「古物商許可を取りたいけれど、自宅を営業所にしたくない」
「住所だけバーチャルオフィスを借りれば申請できるのでは?」
中古品のネット販売やリユース事業を始める方の中には、このように考える方もいるでしょう。
先に重要な点をお伝えすると、「バーチャルオフィス」という名称だけで、古物商許可に使える・使えないを一律に判断することはできません。
警察庁の現行の解釈運用基準では、「営業所」は営業の本拠であり、営業全般について法律的・事実的行為の責任が所在する場所と整理されています。単に住所を借りられることと、古物営業上の営業所として利用できることは別問題です。
そのため、古物商のオフィスを選ぶときに見るべきなのは、
「バーチャルオフィスか、レンタルオフィスか」という名称ではなく、その場所が実際に古物営業の営業所として機能するか
という点です。
この記事では、バーチャルオフィスの考え方から、自宅・レンタルオフィス・シェアオフィスなどの代替候補、契約前に何を確認すればよいかまで順番に整理します。
この記事のポイント
1.バーチャルオフィスという名前だけでは判断できない
全国共通の公的資料には「バーチャルオフィスなら一律不可」とする単純な基準は確認できません。営業所としての実際の使い方・実態から判断する必要があります。
2.「住所を借りられる」と「営業所にできる」は別
古物商の営業所は、単なる郵便物の受取先ではありません。営業の本拠・責任の所在場所として考える必要があります。
3.自宅やレンタルオフィスも名称だけで○×を決めない
自宅・賃貸物件・レンタルオフィス・シェアオフィスなども、営業所としてどう利用するのか、管理者や標識、契約内容などを個別に確認します。
4.オフィスは「契約してから」ではなく「契約前」に確認する
判断できない点がある場合は、候補地の利用方法を整理して、主たる営業所を管轄する警察署へ事前確認する方が手戻りを避けやすくなります。
バーチャルオフィスで古物商許可は取れる?
結論は、バーチャルオフィスというサービス名だけでは判断できません。
警察庁の2026年5月14日付「古物営業法等の解釈運用基準」では、営業所を「営業の本拠」とし、営業全般についての責任が所在する場所としています。さらに、営業上必要な帳簿や商品を保管する事務所・店舗などを含む意味だと説明しています。
ここから分かるのは、事業用の住所を取得できるだけでは、古物商の営業所として使える根拠にはならないということです。
たとえば、住所や郵便物受取だけを利用し、その場所を古物営業の拠点として実際には利用しないサービスであれば、「住所がある」という一点だけで営業所として申請できるとは判断できません。
一方で、公的資料に「バーチャルオフィスという名称なら全国一律で不可」とする基準も確認できません。
したがって、
バーチャルオフィスだからダメか?
ではなく、
この場所、この契約、この使い方で、古物営業の営業所としての実態を備えられるか?
と考えることが大切です。
これからバーチャルオフィスを契約する段階なら、先に料金や住所だけで契約先を決めるのではなく、次に説明する営業所のポイントを確認しましょう。
古物商許可の営業所で確認したいポイント
オフィス選びでは、次のポイントを共通の判断軸にすると整理しやすくなります。
営業の本拠として使えるか
まず見るのは、その場所が実際に古物営業の拠点になるかです。
営業所は単なる連絡先ではありません。
警察庁の基準では、法人についても、古物営業の中心となる場所が会社法上の支店であれば、古物営業上の主たる営業所と会社法上の本店が一致しない場合があり得るとされています。
つまり、
- 法人登記に利用できる
- 郵便物を受け取れる
- 名刺に住所を書ける
といった事情だけで、古物商の営業所として使えるとは限りません。
**「古物営業をどこで管理し、その営業について責任を負う場所はどこなのか」**を考える必要があります。
管理者が営業所の業務を管理できるか
古物商は、営業所ごとに管理者を選任するのが原則です。
警察庁の基準では、管理者は営業所等の業務を統括管理し、従業者等を指揮監督できる者でなければならず、原則としてそれぞれの営業所に常勤して管理者業務に従事できる状態が必要とされています。古物商本人が実質的に業務を統括できる場合は、自分を管理者にすることもできます。
そのため、共同オフィスなどを検討するときも、
「住所を借りられるか」だけでなく、「ここを自分の営業所として実際に管理できるか」
という視点が必要です。
古物商の標識を掲示できるか
古物商には、営業所等に所定の標識を掲示する義務があります。
警察庁は「公衆の見やすい場所」について、営業所等の入口など、一般公衆から社会通念上見やすい場所と説明しています。
レンタルオフィスやシェアオフィスを検討する場合は、古物商の標識を適切な場所へ掲示できるかも契約前に確認しておきましょう。
その場所を古物営業に使える契約になっているか
行政上の営業所要件とは別に、その物件・施設を古物営業に利用できるかという契約上の確認も必要です。
特に、
- 賃貸住宅
- レンタルオフィス
- シェアオフィス
- コワーキングスペース
では、利用規約や賃貸借契約、管理規約などを確認しておいた方がよいでしょう。
また、申請時にどの資料を求められるかには個別性があります。
たとえば広島県警は、通常の申請書類のほか、営業所を確保していることを示す資料として、賃貸借契約書の写しや使用承諾書等が必要になる場合があるため、申請する警察署へ確認するよう案内しています。
つまり、「賃貸なら全国どこでも使用承諾書が必須」といった一律の理解は避けるべきです。
バーチャルオフィスが難しいときの代替候補
バーチャルオフィスが自分の利用方法に合わないとしても、「店舗用物件を借りるしかない」とすぐに考える必要はありません。
自宅や実体のあるレンタルオフィスなど、別の候補を検討できます。
ただし、以下は「許可される・されない」の○×表ではありません。それぞれ何を確認すればよいかを整理したものです。
| 営業所の候補 | 主に確認したいこと |
|---|---|
| バーチャルオフィス | 住所貸しにとどまらず、営業の本拠・責任の所在場所として実際に利用できるか |
| 自宅 | 営業所として利用する実態があるか。賃貸・分譲の場合は契約や管理規約等も確認 |
| レンタルオフィス | 実際に業務できるか、管理者の業務や標識掲示に支障がないか、契約上利用できるか |
| シェアオフィス | 自分の営業所として特定・管理できる利用形態か、標識掲示や契約条件に問題がないか |
| コワーキングスペース | 共有利用の実態を踏まえ、営業の本拠として利用できる形態なのかを個別確認 |
自宅を営業所候補にする場合
自宅も営業所候補として検討できますが、自宅だから無条件に問題ないという意味ではありません。
賃貸住宅であれば賃貸借契約、分譲マンションなら管理規約などで、事業利用に制限がないか確認しておきましょう。
申請上、営業所を確保していることをどのように確認するかは地域や個別事情で異なる場合があります。
たとえば広島県警は、賃貸借契約書の写しや使用承諾書等を追加で求める場合があるとしています。
自宅を使いたい場合は、
「自宅だから大丈夫か」ではなく、「この自宅をこの条件で営業所として使用できるか」
という形で確認するのが適切です。
レンタルオフィスの場合
レンタルオフィスも、名称だけで許可の可否は決まりません。
契約前には少なくとも、
- 実際にその場所で古物営業の業務を行えるか
- 古物営業への利用が契約上認められているか
- 管理者が営業所の業務を管理できる利用形態か
- 古物商の標識を掲示できるか
を確認しておくと判断しやすくなります。
「個室だから大丈夫」といった一条件だけで判断するのではなく、営業所として必要な機能を全体で確認することがポイントです。
シェアオフィス・コワーキングスペースの場合
シェアオフィスやコワーキングスペースは、施設によって利用方法が大きく異なります。
専用区画があるタイプもあれば、利用する席が固定されないタイプもあります。
そのため、
「自分の古物営業の営業所は、この場所です」と具体的に説明できる利用実態があるか
を軸に確認しましょう。
営業所として使えるか判断が難しいときは、施設のパンフレット、契約内容、利用方法などを整理して、契約前に管轄警察署へ確認する方法があります。
ネット販売だけなら営業所を考えなくてよい?
メルカリやECサイト、自社ネットショップなどを中心に事業をする方は、
「実店舗を持たないなら営業所はいらないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、ネット販売だけだから営業所について考えなくてよい、とはいえません。
警察庁の基準では、「行商のみを行う者」については住所または居所を営業所とみなす取扱いが明記されています。これは逆にいえば、「行商のみ」という条件のある整理です。ネット販売一般について「営業所は不要」とする規定ではありません。
また、ウェブサイトを利用して古物取引を行う場合には、URLについての手続が関係することがあります。
警視庁は、該当する営業形態の場合、URLを使用する権限があることを示す資料を新規許可申請の添付書類として案内しています。
ネット販売中心の方は、
「店舗がない=営業所の問題がない」ではなく、営業所とネット取引上の手続を別々に整理する
と理解すると分かりやすいでしょう。
自宅住所を公開したくないなら「営業所」と「住所表示」を分けて考える
バーチャルオフィスを検討する本当の理由が、
「自宅住所をネット上に掲載したくない」
というケースもあります。
この場合、古物商の営業所をどこにするかという問題と、ウェブサイト上にどの住所を表示するかという問題を分けて考えることが重要です。
古物営業法上のウェブ表示事項に営業所住所は含まれていない
警察庁の現行基準では、古物営業法上ウェブサイトへ表示する「氏名等」は、
- 氏名または名称
- 許可をした公安委員会の名称
- 許可証番号
とされています。ここに営業所住所は含まれていません。
なお、ウェブサイトを利用して古物取引を行う「特定古物商」については、取り扱う古物に関する事項とともに氏名等を表示する必要があり、一定の表示義務免除も適用されません。
ネット通販では特定商取引法の住所表示が別に問題になる
一方で、ネット販売が特定商取引法上の通信販売に当たる場合には、別の住所表示ルールがあります。
消費者庁は、通信販売について、原則として事業者の氏名・名称、住所、電話番号等の表示が必要であり、住所は「現に活動している住所」と説明しています。一定の措置を講じた場合には、住所・電話番号等を広告上で省略できるケースもあります。
さらに、個人事業者については一定条件を満たせば、バーチャルオフィスの住所・電話番号を通信販売の表示に利用して、特定商取引法上の要請を満たせる場合があることも消費者庁Q&Aで示されています。
ただし、ここは混同してはいけません。
特定商取引法上、広告表示にバーチャルオフィス住所を使える場合があることと、そのバーチャルオフィスを古物商の営業所として使えることは別の話です。
自宅住所の公開を避けたいのであれば、
営業所をどこにするか
と
ネット上でどの住所を表示するか
を分けて解決策を探す方が、選択肢を狭めずに済みます。
古物商のオフィスは契約前にこの順番で確認する
ここまでの内容を、実際の行動へ落とし込みましょう。
オフィス選びは、次の順番で進めると整理しやすくなります。
- 自分がどこで何をするのか整理する
店頭買取、出張買取、ネット販売、商品の保管など、実際の営業方法を書き出します。 - 営業所候補を挙げる
自宅、レンタルオフィス、シェアオフィスなど、現実的な候補を絞ります。 - 営業所としての実態を確認する
営業の本拠として利用できるか、管理者が業務を管理できるか、標識を掲示できるかを確認します。 - 契約・施設側の条件を確認する
賃貸借契約、利用規約、管理規約等で古物営業に使えるかを確認します。 - まだ判断できない点を整理する
「この形で営業所として認められるか」など、分からない部分だけを明確にします。 - 契約前に管轄警察署へ確認する
主たる営業所の所在地を管轄する警察署が許可申請の窓口です。具体的な物件や利用形態について判断が残る場合は、契約前に確認しておくと手戻りを減らせます。 - 確認できてから契約・許可申請の準備へ進む
特に重要なのは、安いから先に契約するのではなく、営業所として使える見込みを確認してから契約することです。
よくある質問
バーチャルオフィスでは古物商許可を絶対に取れないのですか?
公的資料では、「バーチャルオフィス」という名称だけを理由に全国一律で不可とする基準は確認できません。
一方、営業所は営業の本拠・責任の所在場所とされています。住所を借りられるだけで営業所として使えるともいえません。実際の利用形態から確認する必要があります。
法人登記の住所と古物商の営業所は同じでなければなりませんか?
必ず一致するとは限りません。
警察庁の基準では、古物営業の中心が会社法上の支店にある場合など、古物営業上の主たる営業所と会社法上の本店が一致しない場合もあり得るとされています。
賃貸住宅を営業所にする場合、使用承諾書は必須ですか?
全国一律に「必須」とは言い切れません。
たとえば広島県警は、営業所を確保していることの疎明資料として、賃貸借契約書や使用承諾書等が必要になる場合があるため、申請先の警察署へ確認するよう案内しています。
レンタルオフィスなら古物商許可に使えますか?
レンタルオフィスという名称だけでは判断できません。
営業所として実際に利用できるか、管理者が業務を管理できるか、標識を掲示できるか、契約上古物営業に使えるかなどを確認してください。
自宅住所をネットに出したくない場合はどうすればよいですか?
まず、古物商の「営業所」とネット通販での「住所表示」を分けて考えてください。
特定商取引法上は、一定条件を満たした個人事業者がバーチャルオフィスの住所・電話番号を広告表示に利用できる場合があります。ただし、それによって同じ場所を古物商の営業所にできることにはなりません。
まとめ|「何オフィスか」ではなく「営業所として使えるか」で判断する
バーチャルオフィスで古物商許可を取れるかを考えるとき、最も重要なのはオフィスの名称ではありません。
確認したいのは、
- 古物営業の本拠として使えるか
- 管理者が営業所の業務を管理できる状態か
- 標識を適切に掲示できるか
- 契約上、古物営業への利用に問題がないか
- 申請時に営業所について追加資料を求められないか
という点です。
自宅、レンタルオフィス、シェアオフィスについても、同じ考え方で確認できます。
そして判断が残る場合は、候補物件を契約した後ではなく、契約前に主たる営業所を管轄する警察署へ確認するのが実務的です。
自宅住所を公開したくないことがバーチャルオフィスを検討している理由なら、営業所とネット上の住所表示も分けて整理してみてください。特定商取引法上の表示で解決できる問題まで、古物商の営業所変更で解決しようとする必要はありません。
自分で進める場合は、営業方法・候補物件・契約内容・確認したい点を整理したうえで警察署へ確認すると話が進めやすくなります。
一方、営業所候補の選定から許可申請まで一緒に整理したい場合は、古物商許可を取り扱う行政書士へ個別相談することも選択肢です。


