個人の古物商許可は法人へ引き継げる?法人成りしたときの手続きを解説

個人で古物商許可を取得して営業している方が法人成りするとき、最初に確認したいのが「今持っている許可を、そのまま会社へ引き継げるのか」という点です。

結論からいうと、個人で取得した古物商許可を法人へそのまま引き継ぐことはできません。

許可を持っている本人が新しく設立した法人の代表取締役になった場合でも同じです。個人の許可で法人による古物営業はできないため、法人として新たに古物商許可を取得する必要があります。愛知県警・千葉県警も、このケースを明確に案内しています。

法人成りでは、単に「法人でもう一度申請する」と考えるだけでは不十分です。

重要なのは、

個人としての営業
↓
法人の許可申請
↓
法人の許可取得
↓
営業主体を法人へ切り替える
↓
個人営業を終了する場合は許可証を返納する

という流れで考えることです。

会社設立日と、法人として古物営業を始められる日、個人営業を終了する日は、必ずしも同じではありません。

この記事では、個人から法人へ古物営業を移すときに、何をどの順番で確認すればよいのかを整理します。

この記事のポイント

  • 個人の古物商許可を法人名義へ書き換えて使うことはできない
  • 代表者が同じでも、法人として新たな古物商許可が必要
  • 法人の新規許可申請には19,000円の申請手数料がかかる
  • 法人を設立しただけでは、法人を営業主体として古物営業を始められるわけではない
  • 許可までには一定の期間がかかるため、営業切替日から逆算して準備する
  • 個人として古物営業を廃止した場合は、返納事由の発生日から10日以内に許可証を返納する

まずは「今の許可をどう変更するか」ではなく、古物営業をする主体が個人から法人へ変わると考えると分かりやすくなります。

個人の古物商許可は法人へ引き継げない

個人事業を法人化すると、「個人名を法人名へ変更する手続きをすればよいのでは」と考えるかもしれません。

しかし、個人から法人への移行は単なる名称変更ではありません。

愛知県警の古物営業法Q&Aでは、個人で取得した許可はその個人のものであり、許可を受けた本人が法人の代表取締役になった場合でも、個人許可で法人による古物営業はできないと案内されています。

千葉県警も、個人許可で法人による古物営業を行うと無許可営業になるため、法人として新たに許可を取得するよう案内しています。

整理すると、次のようになります。

状況古物商許可の扱い
個人として古物営業を続ける個人名義の許可を使用する
法人として古物営業をする法人として新たな許可を取得する
個人許可を持つ本人が法人代表になる個人許可を法人用として使うことはできない
個人として古物営業を廃止する個人許可の返納手続きを行う

「書換え」と「法人成り」は別の手続き

すでに許可を受けている法人が法人名や代表者などを変更するケースでは、変更届出や許可証の書換申請が問題になることがあります。愛知県警も、既存法人の名称・所在地・代表者等の変更について変更届出・書換申請を案内しています。

しかし、個人から新たな法人へ営業主体そのものが変わる場合は、この「変更・書換え」とは別です。

法人成りでは、法人として新たな許可を取得するところから考えます。

法人成りの手続きは「いつ法人で営業を始めるか」から考える

法人成りを予定している場合、会社の設立日だけを先に決めてしまうと、古物商許可とのタイミングが合わなくなる可能性があります。

考え方としては、次の順序が分かりやすいでしょう。

  1. 法人設立の準備をする
  2. 法人の古物商許可申請に必要な条件・書類を整理する
  3. 法人として古物商許可を申請する
  4. 法人として許可を受ける
  5. 古物営業の主体を個人から法人へ切り替える
  6. 個人営業を終了する場合は、個人許可を返納する

重要なのは、法人を設立したことと、法人が古物商として営業できることを混同しないことです。

法人の設立登記が済んでいても、法人として古物商許可を受ける前に、その法人を営業主体として古物営業を始めないよう注意してください。個人の許可を法人の営業に使うことはできません。

法人の古物商許可申請で押さえておきたい基本情報

法人で新規申請するときの基本をまとめると、次のとおりです。

項目確認ポイント
申請先主たる営業所の所在地を管轄する警察署
新規申請手数料19,000円
許可までの期間公式案内では40日前後・標準処理期間40日などの例がある
法人特有の主な準備定款、登記事項証明書、役員・管理者に関する書類など
インターネット取引営業形態によってURL関係の届出・資料を確認する

警視庁と愛知県警はいずれも、新規許可申請の手数料を19,000円と案内しています。申請先は主たる営業所を管轄する警察署です。

なお、納付方法や受付方法などの細部は地域によって案内が異なるため、実際に申請する都道府県警・管轄警察署の最新情報を確認してください。

法人申請では個人のときより確認対象が増える

法人申請では、法人の定款・登記事項証明書に加え、法人の役員や営業所の管理者に関する書類が必要です。

愛知県警では、法人の役員に関する略歴書などの資料や、管理者に関する書類が案内されています。法人の代表者や役員が営業所の管理者を兼ねる場合についても、法人役員としての誓約書と管理者としての誓約書をそれぞれ提出する取扱いが示されています。

つまり、個人で以前許可を取った経験がある方でも、「前回と同じ準備でよい」と考えず、法人申請として必要なものを確認し直す必要があります。

必要書類の細かな条件や部数、証明書の取得方法までこの記事で抱え込む必要はありません。実際に申請する地域の最新申請案内で確認しましょう。

主たる営業所を先に整理する

申請先を考えるときは、会社の本店所在地だけで判断しないようにします。

警視庁では、古物商許可の申請場所を主たる営業所の所在地を管轄する警察署と案内しています。愛知県警でも同様です。

法人成り前に、

  • 法人でどこを営業所にするのか
  • そのうちどこを主たる営業所とするのか
  • 誰を管理者にするのか

を整理しておくと、その後の申請準備へ進みやすくなります。

ネット販売を続ける場合はURL関係も確認する

ネットショップなどを利用して古物取引を続ける場合は、法人化にあわせてURL関係の手続きも確認しましょう。

警視庁は、該当する営業形態について「URLの使用権限があることを疎明する資料」を申請書類として案内しています。愛知県警も、取り扱う古物の情報を掲載し、ホームページを利用して取引をする場合について届出を案内しています。

「ネット販売をしている=必ず同じ資料」という形で自己判断せず、実際の販売方法を伝えて管轄へ確認するとよいでしょう。

許可取得までの期間を見込んで法人成りを計画する

法人の古物商許可は、申請したその日に取得できるものではありません。

愛知県警では、古物商許可証は申請から40日前後で交付すると案内しています。福岡県警では、許可・不許可の処分までの標準処理期間を40日間としています。

ただし、40日という数字は「その日に必ず許可される」という保証ではありません。

愛知県警は、書類の不備や添付書類の不足、差し替えなどがある場合は遅れることがあると案内しています。また、標準処理期間は通常必要となる目安の期間であり、必ずその期間内に処分が終わるという意味ではありません。

そのため、

法人として営業を始めたい日
↓
許可取得までに必要な期間
↓
許可申請をする時期
↓
法人設立・書類準備を進める時期

という順番で考える方が実務的です。

「会社を設立してから古物商許可を考える」のではなく、法人で営業を開始したい時期から逆算することが法人成りのポイントです。

営業を止めずに法人へ切り替えたい場合は事前確認する

「できるだけ営業を休まずに法人へ移行したい」という方もいるでしょう。

この場合、個人と法人の営業主体を曖昧にしないことが重要です。

確認済みのルールとして言えるのは、個人の許可を法人の営業に使うことはできないということです。

一方、

  • 同じ店舗を引き続き使用する
  • 同じ人を管理者とする
  • 個人事業の在庫を法人へ移す
  • 契約やECサイトの名義を変更する

といった具体的な移行方法は、それぞれの契約関係や営業状況なども関係します。

そのため、「この順序なら必ず営業を止めずに法人成りできる」と全国一律の方法を決めるのではなく、少なくとも次の事項を整理して管轄警察署へ確認するとよいでしょう。

  • 法人の設立予定日
  • 法人として古物営業を始めたい日
  • 個人として古物営業を終了する予定日
  • 主たる営業所の所在地
  • 法人の役員
  • 営業所の管理者
  • インターネットで古物取引を行うか

この情報が整理されていれば、「自分の場合は、どの時点で何を切り替えるべきか」を具体的に確認しやすくなります。

個人として古物営業をやめたら許可証を返納する

法人の許可を取ることだけに意識が向くと、現在持っている個人の古物商許可をどうするかが抜けやすくなります。

個人として古物営業を廃止した場合は、許可証を返納する必要があります。

愛知県警の案内では、返納理由が発生した場合、その事由が発生した日から10日以内に許可証を公安委員会へ返納しなければならないとされています。古物営業を廃止した場合も返納事由に含まれます。

愛知県警では、返納時の書類として、

  • 返納理由書(様式第9号)1通
  • 許可証

を案内しており、手数料はかかりません。

「法人設立日から10日」ではない

ここは法人成りで特に誤解したくない部分です。

10日の起点は、単純に法人を設立した日ではありません。

個人として古物営業を廃止した場合、その返納事由が発生した日から10日以内です。

したがって、

  • 法人を設立した日
  • 法人の古物商許可を取得した日
  • 個人として古物営業を終了した日

を、最初から同じ日になるものとして扱う必要はありません。

法人側の許可だけでなく、個人営業を実際にいつ終了するのかまで決めたうえで返納手続きを管理しましょう。

法人成りを始める前に整理したい7項目

ここまでの内容を、自分のケースに当てはめてみましょう。

法人成りを進める前に、次の7項目を整理しておくと手続きの全体像が見えやすくなります。

  1. 法人として古物営業を始めたい時期
  2. 法人の主たる営業所をどこにするか
  3. 法人の役員は誰になるか
  4. 営業所の管理者を誰にするか
  5. インターネットで古物取引を行うか
  6. 個人としての古物営業をいつ終了するか
  7. 個人から法人へ営業主体をいつ切り替えたいか

この7項目が決まれば、

何を申請するか
→ 何を準備するか
→ いつ申請するか
→ いつ営業を切り替えるか

を考えやすくなります。

必要書類を片っ端から集めるより、まず自分の法人成りの条件を整理する方が、不要な手戻りを減らしやすいでしょう。

自分で申請するか行政書士へ相談するか

法人成りに伴う古物商許可だからといって、必ず行政書士へ依頼する必要があるわけではありません。

公式案内を確認し、必要書類を準備して、管轄警察署へ確認しながら自分で申請することもできます。

一方、

  • 法人設立と許可申請のスケジュールを整理したい
  • 個人営業と法人営業の切替時期に迷っている
  • 役員や管理者について確認事項がある
  • 営業所やネット取引を含めて確認事項が複数ある
  • 本業を続けながら申請書類を準備する負担を減らしたい

といった場合は、古物商許可を扱う行政書士へ相談する方法もあります。

相談するときは、

法人設立予定日・法人で営業を始めたい日・営業所・役員・管理者・現在の個人許可の状況

を整理しておくと、「自分の場合に何を、いつ進めればよいか」を確認しやすくなります。

よくある質問

法人の代表者が個人許可を持っている本人でも、法人の許可は必要ですか?

必要です。

本人が法人の代表取締役になっても、個人で受けた許可を法人の古物営業に使うことはできません。法人として新たな許可を取得する必要があります。

法人の古物商許可の申請手数料はいくらですか?

警視庁・愛知県警の現行案内では、新規許可申請の手数料は19,000円です。

このほか、住民票や登記事項証明書など必要書類を取得するための費用が生じる場合があります。

実際に申請するときは、申請先となる都道府県警の最新案内も確認してください。

法人の古物商許可はどれくらいで取得できますか?

愛知県警では申請から40日前後、福岡県警では標準処理期間を40日間と案内しています。

ただし、これは必ず40日で許可されるという意味ではありません。書類の不備などがあれば時間が延びる場合もあるため、余裕を持って準備しましょう。

法人を設立したら個人の古物商許可はすぐ返納する必要がありますか?

「法人を設立した日」を基準に一律に返納するわけではありません。

個人として古物営業を廃止した場合は、その返納事由が発生した日から10日以内に許可証を返納します。

そのため、まず個人としての古物営業をいつ終了するのかを明確にしてください。

個人から法人への法人成りは「営業主体」と「切替時期」で考える

個人の古物商許可は、法人へそのまま引き継ぐことはできません。

法人として古物営業を行うのであれば、法人として新たな許可を取得する必要があります。

そして実際の法人成りでは、

法人を設立すること
法人として古物商許可を取得すること
個人から法人へ営業主体を切り替えること
個人営業を終了する場合に個人許可を返納すること

を分けて考えることが重要です。

まず、

「法人でいつから営業したいか」

を決めてください。

その日から逆算し、

  • 主たる営業所
  • 役員
  • 管理者
  • ネット取引の有無
  • 法人の許可申請時期
  • 個人営業を終了する時期

を整理していくと、法人成り全体の見通しが立ちやすくなります。

実際の切替方法について個別判断が必要な場合は、申請先となる管轄警察署へ条件を伝えて確認しましょう。

自分で手続きを進めることもできますが、法人設立と許可申請の時期をまとめて整理したい、必要書類の準備に時間をかけにくい、といった場合は、古物商許可を扱う行政書士へ相談することも選択肢です。