「古物商許可を取ったので、メルカリで中古品を仕入れて販売したい」
この場合、最初に確認したいのは本人確認や匿名配送ではありません。
法人・個人事業主などの事業者として通常のフリマアプリ「メルカリ」を利用する場合、現在のメルカリ利用規約では、メルカリが指定した法人を除く事業者のユーザー登録・サービス利用は認められていません。
メルカリ公式も、2025年10月22日の規約改定によって、法人・個人事業主などの事業者による通常の「メルカリ」の新規利用・継続利用を原則禁止と説明しています。規約の文言も出品だけではなく「本サービスの利用」を対象としています。
そのため、事業としてメルカリを仕入れ先に使おうとしている人は、古物商許可を持っているから利用できるとは考えず、まずメルカリ側の利用条件を確認する必要があります。
そのうえで、メルカリ以外のフリマアプリやネット取引も含めて中古品を仕入れる場合には、古物営業法上の相手方確認や取引記録について別に確認します。
この記事では、
プラットフォームを利用できるか
↓
古物商として相手方確認が必要か
↓
必要な確認を実際に行えるか
↓
必要な記録を残せるか
という順番で、フリマ仕入れを判断するポイントを整理します。
先に結論|メルカリの問題と古物営業法の問題は分けて考える
「古物商はメルカリで仕入れできる?」という疑問は、1つのルールだけでは答えられません。
| 確認すること | 判断のポイント |
|---|---|
| メルカリの利用規約 | 事業者として通常のメルカリを利用できるか |
| 古物営業法 | その仕入れで相手方確認が必要か |
| 非対面取引 | 必要な本人確認を法令に沿った方法で実行できるか |
| 取引記録 | 記録義務がある場合に必要事項を残せるか |
特に現在のメルカリについては、事業者による通常サービスの利用制限があるため、「匿名配送で本人確認できるか」を考える前に、そもそも事業上の仕入れに通常のメルカリを利用できるのかを見るのが先です。
なお、古物商許可を持っているという一点だけから、すべての人についてメルカリ規約上の「事業者」に該当するとこの記事で断定するものではありません。
法人・個人事業主として事業利用する場合は公式説明でも規制対象が明確ですが、自分の利用形態が規約上どう扱われるか判断できない場合は、メルカリへ確認してください。
ここからは「フリマ仕入れ一般」の古物営業法を確認する
メルカリの利用規約とは別に、古物商として中古品を仕入れる場合には古物営業法上の義務があります。
警視庁は、古物商が古物を買い受ける際には、取引相手の住所・氏名・職業・年齢を確認する必要があり、インターネットオークションやフリマアプリを利用する取引でも相手方確認が必要と案内しています。
つまり、
「フリマアプリで普通に購入しただけだから、古物商としての本人確認は関係ない」
とは考えられません。
ただし、一定の少額取引には例外があります。後ほど詳しく説明します。
非対面取引は「名前と住所を聞く」だけでは足りない
フリマアプリやネット取引では、売主と直接会わずに仕入れるケースが多くなります。
相手方確認が必要な非対面取引では、単に、
「氏名と住所をメッセージで教えてもらった」
「免許証のコピーを送ってもらった」
だけで本人確認が完了するわけではありません。
警視庁は、非対面取引では申告された氏名・住所などが真正であり、なりすましではないことを法令所定の方法で確認する必要があると案内しています。免許証等のコピーや住民票の写しを送ってもらうだけでは足りません。
認められている方法には、条件に応じて、電子署名等を使う方法、本人限定受取郵便等を利用する方法、住民票の写し等と転送しない取扱いの簡易書留等を組み合わせる方法などがあります。
ここで大切なのは、
「相手の情報を知ったか」ではなく、「法令上認められた方法で相手の真偽を確認したか」
という点です。
匿名配送なら古物商は仕入れできない?
匿名配送については、「匿名配送=一律に違法」「匿名配送でなければ問題なし」のどちらも単純すぎます。
メルカリの匿名配送では、出品者と購入者が氏名・住所・電話番号を互いに伝えずに配送できます。
そのため、匿名配送によって商品が届いたというだけでは、本人確認が必要な取引について古物営業法上の相手方確認を行ったことにはなりません。
一方、問題の本質は配送方法の名称ではなく、
本人確認が必要な取引なら、法令で認められた相手方確認を実行できるか
です。
ただし、メルカリについてはもう1つ注意があります。
メルカリは、名前・住所などの個人情報の投稿や収集を禁止行為として案内しています。
そのため、
「匿名配送でも、取引メッセージで出品者の氏名・住所を聞いて古物商側で本人確認すればよい」
と単純に解決することはできません。
古物営業法上必要な確認と、利用するプラットフォームで認められている行為の両方を満たせる取引方法かを見る必要があります。
ここまで考えると、通常のメルカリを事業上の仕入れルートとして利用する場合には、古物営業法だけでなくメルカリ側の規約・仕組みとの相性も重要だと分かります。
メルカリの「本人確認済み」は古物商の本人確認と同じではない
メルカリにはサービス上の本人確認制度があります。
しかし、
「メルカリで本人確認済みの出品者だから、古物営業法上の本人確認も済んでいる」
とは扱わない方がよいでしょう。
古物営業法上、非対面取引で本人確認が必要な場合には、施行規則で定められた方法による確認が求められます。
今回確認した公式情報にも、メルカリの本人確認済み表示だけで古物営業法第15条の確認を履行したことになるというルールは確認できません。
したがって、相手方確認が必要な取引では、
アプリ上の「本人確認済み」という表示ではなく、古物営業法上必要な確認方法を満たしているか
を基準に考えてください。
「1万円未満なら本人確認不要」は商品1点の価格だけで判断しない
古物商の仕入れについて、
「1万円以下なら本人確認はいらない」
という説明を見かけることがあります。
まず、正確な基準は**「1万円未満」**です。1万円ちょうどは「1万円未満」には含まれません。古物営業法施行規則第16条は、この金額を1万円と定めています。
さらに重要なのは、この1万円が**個々の商品単価ではなく「対価の総額」**で判断されることです。
警察庁の解釈運用基準では、一度に取引する複数の物品については対価を合計して判断し、個々の物品単価を基準にしないとされています。また、この1万円には消費税を含まないとの解釈が示されています。
たとえば、1点ずつは1万円未満でも、同じ取引で複数の商品をまとめて仕入れ、対価の総額が1万円以上になる場合は、単品価格だけを見て少額取引と判断できません。
つまり、
「この商品は9,000円だから本人確認不要」
ではなく、
「この取引の対価の総額はいくらか」
を見る必要があります。
1万円未満でも本人確認・記録が必要な古物がある
さらに、対価の総額が1万円未満ならすべて免除されるわけではありません。
現行の古物営業法施行規則では、次の古物は少額取引の免除対象外です。
| 1万円未満でも相手方確認等が必要となる古物 |
|---|
| 自動二輪車・原動機付自転車および一定の部分品 |
| エアコンディショナーの室外ユニット・電気温水機器のヒートポンプ |
| 家庭用コンピュータゲーム用プログラムを記録した物 |
| CD・DVD・ブルーレイディスク等、光学的方法により音・映像を記録した物 |
| 電線 |
| 金属製グレーチング |
| 書籍 |
室外ユニット等、電線、金属製グレーチングは、2025年10月1日施行の改正で追加されています。
したがってフリマ仕入れでは、
金額
と
商品の種類
の両方を見る必要があります。
メルカリの購入履歴があれば古物台帳になる?
本人確認とあわせて、記録義務も確認します。
古物営業法第16条では、記録義務がある取引について、主に次の事項を帳簿等または電磁的方法で記録することを求めています。
- 取引年月日
- 古物の品目・数量
- 古物の特徴
- 相手方の住所・氏名・職業・年齢
- 相手方確認で取った措置の区分・方法
また、帳簿等は最終記載日から3年間、電磁的記録は記録した日から3年間保存する必要があります。
ここで重要なのは、
「紙の古物台帳でなければいけない」ということではない一方、「アプリに購入履歴が残っていれば何でもよい」わけでもない
という点です。
警察庁の解釈運用基準では、電磁的方法による記録も認められており、POSシステム等でも法定の記載事項を網羅していれば記録として扱えるとされています。
したがって、購入履歴を利用する場合も、
法令上必要な項目がすべて残っているか
で判断します。
メルカリの取引画面だけで当然に古物営業法上の帳簿記録が完成すると考えない方がよいでしょう。
フリマ仕入れは購入前に5つ確認する
フリマアプリで仕入れ候補の商品を見つけたら、購入ボタンを押す前に次の順番で確認すると整理しやすくなります。
1.そのサービスを事業上の仕入れに利用できるか
最初にプラットフォームの最新規約を見ます。
通常のメルカリでは、指定法人以外の事業者によるサービス利用が現在制限されています。
別のフリマアプリを利用する場合も、そのサービス固有の規約を確認してください。
2.その取引で相手方確認が必要か
「商品1点が1万円未満か」だけで見ません。
取引の対価の総額と、仕入れる古物の種類を確認します。
3.必要な本人確認を実際に行えるか
非対面取引では、氏名・住所の自己申告を受けるだけでは足りない場合があります。
法令所定の確認方法を、取引の仕組み上実施できるかを確認します。
4.必要な記録を残せるか
記録義務がある場合は、法定事項を帳簿または電磁的記録に残せるかを確認します。
単なる購入履歴の有無では判断しません。
5.条件を満たせないなら仕入れ方法を変える
利益が出そうな商品でも、必要な本人確認ができない、必要事項を記録できない、プラットフォーム規約と両立しないのであれば、無理にその取引を進めないことも重要です。
古物商にとっての目的は、
特定のフリマアプリから買うことではなく、継続して適切に仕入れられるルートを作ること
だからです。
メルカリ仕入れで迷ったときの確認先
今回の問題は、1か所へ聞けばすべて解決するとは限りません。
メルカリの利用規約・禁止行為について判断できない
→ メルカリの公式案内・問い合わせ窓口
古物営業法上の本人確認や帳簿について判断できない
→ 営業所を管轄する警察署等の古物営業担当窓口
というように、問題を分けて確認すると整理しやすくなります。
行政書士へ相談する場合も、
「メルカリで仕入れて大丈夫ですか?」
だけではなく、
- どのサービスを使う予定か
- 何を仕入れる予定か
- 1回の取引総額はどの程度か
- 匿名配送か
- 相手方から何の情報を取得できるか
- どの本人確認方法を予定しているか
まで整理しておくと、予定している営業方法について具体的に確認しやすくなります。
よくある質問
古物商許可を持っていれば、通常のメルカリを仕入れに使えますか?
古物商許可があることと、メルカリの利用規約上サービスを利用できることは別です。
現在の利用規約では、メルカリが指定した法人を除く事業者は、ユーザー登録および本サービスを利用できないとされています。法人・個人事業主など事業者として仕入れに利用する場合は、この利用制限を先に確認してください。
1万円未満の商品なら本人確認はいりませんか?
商品単価だけでは判断できません。
基準は取引の対価の総額です。また、対価の総額が1万円未満でも相手方確認等が免除されない古物があります。
匿名配送でなければ問題ありませんか?
匿名配送でないことだけでは十分ではありません。
相手の氏名・住所が分かることと、古物営業法で求められる相手方確認を行ったことは別です。本人確認義務がある取引では、法令所定の確認方法を満たす必要があります。
メルカリの「本人確認済み」なら古物商側の本人確認は不要ですか?
メルカリ上の本人確認済み表示だけで、古物営業法上の相手方確認を済ませたことになるという公式根拠は確認できません。
本人確認が必要な取引では、古物営業法・施行規則で認められている確認方法を基準にしてください。
メルカリの購入履歴を保存すれば古物台帳になりますか?
購入履歴を保存しただけで当然に足りるとはいえません。
電磁的方法による記録は認められていますが、記録義務がある取引では、法令上必要な事項が網羅されていることが必要です。
まとめ|古物商のフリマ仕入れは「買えるか」ではなく「仕入れとして成立するか」で判断する
古物商がメルカリなどのフリマアプリを仕入れ先として考えるときは、
安く買える商品があるか
だけを見ても判断できません。
まず、そのサービスを事業として利用できるか。
次に、その取引で古物営業法上の相手方確認が必要か。
必要なら、プラットフォームのルールにも反しない形で法定の本人確認を実行できるか。
そして、必要な取引記録を残せるか。
この順番で確認してください。
特に通常のメルカリについては、現在、事業者によるサービス利用そのものに規約上の制限があります。古物商許可を持っていることだけを理由に、事業上の仕入れ先としてそのまま使えるとは考えないことが重要です。
購入してから本人確認や記帳方法を考えるのではなく、購入前に「この取引は仕入れとして成立するか」を確認する。
フリマ仕入れでは、この考え方を持っておくと手戻りを減らしやすくなります。

