古物商許可を申請するとき、「管理者は誰にすればいいの?」と迷う方は少なくありません。
自分自身でもよいのか。法人なら社長や役員でもよいのか。従業員や家族を選んでもよいのか。資格や実務経験は必要なのか。
結論からいうと、古物商許可の管理者は、申請者とは別人でなければならないわけではありません。
個人の古物商本人が管理者になることもできますし、法人では代表者・役員・従業員などが候補になる場合もあります。
ただし、大切なのは肩書きではありません。
管理者候補は、
① 法律上、管理者として選任できるか
② その営業所で実際に管理できるか
③ 自動車等を扱う場合は、必要な知識・技術・経験も確認する
という順番で考えると整理しやすくなります。
この記事では、「管理者とは何か」だけでなく、自分の場合は誰を管理者候補として考えればよいのかまで分かるように解説します。
この記事のポイント
1.申請者本人が管理者でもよい
本人がその営業所を実質的に管理できるのであれば、自分自身を管理者にできます。別の人を必ず用意する制度ではありません。
2.管理者は「名前だけ置く人」ではない
管理者は、営業所の業務を統括し、従業者などを指揮監督して、古物営業が適正に行われるよう管理する責任者です。
3.原則として営業所に常勤できることが重要
誰を選ぶかよりも、その人が実際にその営業所で管理業務を行える状態かを見ることが重要です。
4.3年以上の実務経験が全員に必要なわけではない
「管理者になるには3年以上の経験が必要」と一律に理解するのは正確ではありません。
まず確認|この人を管理者候補にできそう?
管理者候補を決めるときは、次の順番で確認すると分かりやすくなります。
| 確認すること | 判断のポイント |
|---|---|
| 法律上選任できるか | 管理者になれない人に該当していないか |
| 実際に管理できるか | 営業所の業務を統括・指揮監督できるか |
| 常勤できるか | 日常的に管理業務を行える勤務状態か |
| 複数営業所があるか | 同じ人が双方を実質的に管理できるか |
| 自動車等を扱うか | 必要な知識・技術・経験も確認する |
ここで判断できない場合は、候補者の勤務状況や営業所との関係を整理して個別に確認する段階です。
古物商許可の「管理者」とは?
古物営業法では、古物商または古物市場主は、営業所または古物市場ごとに管理者1人を選任することとされています。
管理者は、申請書に名前を書くためだけの人ではありません。
警察庁の現行の解釈運用基準では、営業所の業務を統括管理し、従業者などを指揮監督して、古物営業関係法令を守らせながら業務を適正に行わせる責任者として整理されています。
簡単にいえば、営業所で古物営業のルールが守られるよう、日常の業務を管理し、従業者を指導・監督する立場です。
つまり管理者選びでは、
「誰の名前を申請書へ書くか」ではなく、「誰が実際にこの営業所を管理するのか」
を考えることが重要です。
制度上の詳しい解釈を自分でも確認したい方は、警察庁の現行基準を確認できます。
申請者本人が管理者になってもよい
個人で古物商許可を取得する場合、自分とは別に管理者を雇わなければならないわけではありません。
警察庁の現行基準では、古物商本人がその営業所の業務を実質的に統括管理できる場合には、本人を管理者として選任することも認められています。
そのため、一人で古物営業を始める場合は、まず自分自身を管理者候補として考えられます。
ただし、
「申請者本人だから無条件で管理者になれる」
という意味ではありません。
本人であっても、
- 法律上、管理者として選任できるか
- その営業所で実際に管理業務を行えるか
- 営業所に常勤できる状態か
を確認します。
管理者になれない人を確認する
古物営業法では、管理者になることができない人も定められています。
たとえば、
- 未成年者
- 古物営業法で定める一定の欠格事由に該当する人
- 心身の故障により管理者業務を適正に実施できない者として規則で定められた人
などです。
この記事では「誰を管理者にするか」が中心なので、欠格事由そのものは詳しく掘り下げません。
前科、破産、過去の処分なども含めて確認したい方は、次の記事へ進んでください。
最も重要なのは「実際に営業所を管理できる人か」
管理者選びで特に重要なのが、実際にその営業所を管理できるかです。
警察庁の現行基準では、管理者は従業者などを実質的に指揮監督できる職にあること、さらに原則として、それぞれの営業所等に常勤して管理者業務に従事できる状態であることが示されています。
そのため、
- 普段その営業所で勤務しない
- 営業所の業務へほとんど関与しない
- 従業者を実質的に指揮監督できない
- 他の仕事との関係で日常的な管理が難しい
といった人を、形式的に管理者として置けばよいとは考えない方がよいでしょう。
社長だから自動的に管理者になるわけではない
法人の代表者や役員も管理者候補にはなります。
しかし、
「社長だから当然に管理者」
という制度ではありません。
代表者や役員でも、その営業所を実際に管理できる状態かを確認します。
反対に、従業員だから管理者になれないわけでもありません。
管理者を決めるときは、
肩書きより、その営業所との実際の関係を見る
と考えると分かりやすいでしょう。
副業・他社勤務・遠方居住の場合はどう考える?
副業をしている、他社でも勤務している、営業所から離れた場所に住んでいる、といった事情だけで一律に可否を決めるのは適切ではありません。
中心になるのは、
その営業所に常勤し、管理者として実際に業務を行える状態か
という点です。
判断しにくい場合は、
- 他の仕事は何か
- どこで勤務しているか
- 古物営業の営業所ではどのような勤務状態になるか
- 営業所でどのような役割を担うか
- 従業者を実際に指揮監督できるか
- 他の仕事との両立で管理業務に支障がないか
を整理してください。
また、「営業所から○km以内」「通勤○分以内」などの全国一律の数値基準があると決めつけるのも避けた方がよいでしょう。
見るべきなのは距離そのものではなく、実際に営業所を管理できる勤務実態があるかです。
管理者に資格や3年以上の実務経験は必要?
ここは特に誤解しやすい部分です。
すべての古物商の管理者について、3年以上の実務経験が一律の就任要件になっているわけではありません。
また、すべての管理者が取得しなければならない専用の国家資格がある制度でもありません。
古物営業法では、管理者に、不正品を判断するために必要な知識・技術・経験を得させるよう努めることが定められています。
警察庁の現行基準では、規則上の「3年以上従事した者が通常有する」知識・技術・経験について、実際に必ず3年間従事しなければ得られないものではなく、客観的に同程度と認められるものでもよいと整理されています。
そのため、
「古物商の管理者になるには、全員3年以上の実務経験が必要」
という理解は正確ではありません。
ここは、
管理者として選任できる条件
と
自動車等を扱う場合に求められる知識・技術・経験
を分けて考えてください。
個人事業主・法人代表者・従業員|誰を選ぶ?
候補者別に整理すると、次のようになります。
| 候補者 | 確認すること |
|---|---|
| 個人事業主本人 | 自分が実際に営業所を管理できるか |
| 法人代表者・役員 | 肩書きだけでなく、営業所を実際に管理できるか |
| 従業員 | 営業所で責任をもって管理・指揮監督できるか |
| 家族 | 親族であることより、勤務実態と管理体制があるか |
誰を選ぶ場合でも、
「その人が誰か」より、「その人が実際に何をするか」
を見るのが基本です。
複数営業所で同じ人を管理者にできる?
原則として、管理者は営業所または古物市場ごとに選任します。
ただし、同じ人が複数営業所の管理者を兼任することが絶対に禁止されているわけではありません。
警察庁の現行基準では、
- 複数の営業所等が近接している
- 同じ人が双方を実質的に統括管理できる
- 管理者としての業務を適正に行える
場合には、同一人が複数営業所の管理者を兼任することも認められています。
したがって、
「1人につき絶対に1営業所」
とも、
「近ければ何店舗でも兼任できる」
とも一律にはいえません。
複数営業所の場合は、
- 各営業所の所在地
- 営業所同士の位置関係
- 管理者候補の勤務状況
- 双方を実際に管理できるか
- 従業者を指揮監督できるか
を整理して判断します。
営業所そのものの条件も確認したい方は、次の記事へ進んでください。
管理者を決めたら必要書類を確認する
管理者候補が決まったら、次は申請書類の準備です。
管理者については、略歴書、住民票、誓約書などの書類が関係します。
ただし、必要書類をこの記事ですべて説明すると、「誰を管理者にするか」という主題から離れてしまいます。
管理者を決められた方は、次に申請書類を確認してください。
管理者が退職・異動した場合は変更手続も確認する
管理者は、許可申請時に決めれば終わりではありません。
たとえば、
- 管理者が退職した
- 人事異動で別の人へ交替した
- 管理者の氏名や住所が変わった
といった場合は、変更手続の確認が必要になります。
特に管理者が交替する場合は、届出をするだけではなく、次の管理者として誰を選任するかも同時に考えます。
許可取得後も、
実際に営業所を管理できる人が管理者として選任されている状態
を維持することが大切です。
誰を管理者にするか迷ったら、これだけ整理する
自分の場合に判断できないときは、次の情報を整理してください。
管理者候補について
- 誰を候補にするか
- 申請者との関係
- 本人・代表者・役員・従業員などの立場
- 他の仕事の有無
- 実際の勤務場所
- 営業所で担当する役割
営業所について
- 営業所はいくつあるか
- 各営業所の所在地
- 誰が日常的に管理するのか
- 従業者がいる場合は誰が指揮監督するのか
- 複数営業所なら同じ人が双方を管理できるか
取扱品について
- 何を取り扱う予定か
- 自動車・自動二輪車・原付を扱うか
ここまで整理すれば、
法律上選任できるか
→ 実際に管理できるか
→ 個別確認が必要か
という順番で考えやすくなります。
自分で申請を進める場合
管理者を決められたら、必要書類を準備して警察署への申請へ進みます。
申請の流れを確認したい方はこちらです。
この記事からは、
管理者を決める
→ 必要書類を準備する
→ 警察署へ申請する
という順番で進めればよいでしょう。
古物商許可の管理者について相談したい方へ
ここまで読んでも、
- 自分自身を管理者にしてよいか判断できない
- 社長と従業員のどちらを管理者にするか迷う
- 副業・他社勤務との両立が気になる
- 遠方居住でも問題ないか判断できない
- 複数営業所を同じ人が管理できるか確認したい
といった事情がある場合は、一般論だけで無理に結論を出す必要はありません。
候補者の勤務状況や営業所との関係を整理して確認すると、判断しやすくなります。
この記事の内容について相談したい
管理者の選び方など、自分の場合の判断について相談したい方はこちらです。
古物商許可の申請そのものを相談・依頼したい
管理者だけでなく、必要書類や申請手続までまとめて相談したい方はこちらです。
自分で判断・準備できる場合は、そのまま申請を進めても構いません。
一般論だけでは判断しにくい場合に、相談という選択肢を利用してください。
よくある質問
古物商許可の申請者本人が管理者になってもよいですか?
はい。
本人がその営業所を実質的に統括管理でき、管理者として選任できる条件を満たしているのであれば、自分自身を管理者にできます。
管理者には3年以上の実務経験が必須ですか?
すべての管理者について一律に必要なわけではありません。
「3年以上」という基準は、管理者全員の就任資格そのものではなく、一定の知識・技術・経験について示されている基準です。
複数店舗を1人の管理者が兼任できますか?
条件によっては可能です。
営業所等が近接し、双方を実質的に統括管理でき、管理者としての業務を適正に行える場合には、同じ人が管理者を兼任できることがあります。
副業をしている人でも管理者になれますか?
副業の有無だけで一律に判断するのではなく、その営業所に常勤し、実際に管理業務を行える状態かを確認する必要があります。
まとめ|管理者は「肩書き」ではなく「実際に管理できる人」から選ぶ
古物商許可の管理者を決めるときは、
「社長だから」
「家族だから」
「店長だから」
という理由だけで判断しないことが大切です。
確認する順番は、
1.法律上、管理者として選任できるか
2.営業所で実際に管理業務を行えるか
3.常勤できる状態か
4.複数営業所なら双方を実質的に管理できるか
5.自動車等を扱う場合は必要な知識・技術・経験を確認する
です。
管理者を決めた後は、必要書類を準備し、警察署への申請へ進みます。
制度の条文自体を確認したい方は、e-Govの古物営業法を確認できます。
自分の場合に誰を管理者にすればよいか判断しにくい場合は、個別の勤務状況や営業所の条件を整理して相談してください。


