古物商許可を取りたいものの、
- 店舗を借りないと申請できないのか
- 自宅や賃貸マンションでも営業所にできるのか
- バーチャルオフィスの住所を使えるのか
と迷っている方もいるでしょう。
最初に押さえたいのは、「店舗がない」と「営業所がない」は同じではないことです。
沖縄県警の古物商許可申請書の記載例では、「営業所」を古物営業の拠点となる場所として説明し、店舗がなくても自宅で営業事務を行う場合には「営業所あり」とする例が示されています。一方、申請書には「営業所なし」という区分もあります。
つまり、営業所について考えるときは「店舗があるか」ではなく、実際にどこを古物営業の拠点にするのかから整理することが大切です。
この記事では、自宅・賃貸物件・バーチャルオフィスを単純な○×で分類するのではなく、自分の候補地について何を確認し、どの順番で判断すればよいのかを解説します。
この記事のポイント
1.店舗なし=営業所なし、ではありません
店舗を構えなくても、自宅で古物営業の事務を行うなら「営業所あり」と整理される公的な記載例があります。
2.自宅という理由だけで営業所から除外されるわけではありません
大切なのは、自宅を実際に古物営業の拠点として使うのか、物件の利用関係に問題がないかを分けて確認することです。
3.賃貸なら使用承諾書が全国一律で必須、とはいえません
広島県警は、賃貸借契約書の写しや使用承諾書等について「必要な場合がある」として、申請先警察署への確認を案内しています。
4.バーチャルオフィスは名称だけで判断しないことが重要です
まず実際の営業拠点を整理し、その所在地を営業所として申請したい場合は、契約前に管轄警察署へ確認するのが安全です。
古物商許可の「営業所」とは?まず店舗との違いを整理しよう
営業所を考えるときに最も避けたいのが、
店舗がないから、自分には営業所もない
とそのまま考えてしまうことです。
沖縄県警の申請書記載例では、「営業所とは、古物営業の拠点となる場所」と説明され、**店舗がなくても自宅で営業事務を行う場合は「営業所あり」**とするよう示されています。申請書にも「営業所あり」「営業所なし」「古物市場」の区分があります。
また、愛知県警は古物商許可の申請窓口を「主たる営業所」の所在地を管轄する警察署としつつ、営業所がない場合は住所または居所を基準にすると案内しています。
したがって、
- 実店舗を持たない
- ネット販売だけを予定している
- 自宅へお客さんを呼ばない
という事情だけで「営業所なし」と決めることはできません。
最初に考えるべきなのは、古物営業に関する事務や管理を実際にどこで行うのかです。
営業所は単なる「申請用の住所」ではない
営業所には、古物営業上の制度も結び付いています。
警察庁の現行の解釈運用基準では、管理者は「営業所又は古物市場ごとに」選任するのが原則とされ、それぞれの営業所等で管理者の業務に従事できる状態が求められています。一定の場合には複数営業所の兼任が認められ得ることも示されています。
また、古物営業法上の標識についても、営業所等の入口など「公衆の見やすい場所」に掲示する制度があります。
ここから分かるのは、営業所は単に許可申請書へ記載する住所というだけではなく、実際の古物営業の管理と結び付いた場所だということです。
この考え方を土台にすると、自宅・賃貸・バーチャルオフィスについても整理しやすくなります。
自宅を古物商許可の営業所にできる?
自宅という理由だけで、古物商の営業所にできないわけではありません。
沖縄県警の公式記載例でも、自宅で営業事務を行うケースが「営業所あり」の例として明示されています。
たとえば、実店舗を持たず、自宅を拠点としてネット販売に関する営業事務を行うのであれば、「店舗がない」というだけで営業所なしになるわけではありません。
ただし、
自宅=無条件で営業所にできる
という意味でもありません。
自宅を営業所候補にするときは、次の2つを分けて考えると分かりやすくなります。
1.古物営業の拠点として、その自宅を使うのか
まず、自分が実際にどこで古物営業に関する事務や管理を行うのかを整理します。
「住所だけ自宅にする」のではなく、実際の営業実態と営業所を対応させて考えることが重要です。
2.その物件を事業に利用してよいのか
特に賃貸住宅や集合住宅の場合は、古物商許可とは別に、賃貸借契約や管理規約などに確認すべき点がないか見ておきましょう。
ここでは、
- 古物商許可上、その場所をどう申請するか
- その物件をその用途で使えるか
を混同しないことがポイントです。
賃貸マンション・アパートを営業所にする場合の確認ポイント
賃貸物件についても、賃貸だから一律に営業所にできないとはいえません。
一方、自己所有の物件とは異なり、その場所を使用できる関係が分かる資料について確認が必要になることがあります。
申請前には少なくとも、
- 賃貸借契約の内容
- 管理規約などに事業利用について確認すべき記載がないか
- 所有者・管理会社等への確認が必要か
- 警察署から営業所の確保を示す資料を求められるか
を整理しておくとよいでしょう。
使用承諾書は必ず必要?
ここは、特に誤解しやすいところです。
「賃貸なら使用承諾書が全国一律で必須」とは扱わない方が適切です。
広島県警は、通常の申請書類とは別に、営業所を確保していることの疎明資料として、
- 賃貸借契約書の写し
- 使用承諾書等
の提出が必要な場合があると案内し、許可申請をする警察署へ確認するよう求めています。
一方、愛知県警が公表している古物商許可申請の添付書類一覧では、一般的な添付書類として賃貸借契約書や使用承諾書は掲載されていません。
そのため、インターネットの記事だけを見て、
- 使用承諾書は必ず必要
- 使用承諾書は絶対に不要
のどちらかに決めつけるのは避けましょう。
自分の申請先となる警察署へ確認することが確実です。
これから物件を借りるのであれば、契約後ではなく、候補段階で確認しておくと手戻りを減らせます。
バーチャルオフィスを古物商の営業所にできる?
バーチャルオフィスについては、「バーチャルオフィスだから○」「バーチャルオフィスだから×」とサービス名称だけで結論を出さないことが重要です。
まず確認したいのは、
あなたが実際にどこを古物営業の拠点として使うのか
という点です。
たとえば、バーチャルオフィスは住所利用だけで、実際には自宅で営業事務を行う予定なのであれば、先に考えるべきなのは「バーチャルオフィスの住所が使えるか」ではなく、実際の営業拠点をどこに置くのかです。
逆に、契約するオフィス所在地そのものを古物商の営業所として申請したいのであれば、
- どのようなスペースを利用できるのか
- どのような契約になっているのか
- 実際の営業事務をそこで行うのか
- 申請先警察署が何を確認するのか
を整理する必要があります。
バーチャルオフィスを検討している場合は、契約してから営業所として扱えないと分かる事態を避けるため、契約前に管轄警察署へ具体的な利用方法を伝えて確認するのがよいでしょう。
法人登記できることと、古物商の営業所にできることは分けて考える
「法人登記に利用できる住所だから、古物商の営業所にもできるはず」とは限りません。
法人の本店所在地として利用できるかという問題と、古物営業上どこを営業所として申請するかは、分けて考える必要があります。
バーチャルオフィスを選ぶ際は、登記可能かだけで判断せず、古物営業の実態と営業所が対応するかを先に確認しましょう。
自宅・賃貸・バーチャルオフィスの違いを整理
候補地ごとの考え方をまとめると、次のようになります。
| 営業所候補 | 最初に整理すること | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 自宅 | 実際に古物営業の拠点として使うか | 所有・利用関係や物件上の制限 |
| 賃貸住宅・賃貸事務所 | その場所で営業事務を行うか | 契約内容、必要に応じて賃貸借契約書・使用承諾書等 |
| バーチャルオフィス等 | 実際の営業拠点がどこなのか | 利用形態・契約内容を整理し、管轄警察署へ確認 |
| 営業所を設けない場合 | 本当に「営業所なし」に当たる形態なのか | 住所・居所を基準とした申請先等を確認 |
大切なのは、表だけを見て○×を決めることではありません。
物件の種類ではなく「実際の古物営業をどこで行うか」から考え、その後に物件と申請の条件を確認するのが基本です。
営業所候補を決める前に確認したい5つの手順
「自分の場合は結局どうすればいい?」と迷ったら、次の順番で整理してみてください。
1.実際の営業拠点を決める
最初に、
- どこで古物営業に関する事務をするか
- どこを日常的な営業の拠点にするか
- 実店舗を設けるのか
- 自宅を使うのか
を整理します。
住所探しより、実態の整理が先です。
2.物件との関係を整理する
候補地が、
- 自己所有
- 家族等の所有
- 賃貸住宅
- 賃貸事務所
- バーチャルオフィスやレンタルオフィス等
のどれに当たるのかを確認します。
賃貸等であれば、契約書や規約の内容も確認しておきましょう。
3.営業所に結び付く制度を確認する
営業所を設ける場合には、管理者など営業所に関係する制度があります。
警察庁の解釈運用基準では、管理者は原則として営業所または古物市場ごとに選任し、それぞれの営業所等で管理者業務に従事できる状態にあることが求められています。
営業所を「住所だけ」で決めるのではなく、実際の営業体制まで含めて考えましょう。
4.分からない部分を申請先の警察署へ確認する
自分の状況を整理したら、不明点だけを警察署へ確認します。
愛知県警では、主たる営業所がある場合はその所在地、営業所がない場合は住所または居所の所在地を管轄する警察署を申請窓口としています。
相談するときは、
- 古物商許可を新規申請する予定であること
- 候補物件の種類
- 自己所有か賃貸か
- 実際にどこで営業事務をする予定か
- バーチャルオフィス等なら具体的な利用内容
- どの資料を用意できるか
を伝えると、確認したいポイントを整理しやすくなります。
5.確認後に契約・申請準備へ進む
これから賃貸物件やバーチャルオフィスを契約するのであれば、可能な範囲で契約前に営業所としての扱いを確認しておきましょう。
契約してから別の場所を探し直すより、候補段階で確認した方が手戻りを減らせます。
よくある質問
ネット販売だけなら「営業所なし」で申請できますか?
ネット販売だけだから、自動的に「営業所なし」になるわけではありません。
沖縄県警の申請書記載例では、店舗がなくても自宅で営業事務を行う場合は「営業所あり」とする説明があります。まずは販売方法ではなく、実際にどこを古物営業の拠点として使うのかを整理してください。
自宅なら古物商の営業所にできますか?
自宅を古物営業の拠点とすること自体は、公的な申請記載例でも想定されています。
ただし、どの自宅でも無条件に問題がないという意味ではありません。賃貸住宅などでは、物件の利用関係もあわせて確認しましょう。
賃貸住宅では使用承諾書が必須ですか?
全国一律に必須とはいえません。
広島県警は、賃貸借契約書の写しや使用承諾書等について、営業所を確保していることを示す資料として「必要な場合がある」と案内しています。申請先警察署へ事前に確認してください。
バーチャルオフィスを契約すれば古物商許可を申請できますか?
契約したという事実だけでは判断できません。
まず、実際の古物営業の拠点をどこに置くのかを整理します。その所在地自体を営業所として申請したいのであれば、サービスの利用形態や契約内容を整理したうえで、契約前に管轄警察署へ確認するのがよいでしょう。
古物商許可の営業所は「物件の種類」より「実際の使い方」から考えよう
古物商許可の営業所について迷ったときは、
- 自宅だから大丈夫
- 賃貸だから難しい
- バーチャルオフィスだから使えない
と物件名だけで判断しないことが大切です。
まず確認するのは、
- 実際にどこを古物営業の拠点とするのか
- その場所を予定する用途で使用できるのか
- 申請先警察署でどのような確認・資料が必要になるのか
の3点です。
ここまで整理できれば、自分で警察署へ確認して申請準備を進めることもできます。
一方、候補物件が複数ある、賃貸・バーチャルオフィスの扱いを整理しにくい、営業所の判断から許可申請までまとめて進めたいといった場合には、古物商許可を扱う行政書士へ相談することも選択肢です。
相談する場合も、
- 営業所候補
- 所有・賃貸の別
- 実際に営業事務を行う場所
- 営業方法
- 物件の契約状況
を先に整理しておくと、個別事情の確認を進めやすくなります。
公的情報を確認する場合
古物営業の全国的な解釈・運用については、警察庁の資料を確認できます。
警察庁「古物営業法等の解釈運用基準について」
実際の許可申請や営業所に関する必要資料は、申請先となる都道府県警・警察署の最新案内も確認してください。たとえば広島県警は、営業所確保の疎明資料について申請警察署への確認を案内しています。
広島県警「古物商等許可申請手続等の概要について」

