「古物台帳には何を書けばいい?」
「1万円未満の買取も記録するの?」
「特徴欄はどこまで詳しく書けばいい?」
「紙ではなくExcelで管理してもいい?」
古物商許可を取得したあと、実際の営業で迷いやすいのが古物台帳の書き方です。
古物台帳は、用意した雛形へ機械的に入力すればよいものではありません。
最初に確認するのは、
その取引が記録対象なのか
です。
そのうえで、
記録対象を確認する
→ 必要な記載事項を確認する
→ 各項目を具体的に書く
→ 取引の都度記録する
→ 必要な期間保存する
という順番で考えると整理しやすくなります。
この記事では、2026年9月時点の古物営業法・古物営業法施行規則・警察庁の現行解釈をもとに、古物台帳を実際に作成・点検できるところまで解説します。古物営業法第16条・第18条は帳簿等への記載事項と保存について定めています。
古物台帳の書き方は「記録対象→記載事項→記帳→保存」の順で確認する
最初からExcelの列や警察の様式を埋め始めるより、まず次の順番で確認すると迷いにくくなります。
- その取引は台帳への記録が必要か
- 必要なら何を記録するか
- どの程度具体的に記載するか
- いつ記録するか
- どの方法で保存するか
特に重要なのは、買受けと売却を同じルールで判断しないことです。
「古物を扱ったら全部書く」でも、「1万円未満なら全部書かなくてよい」でもありません。
買受けは1万円未満なら原則免除。ただし7区分は例外
通常の買受けでは、取引の対価の総額が1万円未満の場合、原則として本人確認と買受け記録が免除されます。
ただし、現在は次の7区分について、1万円未満でも免除されません。
| 1万円未満でも本人確認・買受け記録が必要な古物 |
|---|
| 自動二輪車・原動機付自転車と一定の部分品 |
| エアコンディショナーの室外ユニット・電気温水機器のヒートポンプ |
| 専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物 |
| 光学的方法により音または映像を記録した物 |
| 電線 |
| 金属製グレーチング |
| 書籍 |
2025年10月1日の改正では、室外ユニット等、電線、金属製グレーチングが追加されました。警視庁の2025年10月施行の改正案内でも改正内容を確認できます。
また、現行の古物営業法施行規則第16条が1万円基準と例外となる古物を定めています。
また、1万円基準は商品1点ごとの単価ではなく、一度に持ち込まれた物品の対価を合計した額で判断します。
1万円ちょうどは「1万円未満」ではありません。
警察庁の現行解釈では、1万円の判定に消費税は含めません。
7区分の対象範囲や1万円の具体的な判定については、既存の「古物商の1万円未満取引ルール」で詳しく解説しています。
自社が売った商品を同じ相手から直接買い戻す場合は別の免除がある
1万円未満の免除とは別に、
自社が売却した物品を、その売却相手から直接買い戻す場合
には、本人確認と買受け記録について免除があります。
ポイントは「直接」です。
第三者を介して買い戻した場合まで同じ扱いになるわけではありません。
通常の仕入れ・買取と、自社商品の直接買戻しは分けて考えましょう。
古物を売却したときの台帳記録は買受け時と同じではない
売却側も誤解しやすいところです。
「1万円以上の商品を売ったら、全部台帳に書く」
というルールではありません。
現行の施行規則18条では、売却等で帳簿への記録義務が残る古物を、美術品類、時計・宝飾品類、自動車、自動二輪車・原動機付自転車等に限定して整理しています。
警察庁の現行「古物営業法等の解釈運用基準」を実務上分かりやすく整理すると、次のとおりです。
| 売却する古物 | 売却記録 |
|---|---|
| オートバイ本体 | 金額を問わず必要 |
| オートバイの部分品 | 1万円以上は必要、1万円未満は原則不要 |
| 自動車・その部分品 | 1万円以上は必要、1万円未満は不要 |
| 美術品類 | 1万円以上は必要、1万円未満は不要 |
| 時計・宝飾品類 | 1万円以上は必要、1万円未満は不要 |
| ゲームソフト等、室外ユニット等、CD・DVD等、電線、金属製グレーチング、書籍 | 金額にかかわらず売却記録は不要 |
| 上記以外の古物 | 原則として売却記録は不要 |
つまり、
買い取った場合の記録ルール
と
売った場合の記録ルール
は分けて確認する必要があります。
なお、自動車を引き渡す場合には、売却記録が必要となる場合でも、売却相手の住所・氏名・職業・年齢については記録不要とされています。
古物台帳には何を書く?法律上の記載事項は5号
古物営業法第16条では、帳簿等へ記載・記録する事項を次の5号に分けています。
| 法律上の記載事項 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 取引の年月日 |
| 2 | 古物の品目・数量 |
| 3 | 古物の特徴 |
| 4 | 相手方の住所・氏名・職業・年齢 |
| 5 | 本人確認のために行った措置の区分等 |
古物営業法16条そのものが列挙しているのはこの5号です。
インターネットでは「古物台帳は6項目」などと説明されている場合もあります。
これは「品目」と「数量」を別に数えたり、公式帳簿様式にある「区別」欄などを含めたりしていることがあります。
したがって、
法律上の記載事項
と
実際の台帳に設ける欄
は分けて理解すると混乱しません。
また、すべての取引で5号すべてを同じように記録するわけではありません。
買受けか売却か、古物の種類、金額、法令上の例外によって必要な記録範囲は変わります。
公式の帳簿様式と、受入れ・払出し・特徴欄の具体的な記載例は警視庁が公開しています。
取引金額は古物営業法16条の5号には含まれていない
古物台帳のテンプレートには「取引金額」欄が設けられていることがあります。
しかし、古物営業法第16条が列挙する5号の中に、取引金額そのものは含まれていません。
一方、1万円未満の免除を判断するには取引金額の把握が必要です。
自社管理のために金額欄を設けることと、法律上の5号を分けて理解しておくとよいでしょう。
古物台帳の記入例|1件の取引をどう書く?
項目を一つずつ理解しても、実際に一件の取引をどう台帳へ落とし込むのか分かりにくいことがあります。
以下は、各欄のつながりを理解するための説明用の仮例です。警察の公式様式そのものではありません。
| 項目 | 説明用の記入イメージ |
|---|---|
| 取引年月日 | 2026年9月10日 |
| 区別 | 買受け |
| 品目・数量 | 時計・1点 |
| 特徴 | メーカーA、型式AB-123、裏面に擦り傷あり |
| 相手方 | 〇〇県〇〇市、Aさん、会社員、35歳 |
| 本人確認措置 | 実際に行った本人確認措置の区分・方法を記録 |
重要なのは、この文章をそのまま写すことではありません。
実際の取引内容と、実際に行った本人確認措置に合わせて記録する
ことです。
「受入れ」と「払出し」はどう書く?
警視庁の公式帳簿様式では、「受入れ」と「払出し」に分かれています。
「区別」欄は、
受入れ
- 買受け
- 委託
払出し
- 売却
- 委託に基づく引渡し
- 返還
という整理です。
したがって、
「受入れ=買い取りだけ」
「払出し=販売だけ」
と単純に考えないようにしましょう。
実際にどの形で古物を受け取り、どの形で引き渡したのかが分かるように記録します。
古物台帳の「特徴」欄はどこまで書く?
古物台帳で特に手が止まりやすいのが「特徴」欄です。
単に、
「時計」
「バッグ」
「衣類」
だけでは、同じ種類の商品が複数ある場合に、後からどの商品だったのか区別しにくくなります。
警視庁の公式様式では、特徴欄について次のような具体例を示しています。
| 古物 | 特徴として記載する内容の例 |
|---|---|
| 衣類 | 仕立て、色、ネーム、形状など |
| 時計 | メーカー、型、番号、傷など |
| 自動車 | 登録番号・車両番号、車名、車台番号、所有者情報など |
大切なのは、
すべての商品について同じ項目を必ず書く
という意味ではないことです。
判断しやすい基準は、
「この台帳を後から見たとき、どの古物だったのか区別できるか」
です。
商品に応じて、識別に役立つ特徴を具体的に残しましょう。
古物台帳は原則1品ごと|まとめて記載できる例外もある
古物の品目等は、原則として1品ごとに記録します。
警視庁の公式様式も「品目」欄は、一品ごとに記載するよう定めています。
一方、警察庁の現行解釈では例外もあります。
書籍
同一人から同時に受け取ったものは、まとめて記載できます。
重量だけで定量的に取引する衣類
個別査定をせず重さだけで取引する場合には、同一人から同時に受け取った衣類をまとめて記録できます。
一方、CD・DVD等は原則どおり1品ごとの記録です。
大量の商品を買い取ったからという理由だけで、
「全部まとめて1行」
と自己判断しないようにしましょう。
相手方の住所・氏名・職業・年齢と本人確認措置を記録する
記録義務がある取引では、必要に応じて相手方の
- 住所
- 氏名
- 職業
- 年齢
を記録します。
警察庁の現行解釈では、年齢については生年月日の記載をもって年齢の記載とすることができます。
本人確認が必要な取引では、相手方情報だけでなく、
どの本人確認措置を行ったのか
も記録します。
本人確認そのものの具体的な方法は、台帳の書き方とは別に、対面・非対面など取引方法ごとに理解する必要があります。
法人から宅配・オンラインなど非対面で中古品を買い取る場合は、担当者確認まで含めて別記事で詳しく解説しています。
法人から非対面で中古品を買い取る場合の本人確認方法を確認する
古物台帳はいつ書く?「その都度」が原則
古物営業法第16条は、必要事項をその都度記録することを求めています。
警察庁の現行解釈では、古物を受け取り、または譲り渡すそのたびごとに記載するものとされ、1週間分や1か月分をまとめて記載する方法は認められていません。
少なくとも、その日の分はその日のうちに記載することが原則です。
古物台帳は、
正しいフォーマットを作ること
だけでなく、
実際の取引と記帳を連動させること
まで考える必要があります。
古物台帳の保存期間は3年間|紙と電子では起算点が異なる
古物台帳の保存期間は3年間です。
ただし、紙の帳簿等と電磁的記録では、法律上の起算点が異なります。
| 管理方法 | 保存期間 |
|---|---|
| 紙の帳簿等 | 最終の記載をした日から3年間 |
| 電磁的記録 | 当該記録をした日から3年間 |
古物営業法18条に、この違いが明記されています。
紙の帳簿について、本来記載すべき日と実際に記載した日が異なる場合には、本来記載すべき日を基準に保存期間を考えます。
そのため、
「各取引から3年経った行を順番に消せばよい」
と単純に考えず、紙と電子のどちらで管理しているかに応じて保存しましょう。
古物台帳はExcelでも管理できる?
紙の帳簿だけが認められているわけではありません。
古物営業法16条は、電磁的方法による記録を認めています。
そのため、必要な条件を満たせば、Excelなどの表計算ソフトを利用した管理も可能です。
ただし、
「Excelを使えば、それだけで古物台帳として問題ない」
という意味ではありません。
Excel等で管理するときに確認したいこと
少なくとも次を確認しておきましょう。
- 法律上必要な事項を記録できる
- 取引ごとの記録を残せる
- 必要な期間保存できる
- 営業所で記録内容を確認できる
- 必要なときに直ちに書面へ表示・印刷できる
古物営業法18条は、電磁的記録について、営業所等で直ちに書面に表示することができるようにして保存することを求めています。
各営業所で必要な表示・印刷ができる状態であれば、本社等でデータを一括管理する方法もあります。
つまりExcel管理で見るべきなのは、
Excelというソフトを使っているか
ではなく、
必要事項を記録し、保存し、必要なときに確認・提示できる仕組みになっているか
です。
紙・Excel・専用システムはどれを選べばいい?
法令上必要な記録・保存ができるのであれば、管理方法は一つではありません。
| 管理方法 | 向いているケース | 特に確認したいこと |
|---|---|---|
| 紙 | 取引件数が少なくシンプルに管理したい | 記載漏れ、保管、紛失 |
| Excel等 | 検索・並べ替えや自社用の項目管理をしたい | 法定事項、保存、バックアップ、印刷環境 |
| POS・専用システム | 取引件数が多く店舗業務等と連携したい | 法定事項を網羅できるか、必要時に表示・出力できるか |
高機能なシステムを使うこと自体が目的ではありません。
自社の取引で必要な記録を、継続して正しく残せる方法を選ぶこと
が重要です。
帳簿や電子データを紛失・消失した場合は届出が必要
帳簿等や電磁的記録を毀損・亡失・滅失した場合は、直ちに営業所所在地の所轄警察署長へ届け出る必要があります。
紙なら紛失・水濡れ・焼失、電子データならデータ消失などが考えられます。
電子管理では、法定項目を作るだけでなく、データを失わないためのバックアップも実務上考えておくとよいでしょう。
クラウドサービスや特定の有料システムを使うこと自体が法的義務という意味ではありません。
自社の古物台帳はこの順番で点検する
すでに紙・Excel・システムで古物台帳を作っている場合は、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
STEP1 記録対象を確認する
買受け・売却について、記録が必要な取引を正しく判定できているか。
STEP2 必要事項を確認する
取引年月日、品目・数量、特徴、相手方情報、本人確認措置など必要事項を記録できるか。
STEP3 具体性を確認する
特徴欄を見て、後からどの古物だったのか区別できるか。
STEP4 記帳時期を確認する
週・月単位でまとめるのではなく、その都度記録する運用になっているか。
STEP5 保存方法を確認する
紙・電子それぞれの方法に応じて3年間保存できるか。
STEP6 電子管理なら表示・印刷を確認する
営業所で必要なときに直ちに表示・印刷できる状態になっているか。
この順番なら、
「Excelの列は揃っているが、そもそも記録対象の判断が違っていた」
といった運用上のズレも見つけやすくなります。
よくある質問
1万円未満なら古物台帳に記録しなくてよいですか?
原則として、1万円未満の通常の買受けには本人確認・買受け記録の免除があります。
ただし、現在は7区分について1万円未満でも対象になります。
また、売却記録は買受け記録と別のルールです。
金額だけで一律に判断しないでください。
取引金額は古物台帳の法定必須項目ですか?
古物営業法第16条が列挙する5号の中に、取引金額そのものは含まれていません。
ただし、1万円未満の免除を判断するには取引金額の確認が必要です。
自社管理用として金額欄を設ける場合でも、法律上の5号とは分けて理解しましょう。
警察の古物台帳様式をそのまま使わなければいけませんか?
必ず公式様式そのものを使わなければならないわけではありません。
古物営業法施行規則17条では、必要事項を取引順に記載できる書類や、取引ごとの伝票等を取引順に整理したものも帳簿に準ずる書類として扱えることを定めています。
電磁的方法による記録も認められています。
Excelで古物台帳を作っても大丈夫ですか?
Excelという製品名を法令が指定しているわけではありませんが、電磁的方法による記録は認められています。
必要な法定事項を記録し、保存期間を守り、営業所で必要なときに直ちに表示・印刷できる状態などを確保して運用してください。
商品は必ず1点ずつ記録しますか?
原則として1品ごとです。
ただし、書籍や、重量のみで取引する一定の衣類については、同一人から同時に受け取ったものをまとめて記載できる場合があります。
CD・DVD等は原則どおり1品ごとです。
同じ人から何度も買い取る場合、毎回住所などを書きますか?
警視庁の公式帳簿様式では、現在使用している帳簿にすでに住所・氏名・職業・年齢が記載されている人について、変更がない事項は氏名以外を省略できるとされています。
まとめ|古物台帳は「何を書くか」より先に「この取引を書くか」を確認する
古物台帳で最初に考えるべきなのは、雛形のどの欄を埋めるかではありません。
まず、
この取引は記録対象か
を確認します。
そのうえで、
必要事項を記録する
→ 古物を区別できるよう具体的に書く
→ 取引の都度記録する
→ 3年間適切に保存する
→ 電子管理なら必要時に表示・印刷できる状態にする
という流れで運用します。
特に、
1万円未満でも買受け記録が必要になる古物があること
と、
売却記録の範囲は買受け記録と同じではないこと
には注意してください。
現在の古物台帳を見直す場合も、
「必要な列があるか」だけでなく、記録対象の判断から保存まで一連の運用がつながっているか
を確認すると、実際の改善点を見つけやすくなります。
これから古物商許可を取得する方へ
これから古物商許可を取得する方は、申請だけでなく、許可取得後に使う古物台帳まで準備しておくと、営業開始後の記帳で迷いにくくなります。
サクセスファン行政書士事務所の古物商許可サポートでは、現在、特典として電子データの古物台帳雛形が案内されています。
すでに許可を取得している方で、自社の取引がどの記録ルールに当たるか判断しにくい場合は、
- 何を買い取り・売却しているか
- 取引金額
- 対面か非対面か
- 現在どのように記録しているか
を整理したうえで、所轄警察署へ確認すると、具体的に相談しやすくなります。
自分の地域の警察本部を探す場合は、警察庁の都道府県警察本部リンク一覧から確認できます。

