古物商許可を自分で申請しようとして申請書を開いたものの、
「その1、その2、その4と分かれていて、どれを書けばいいのか分からない」
「行商や古物の区分は、どちらを選べばいいのだろう」
「自宅で始める場合、営業所や管理者はどう書けばいい?」
と手が止まってしまう方もいるでしょう。
古物商許可申請書は、記載例を上から順に写せば完成するとは限りません。
先に、
- 自分が使う用紙
- 主たる営業所
- 管理者
- 取り扱う古物
- 行商をするか
- ウェブサイトを使った取引をするか
といった前提を整理してから書き始めた方が、自分のケースへ当てはめやすくなります。
この記事では、初めて個人で古物商許可を申請する方を中心に、申請書の主要な欄をどう考えて記入すればよいのかを順番に解説します。
なお、都道府県警察によって申請書ファイルの配布方法や案内の見せ方には違いがあります。警視庁では「その1(ア)・その2・その4」を基本の申請書として配布し、法人役員が複数いる場合の「その1(イ)」や、その他の営業所がある場合の「その3」を別に案内しています。一方、広島県警では様式第1号について「その1からその4までで一通」と案内しています。申請時には、実際の申請先が公開している最新版も確認してください。
古物商許可申請書を書く前に、まず使う用紙を確認する
古物商の新規許可申請で使用するのは、古物営業法施行規則の別記様式第1号です。
ただし、申請条件によって記載する部分が異なります。
| 用紙 | 主な内容 |
|---|---|
| その1(ア) | 申請者の基本情報、行商の有無、主として取り扱う古物の区分など |
| その2 | 主たる営業所、営業所で取り扱う古物の区分、管理者など |
| その4 | ウェブサイトを利用した取引の有無、URLなど |
| その1(イ) | 法人役員が複数いる場合などの追加記載 |
| その3 | その他の営業所・古物市場がある場合の追加記載 |
個人で申請し、営業所が1か所という比較的シンプルなケースであれば、まず「その1(ア)」「その2」「その4」の内容を理解すると全体像をつかみやすくなります。
法人役員が複数いる場合や営業所が複数ある場合は、追加用紙が必要になります。
書き始める前に整理しておくとよいこと
申請書を1行目から埋める前に、次の事項を整理しておくと途中で迷いにくくなります。
- 申請者の氏名・住所など
- 古物営業の拠点となる場所
- 誰を管理者にするか
- 主として何の古物を扱うか
- 営業所ではどの種類の古物を扱うか
- 営業所以外でも古物取引を行うか
- ウェブサイトを使った取引を行うか
特に「主として取り扱う古物」と「営業所で取り扱う古物」は似ていますが、申請書上の役割が異なります。
先に営業の形を整理してから、各欄へ落とし込んでいきましょう。
「その1(ア)」の書き方|申請者の基本情報と営業内容を記入する
「その1(ア)」には、申請者の基本情報に加えて、古物営業の内容に関する項目があります。
氏名や住所のように手元の情報を記入すればよい欄だけでなく、意味を理解して選択する必要がある欄もあります。
特に迷いやすいのが、
- 行商をするか
- 主として取り扱う古物の区分
です。
「行商」は営業所以外でも古物取引をするかで考える
古物営業でいう「行商」は、簡単にいうと、営業所以外の場所で行う古物の取引です。
たとえば、営業所以外の場所へ出向いて古物を売買するなど、自分の営業方法に営業所以外での取引が含まれるかを確認します。
ここで注意したいのは、「行商=出張買取だけ」と狭く考えないことです。
今後どのような場所・方法で古物を売買する予定なのかを整理したうえで、「する」「しない」を判断してください。
民間の記載例で「こちらを選んでおけばよい」と説明されていても、そのまま選ぶのではなく、自分が予定している営業方法を基準にすることが大切です。
「主として取り扱おうとする古物の区分」は1つ選ぶ
古物は、次の13区分に分かれています。
| 番号 | 古物の区分 |
|---|---|
| 1 | 美術品類 |
| 2 | 衣類 |
| 3 | 時計・宝飾品類 |
| 4 | 自動車 |
| 5 | 自動二輪車及び原動機付自転車 |
| 6 | 自転車類 |
| 7 | 写真機類 |
| 8 | 事務機器類 |
| 9 | 機械工具類 |
| 10 | 道具類 |
| 11 | 皮革・ゴム製品類 |
| 12 | 書籍 |
| 13 | 金券類 |
「その1(ア)」の主として取り扱おうとする古物の区分は、1つを選びます。
複数種類の商品を扱う予定だからといって、この欄ですべての区分を選ぶわけではありません。
ここで選ぶのは、文字どおり「主として」扱う区分です。
一方、後ほど説明する「その2」には、営業所で取り扱う古物の区分を記載する欄があります。こちらは複数選択できます。
この2つを混同しないようにしましょう。
「その2」の書き方|主たる営業所と管理者を記入する
「その2」では、主として、
- 営業所
- 営業所で取り扱う古物
- 管理者
について記入します。
個人で自宅を拠点に古物営業を始める場合も、この部分で迷いやすくなります。
営業所は「店舗があるか」だけで判断しない
古物営業における営業所は、単に「お店の看板がある場所」という意味ではありません。
古物営業の本拠となり、営業について責任を持つ場所かどうかが重要です。
そのため、
実店舗がない=営業所なし
と単純に考えないようにしてください。
たとえば、自宅で継続して古物営業の事務を行う場合など、自宅が営業所に当たるケースがあります。
反対に、「営業所なし」という形態自体が制度上まったく存在しないわけでもありません。
つまり、この欄は店舗の有無だけで決めるのではなく、実際にどこを古物営業の拠点とするのかを整理して判断する必要があります。
特殊な営業形態で「営業所あり・なし」の判断に迷う場合は、申請先の警察署へ営業方法を具体的に伝えて確認するのが安全です。
申請者住所と営業所所在地が同じ場合
別記様式第1号その2では、営業所の所在地について、申請者の住所または居所と同じ場合は記載を要しない扱いになっています。
自宅を営業所とするからといって、同じ住所を必ずもう一度書くとは限りません。
申請先が公開している最新の様式・記載例と合わせて確認してください。
「取り扱う古物の区分」は複数選べる
その2にも古物の区分を選ぶ欄があります。
ここは、その1(ア)の「主として取り扱おうとする古物の区分」と役割が違います。
整理すると、
- その1(ア):主として取り扱う区分を1つ
- その2:その営業所で取り扱う区分を必要な範囲で選択
となります。
たとえば、主力商品とは別に複数種類の中古品を取り扱う予定がある場合、この違いを意識して記入します。
管理者は申請者本人が兼ねることもできる
営業所には管理者を置きます。
管理者は、単に申請書へ名前を書くだけの名義上の役割ではなく、その営業所の業務を管理し、古物営業に関する法令を守れるよう管理する立場です。
個人で営業する場合、申請者本人が実際にその営業所を管理できるのであれば、申請者本人が管理者を兼ねることもできます。
そのため、「自分とは別に管理者を探さなければならない」と考える必要はありません。
ただし、誰でも形式だけ管理者に指定すればよいわけでもありません。実際にその営業所を管理できる人を記載する必要があります。
「その4」の書き方|ウェブサイトを使った取引の有無とURLを確認する
「その4」は、インターネットを使う人だけが見るページ、と考えるよりも、
ウェブサイトを利用した古物取引を「用いる」のか「用いない」のかを確認するページ
と理解すると分かりやすくなります。
該当する場合は、取引に利用するウェブサイトのURLなどを記載します。
ネットを使っているだけで一律に判断しない
判断するときは、
「Instagramを使っている」
「フリマアプリを使っている」
「ECモールへ出品している」
といったサービス名だけで決めないことが重要です。
確認したいのは、古物に関する情報をウェブ上で公開し、電話・メールなどの非対面の方法を含めて取引の申込みを受ける形になっているか、そして申請書へ届け出るURLがあるかです。
サービスの仕組みやURLの持ち方によって判断が分かれる可能性があるため、自分の利用方法を整理して確認してください。
広島県警の現行案内でも、ホームページ利用取引を行う場合には、URLの使用権限を疎明する書類を提出するよう案内されています。
「このサービスを使えば必ず届出が必要」とサービス名だけで決めず、迷う場合は利用方法とURLを示して申請先へ確認すると判断しやすくなります。
法人役員や営業所が複数ある場合は追加用紙を確認する
この記事は個人申請を中心にしていますが、法人や複数営業所では申請書の構成が変わります。
警視庁の現行案内では、
- 法人役員が複数いる場合:その1(イ)
- その他の営業所・古物市場がある場合:その3
が追加様式として案内されています。
そのため、法人申請や営業所を複数設ける場合は、個人・1営業所の記載例だけを見て申請書を完成させないようにしましょう。
書き終えたら「記入ミス」だけでなく書類同士の整合も確認する
申請書を書き終えたら、誤字脱字だけを見るのではなく、申請内容全体が矛盾していないか確認します。
提出前には、少なくとも次を見直してみてください。
- 申請者の氏名・住所等が他の提出書類と食い違っていないか
- 自分の条件に合う申請書のページを使っているか
- 「主として取り扱う古物」と「営業所で取り扱う古物」を混同していないか
- 行商の選択が予定している営業方法と合っているか
- 営業所・管理者の情報が実際の営業体制と合っているか
- ウェブサイト利用取引の有無を確認したか
- URLの届出が必要な場合、関係資料も確認したか
- 申請先警察が現在公開している最新版の様式を使っているか
特に、以前ダウンロードした申請書を保存している場合は、提出前に最新版か確認しておくと安心です。
広島県警も、様式が変更される場合があるため、使用時に最新の様式を取り出すよう案内しています。
申請書を書き終えても、申請準備がすべて終わるわけではない
古物商許可では、許可申請書のほかにも添付書類があります。
必要になる書類は、個人・法人、役員、管理者、ウェブサイト利用の有無などによって関係してきます。
たとえば広島県警の現行案内でも、許可申請書とは別に、申請者や管理者等に関する書類、ウェブサイト利用取引をする場合の関係資料などが案内されています。
この記事では申請書の書き方に絞っていますので、申請書が完成したら次に、
「自分の場合に必要な添付書類がそろっているか」
を申請先の公式案内で確認してください。
申請書だけ完成して、他の必要書類が不足しているという手戻りを防げます。
迷う欄があるときは「自分の営業方法」を整理してから確認する
古物商許可申請書には、氏名や住所を書くだけではなく、自分の営業方法を制度上の項目へ当てはめる欄があります。
そのため、分からない欄があったときに、
「ここには何と書けばいいですか?」
だけを聞くより、
- どこを営業拠点にする予定か
- 誰がその場所を管理するか
- 何を主として扱うか
- 営業所以外でも売買する予定があるか
- ネット上でどのように注文を受けるか
- どのURLを継続的に利用するか
まで整理しておくと、警察署や専門家へ相談するときにも状況を伝えやすくなります。
申請書の作成で重要なのは、記載例と同じ文字を書くことではありません。
自分の営業方法を整理し、その内容を申請書の各欄へ正しく当てはめることです。
自分で進めるか、個別に確認するか
申請内容がシンプルで、各欄の意味と自分の営業方法が明確であれば、公式の様式・記載例を確認しながら自分で準備を進めることもできます。
一方、
- 自宅や複数拠点の扱いに迷う
- 営業所・管理者の整理が難しい
- ネット販売のURL届出に該当するか判断しにくい
- 法人や複数営業所で申請書が増える
- 申請書と添付書類全体の整合まで確認したい
といった場合は、申請先警察署へ確認したり、行政書士への相談を検討したりするのも一つの方法です。
相談する場合でも、まず自分の営業方法を整理しておけば、何について確認したいのかが明確になります。
古物商許可申請書の書き方でよくある質問
申請者本人を管理者にしてもよいですか?
申請者本人が実際にその営業所を管理できる場合は、本人が管理者を兼ねることができます。
「管理者は必ず別の人を用意しなければならない」というわけではありません。
古物を何種類も扱う場合、その1では複数の区分を選びますか?
その1(ア)の「主として取り扱おうとする古物の区分」は1つを選びます。
一方、その2の営業所で「取り扱う古物の区分」は複数選択できます。
似た項目なので、混同しないよう注意してください。
実店舗がなければ「営業所なし」でよいですか?
実店舗がないことだけでは判断できません。
自宅などを古物営業の本拠として営業事務を行う場合には、その場所が営業所に当たることがあります。
「店舗があるか」ではなく、実際の古物営業の拠点がどこかで考えてください。
特殊な営業形態で判断が難しい場合は、具体的な営業方法を申請先警察署へ説明して確認しましょう。
ネット販売をする場合は必ずURLを記載しますか?
サービス名や「ネットを使う」という事実だけでは一律に判断しません。
どのように古物情報を公開し、どのように取引の申込みを受けるのか、継続して利用するURLがあるのかを確認する必要があります。
判断が難しい場合は、実際に利用するサイトやサービスの仕組みを整理して申請先へ確認してください。
まとめ
古物商許可申請書を書くときは、いきなり記載例を上から写すのではなく、まず自分の営業条件を整理することが大切です。
順番としては、
- 自分が使う用紙を確認する
- 営業所・管理者・取り扱う古物などを整理する
- その1(ア)で申請者情報や行商、主な古物区分を記入する
- その2で営業所・取扱区分・管理者を記入する
- その4でウェブサイト利用取引の有無とURLを確認する
- 法人役員や複数営業所がある場合は追加用紙を確認する
- 他の提出書類との整合と、申請先の最新版を確認する
という流れで進めると、記載例を自分のケースへ置き換えやすくなります。
申請書で迷ったときは、空欄だけを見るのではなく、
「この欄は、自分の営業の何を確認しているのか」
と考えてみてください。
それでも判断できない部分だけを申請先や専門家へ確認すれば、必要以上に迷わず申請準備を進めやすくなります。
公式情報の確認について
古物営業に関する解釈・運用については、警察庁が2026年5月14日付けの現行通達を掲載しています。また、申請様式は警視庁や各都道府県警察が公開しています。実際に提出する際は、主たる営業所に対応する申請先の最新案内を確認してください。

