店舗であり、営業日時・場所を具体的に特定できるか確認します。
同じ場所で継続営業する前提の店舗や、移動し続けて営業場所が定まらない形は注意が必要です。
STEP5 営業日の3日前までに届出する
提出先、提出方法、地域ごとの必要資料も確認します。
STEP6 営業当日の準備をする
許可証等、標識、通常の古物取引に必要な確認・記録の準備を整えます。
よくある質問
お客様の自宅へ行って買取する場合も、仮設店舗営業届出が必要ですか?
取引相手の住所・居所は、古物営業法14条が古物の受取りを認めている場所なので、その場所で受け取ること自体について仮設店舗営業届出をする制度ではありません。
ただし、訪問購入に関する別のルール等が関係する場合があるため、出張買取全般の注意点とは分けて考えてください。
催事で販売だけをする場合も届出が必要ですか?
古物の受取りを行わない仮設店舗については、仮設店舗営業届出は必要ありません。
ただし行商に当たるため、許可証等の携帯や標識掲示などは必要です。
仮設店舗営業届出の手数料はいくらですか?
警視庁などの公式案内では手数料はかからないとされています。
県外イベントでも届出できますか?
できます。
仮設店舗を設ける都道府県内に営業所がない場合には、自分の営業所所在地を管轄する公安委員会を経由して届け出ることもできます。
車両で買取する場合は必ず仮設店舗になりますか?
車両を使うだけで決まるわけではありません。
一定の場所へ駐車して店舗として使う形は仮設店舗になり得ますが、移動し続けて場所を特定できない形は同じようには扱えません。
営業日の3日前を過ぎてしまった場合は?
自己判断でそのまま営業せず、
- 開催日
- 営業場所
- 営業内容
- 古物を受け取るか
- 許可証の「行商」欄
を整理したうえで、警察署へ確認してください。
仮設店舗営業は「どこで・何をするか」から整理する
古物商の仮設店舗営業では、最初から届出書を見るより、
どこで古物を受け取るのか
を確認することが出発点です。
自分の営業所や取引相手の住所・居所ではなく、催事場など第三の場所で古物商以外の相手から古物を受け取るのであれば、仮設店舗営業届出を検討します。
そのうえで、
- 「行商する」になっているか
- 一時的な仮設店舗として成立するか
- 日時・場所を具体的に特定できるか
- 営業日の3日前までに提出できるか
- 提出先・提出方法・必要資料は何か
- 当日の営業準備が整っているか
を確認してください。
ここまで整理できれば、
「自分に届出が必要か分からない」
という状態から、
「何を確認し、何を準備し、次にどこへ進めばよいか分かる」
状態へ進めます。
自分で進める場合は、開催地または提出先となる都道府県警の最新案内と公式様式を確認して準備しましょう。
催事が県外にまたがる、車両営業で場所の整理が難しい、「行商しない」からの変更も必要など、複数の論点が重なる場合は、開催日時・場所・営業内容・古物の受取りの有無・現在の許可内容を整理したうえで、管轄警察署や古物営業手続を扱う行政書士へ確認する方法があります。

