古物商が死亡したら許可は相続できる?遺族が行う手続きと事業承継の考え方

家族が古物商として店舗やネットショップを運営していたところ、本人が亡くなった。

このような場合、

「古物商許可も相続できるのか」
「家族がそのまま店を続けてもよいのか」
「許可証はどうすればよいのか」
「残っている中古品は売ってよいのか」

と、いくつもの問題が一度に出てきます。

結論からいうと、個人で受けていた古物商許可を、相続人がそのまま使って古物営業を引き継ぐことはできません。 大阪府警も、個人許可を受けていた父親が死亡したケースについて、息子自身が許可を取得する必要があると明示しています。

一方で、店舗や商品などの財産を相続することと、古物商として営業できることは別の問題です。

そのため死亡後は、「相続できるか」だけで考えるのではなく、許可・事業・在庫を分けて整理することが大切です。

この記事のポイント

確認すること基本的な考え方
個人名義の古物商許可相続人がそのまま使用することはできない
死亡した人の許可証同居の親族または法定代理人が返納する
返納期限死亡という事由の発生日から10日以内
家族が営業を続ける営業する本人が自分名義の許可を受ける
許可申請中の営業申請しただけでは足りず、許可を受ける前に古物営業に当たる行為は始めない
残った在庫「売却だけ」なのか、新たな買取り・仕入れ等まで行うのかを分ける
法人名義の許可個人許可者が死亡した場合とは扱いが異なる

最初に確認したいのは、亡くなった人個人が許可を受けていたのか、法人が許可を受けていたのかです。

ここが違うと、その後の手続きも変わります。

個人の古物商許可は、そのまま相続できない

個人で古物商許可を受けていた人が死亡した場合、相続人が故人の許可をそのまま使って古物営業を続けることはできません。

たとえば、父親が個人で古物商許可を受けていた場合、死亡後に子どもが店舗や商品を相続したとしても、父親の許可を子どものものとして使い続けることはできません。

子ども自身が古物営業を行うのであれば、子ども自身が古物商許可を受ける必要があります。

ここで混同しやすいのが、「財産・事業の相続」と「営業許可」です。

店舗や商品、設備などを引き継げるかという問題と、誰が古物営業を行えるかという問題は分けて考えます。

つまり、店や商品を相続したからといって、故人の古物商許可まで使えるようになるわけではありません。

古物商本人が死亡したら許可証の返納が必要

個人で古物商許可を受けていた人が死亡した場合、許可証についても手続きが必要です。

古物営業法第8条第3項では、許可証の交付を受けた人が死亡した場合、同居の親族または法定代理人が許可証を返納すると定めています。

ここは「相続人なら誰でも返納すればよい」という規定ではありません。

同居の親族にも法定代理人にも当てはまる人がいない、または誰が手続きをすべきか判断できない場合は、管轄警察署へ事情を伝えて確認するとよいでしょう。

返納は死亡から10日以内

古物営業法施行規則第7条では、許可証の返納を事由の発生の日から10日以内に行うこととされています。

返納の際は、

  • 古物商許可証
  • 別記様式第9号「返納理由書」

を提出します。

返納は、主たる営業所または古物市場の所在地の所轄警察署長を経由して行います。

家族が亡くなった直後は、相続関係の対応が重なる時期ですが、古物商許可については期限があります。

許可証が見つかったら、そのまま保管して終わりにせず、主たる営業所と管轄警察署を早めに確認するのがよいでしょう。

家族が古物営業を続けたい場合は、自分名義の許可が必要

故人が営んでいた店舗や事業を家族が引き継ぎたい場合、

事業を引き継ぐことと、許可を引き継ぐことは別

と考えます。

個人で許可を受けていた人が死亡した場合、その許可を家族が使い続けることはできません。

相続人自身が中古品の買取りや仕入れ、交換などを行って古物営業を続けるのであれば、営業する本人が新たに古物商許可を受ける必要があります。

申請しただけでは営業を再開できない

ここは、事業を早く引き継ぎたい人が特に注意したい点です。

古物営業法第3条は、古物営業を営もうとする者について、公安委員会の許可を受けなければならないと定めています。したがって、新しい許可を申請しただけで、故人の許可を使いながら古物営業を続けられるわけではありません。

たとえば、新しい許可が出る前に、

中古品を新たに買い取る、古物を仕入れる、交換する、委託を受けて売買するといった古物営業に当たる取引を始めないことが重要です。

事業を引き継ぐ場合は、

「申請したか」ではなく「自分自身が許可を受けたか」

を基準に考えましょう。

故人が残した在庫は「売るだけ」か「営業を続ける」かで分ける

古物商本人が死亡すると、店舗や倉庫に中古品の在庫が残ることがあります。

そこで、

「相続した在庫を売るためにも古物商許可が必要なのか」

という疑問が生じます。

古物営業法では、古物を売却することのみを行う営業は、古物営業の規制対象から除外されています。

2026年5月14日付の警察庁「古物営業法等の解釈運用基準」でも、「古物を売却すること」のみを行う営業は法の規制対象から除外されると整理されています。

したがって、考えるポイントは「在庫が相続財産かどうか」だけではなく、相続人がこれから何をするのかです。

残っている商品を売却するだけの場合

新しい古物を買い取ったり仕入れたりせず、手元にある古物を売却することだけを行うのであれば、「古物を売却することのみ」の整理が問題になります。

新たな買取り・仕入れも行う場合

一方、在庫を売るだけではなく、新たに中古品を買い取る、仕入れる、交換する、委託を受けて売買するといった行為まで行うのであれば、古物営業として相続人自身の許可を確認する必要があります。警察庁の現行解釈でも、売却のみの形態と古物の買取りを行う形態は区別されています。

つまり、

「故人の在庫を売る」ことと「故人の古物営業を引き継ぐ」ことは同じではありません。

実際の取引がどちらに当たるか判断しにくい場合は、管轄警察署へ、

誰が相続した商品なのか、新しい仕入れや買取りをするのか、残った商品の売却だけなのか、今後も店舗やECサイトを事業として運営するのか

を整理して伝えると、自分のケースを確認しやすくなります。

古物営業を続けない場合も許可証の返納は必要

家族の誰も古物営業を引き継がないのであれば、事業承継のために新たな古物商許可を取得する必要はありません。

ただし、故人の許可証の返納は別問題です。

事業を終了する場合でも、古物商許可証の所在、主たる営業所、返納する立場の人、10日以内の期限を確認してください。

そのうえで、店舗、設備、商品などは、古物商許可とは切り分けて相続財産として整理していくことになります。

法人名義の古物商で代表者が死亡した場合は扱いが異なる

ここまで説明してきたのは、死亡した本人が個人として古物商許可を受けていたケースです。

一方、会社が古物商許可を受けており、その代表者が死亡した場合は同じ扱いではありません。

法人名義の場合、許可を受けている主体は代表者個人ではなく法人です。

大阪府警は、法人の代表者を新たに選任して代表者変更の届出を行えば、当該法人の許可のまま古物営業を続けることができると案内しています。ただし、新しい代表者に古物営業法上の欠格事由がある場合は別です。

代表者や役員の変更は事後の変更届出の対象となり、変更の日から原則14日以内、登記事項証明書を添付すべき場合は20日以内に届け出ます。これは古物営業法施行規則にも定められています。

死亡した代表者が営業所の管理者も兼ねていた場合は、管理者変更についても確認が必要です。

したがって、最初に見るべきなのは、

「亡くなった人個人が許可を受けていたのか」
それとも
「法人が許可を受けていて、その代表者が亡くなったのか」

という違いです。

古物商の死亡後はこの順番で確認する

死亡後に迷ったら、次の順番で整理すると分かりやすくなります。

  1. 許可名義を確認する
    個人名義か、法人名義かを確認します。
  2. 個人名義なら許可証の返納を確認する
    同居の親族または法定代理人が、死亡から10日以内に行う返納手続きを確認します。
  3. 古物営業を今後も続けるか決める
    家族が事業を引き継ぐのか、終了するのかを整理します。
  4. 続ける人自身の許可を確認する
    個人事業を相続人が引き継ぐ場合は、自分自身が許可を受ける必要があります。申請中だから営業できるとは考えません。
  5. 在庫売却と事業継続を分ける
    残った古物を売却するだけなのか、新たな買取り・仕入れ等まで始めるのかを整理します。
  6. 判断しにくい部分だけ管轄警察署へ確認する
    「誰が、何を、これからどうするのか」を具体的に伝えて確認します。

この順番で考えれば、「相続」という一つの言葉に全部を押し込まず、必要な手続きを整理できます。

よくある質問

古物商許可を子どもの名義へ変更して、そのまま使えますか?

できません。

個人で許可を受けていた人が死亡した場合、故人の古物商許可を子どもへ名義変更して使い続けるのではなく、子ども自身が古物商許可を受ける必要があります。

新しい古物商許可を申請すれば、許可が出る前から営業できますか?

古物営業を行うには許可を受けることが必要です。

申請しただけで故人の許可を使って古物営業を続けられるわけではありません。許可を受ける前は、新たな買取り・仕入れなど古物営業に当たる取引を始めないようにします。

死亡した古物商の許可証は誰が返納しますか?

古物営業法上は、同居の親族または法定代理人です。相続人なら誰でもよい、という規定ではありません。

許可証はいつまでに返納しますか?

死亡という事由が発生した日から10日以内です。

許可証と別記様式第9号「返納理由書」を提出します。

相続した在庫を売るだけでも古物商許可が必要ですか?

古物営業法では、古物を売却することのみを行う営業は規制対象から除外されています。

一方、新たな古物の買取り・仕入れ・交換・委託売買まで始める場合は別です。実際の取引内容がどちらに当たるかを整理してください。

まとめ|死亡後は「許可」「事業」「在庫」を分けて考える

個人で古物商許可を受けていた人が死亡した場合、相続人が故人の許可をそのまま利用して古物営業を続けることはできません。

まずは個人名義か法人名義かを確認し、個人名義なら許可証の返納を進めます。

家族が事業を続けるのであれば、次に確認するのは「故人の許可をどう引き継ぐか」ではなく、営業する本人が自分自身の許可を受けられているかです。

残った在庫についても、単純な売却だけなのか、新しい買取りや仕入れまで始めるのかを分けて考えると判断しやすくなります。

公式情報を確認したい方へ

制度の根拠や最新の案内を自分でも確認したい場合は、次の公的情報が参考になります。

大阪府警「古物営業法Q&A」

警視庁「返納届出」

警察庁「古物営業法等の解釈運用基準」

実際の提出先、受付方法、地域での案内は、主たる営業所を管轄する警察署・都道府県警察の最新情報も確認してください。

古物商許可の手続きを自分だけで整理しにくい場合

自分で進める場合は、故人の許可証、許可名義、主たる営業所、今後事業を引き継ぐ人、残っている在庫、新たな買取り・仕入れを行う予定があるかを先に整理しておくと、警察署への確認もしやすくなります。

一方、事業を引き継ぐための新規許可が必要になりそうな場合や、個人許可と法人許可の整理、返納と新しい許可申請を並行して進めたい場合には、古物商許可を扱う行政書士へ相談することも選択肢です。

専門家へ相談する場合も、何を任せたいかを先に整理しておけば、「自分で進める範囲」と「依頼する範囲」を判断しやすくなります。