金属スクラップの買取や回収を始めようとすると、
「古物商許可があれば営業できるのか」
「銅くずを買い取るなら別の届出も必要なのか」
「顧客先へ引き取りに行くなら産業廃棄物の許可が必要なのか」
「ヤードで保管・選別・切断する場合は別の規制があるのか」
など、複数の制度が出てきます。
結論からいうと、「金属スクラップ買取をするなら、この許可を一つ取ればよい」という仕組みではありません。
必要な許可・届出を確認するときは、制度名から調べ始めるのではなく、
何を扱うのか
→ どのような状態なのか
→ 廃棄物に該当するのか
→ 誰の物を、どこからどこへ運ぶのか
→ ヤードで何をするのか
→ どの地域で営業するのか
という順番で事業を整理することが重要です。
参考
例えば、古物に該当する中古機械や工具などを営業として買い取る場合は古物営業法を確認します。
2026年6月1日からは、主として銅により構成される特定金属くずの買受営業について、金属盗対策法上の届出制度も施行されています。
さらに、取り扱う物が廃棄物であれば、産業廃棄物・一般廃棄物の制度も別に確認する必要があります。
警視庁:盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(金属盗対策法)(令和7年法律第75号)
この記事では、金属スクラップ買取を始める前に、古物商・特定金属くず・廃棄物・運搬・専ら物・ヤード規制などを、どの順番で確認すればよいのかを整理します。
最後まで読むことで、自社の事業について、「まず何を確認し、次にどの制度の詳細へ進めばよいのか」を整理できるようになります。
この記事のポイント
- 金属スクラップ買取に必要な制度は、古物商許可だけでは判断できない
- 最初に確認するのは許可名ではなく、何を・どの状態で扱うのか
- 有償で買い取っていても、それだけで廃棄物ではないとは判断できない
- 廃棄物を運ぶ場合は、一般廃棄物か産業廃棄物か、誰の物を運ぶのかを確認する
- 「専ら物」には許可の例外があるが、廃棄物ではなくなる制度ではない
- 廃棄物ではない使用済み電気電子機器でも、有害使用済機器制度が関係する場合がある
- ヤードについては現在の法令・地域規制に加え、2026年公布の新しい全国制度にも注意が必要
金属スクラップ買取に必要な許可・届出は事業内容によって変わる

まず、自社が予定している事業と、確認する制度の入口を大まかに整理します。
| 予定している事業 | 主に確認する制度 |
|---|---|
| 古物に該当する中古機械・工具・金属製品等を買い取る | 古物営業法 |
| 対象となる特定金属くずを買い受ける | 金属盗対策法 |
| 他人の産業廃棄物を収集・運搬する | 廃棄物処理法 |
| 家庭等から一般廃棄物を収集・運搬する | 一般廃棄物の制度・市町村の許可等 |
| 使用済み電気電子機器等を保管・処分する | 有害使用済機器制度等 |
| 金属スクラップをヤードで保管・再生する | 現行法令・地域条例・今後の全国制度等 |
この表だけで最終判断することはできません。
同じ「室外機」「電線」「金属スクラップ」という名称でも、現在の状態、発生経緯、取引方法、運搬方法、保管・加工方法によって確認する制度が変わるためです。
そこで、まずは許可名ではなく「物」から確認します。
まず「何を・どの状態で扱うのか」を確認する
許可名から考え始めると、
「古物商なのか」
「特定金属くずなのか」
「産廃なのか」
と制度名が増え、かえって判断しにくくなります。
最初に確認したいのは、何を扱うのかと、扱う時点でその物がどのような状態なのかです。
古物に該当する中古品を扱うなら古物商許可を確認する
中古機械・工具・設備・金属製品等について、古物営業法上の「古物」に該当する物を営業として買い取る場合は、古物商許可を確認します。
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参考古物とは?古物営業法上の意味と中古品との違いをわかりやすく解説
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ここで、
正常に動く=古物
故障している=スクラップ
と単純には分けません。
古物営業法上は「幾分の手入れ」をした物も古物に含まれます。
一方、社会通念上、客観的に本来の使用目的で使用できなくなった物は、原則として古物に該当しないとなっています。
ココがポイント
そのため、「中古」「故障品」「ジャンク」「スクラップ」という呼び方だけではなく、実際の物の状態を確認することが重要です。
古物として買い取ることが分かった後は、本人確認や帳簿のルールも別に確認します。特に古物商の少額取引について「1万円未満なら何でも本人確認不要」と覚えている場合は、2025年改正後の例外を確認しておくと安全です。
また、室外機・電線・金属製グレーチングを古物として買い取る場合は、1万円未満でも本人確認・記録が必要になる特別なルールがあります。
これらを実際に扱う事業者は、品目別の記事で詳しく確認できます。
室外機・電線・グレーチングを古物として買い取る場合のルールを確認する
銅くず等を買い取る場合は特定金属くず買受業も確認する
2026年6月1日から、特定金属くず買受業について届出等の制度が施行されています。現時点で特定金属として指定されているのは銅です。
盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(金属盗対策法)(令和7年法律第75号)
古物商許可を持っているからといって、対象となる特定金属くずの買受営業について届出確認が不要になるわけではありません。
一方で、金属製品や銅を含む物がすべて特定金属くずになるわけでもありません。
古物なのか特定金属くずなのか、銅の割合をどう見るのか、室外機や切断された銅線をどう考えるのかで迷った場合は、対象判定の専用記事へ進んでください。
お金を払って買い取れば「廃棄物ではない」とは限らない
取扱品と状態を整理したら、次に確認したいのが廃棄物に該当するかです。
金属スクラップは有価で売買されることもあるため、
お金を払って買っているのだから廃棄物ではない
と考えたくなるかもしれません。
しかし、廃棄物か有価物かは、代金の有無だけで決まりません。
実務では、物の性状、排出状況、通常の取扱形態、取引価値、占有者の意思などを総合して判断します。
したがって、
有償買取=必ず有価物
とは考えないことが重要です。
特に、排出者のもとへ出向いて金属類を引き取る場合は、契約書に「売買」と書いているかだけではなく、取引の実態まで整理してください。
廃棄物なら「誰の物を、どこから運ぶのか」を確認する
廃棄物に該当する可能性があると分かったら、次に運搬を確認します。
ここでは、産業廃棄物なのか、一般廃棄物なのかを分けて考えます。
他人の産業廃棄物を収集・運搬する場合
他人の産業廃棄物について、その収集・運搬を業として行う場合は、原則として産業廃棄物収集運搬業の許可制度を確認します。
ここで重要なのは、
金属を運ぶ=産廃許可が必要
という順番ではありません。
まずその物が廃棄物に該当するのかを判断し、そのうえで、誰の廃棄物を、どの立場で、どこからどこへ運ぶのかを確認します。
家庭等から出る廃棄物は一般廃棄物側を確認する
家庭等から出た物が一般廃棄物に該当する場合は、産業廃棄物とは別の制度です。
そのため、
産業廃棄物収集運搬業の許可があるから、家庭の不要品も同じように回収できる
とは限りません。
家庭からの回収まで事業に含める場合は、市町村の一般廃棄物制度を別に確認してください。
くず鉄なら「専ら物だから何でも許可不要」ではない

金属スクラップを扱っていると、「専ら物」という言葉を聞くことがあります。
さらに詳しく
専ら再生利用の目的となる廃棄物には、古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維があり、これらを専ら再生利用する一定の回収業者等については、廃棄物処理業の許可が不要となる例外があります。
ただし、
専ら物=廃棄物ではない
という意味ではありません。
ココに注意
専ら物は廃棄物でありながら、一定の再生利用について例外的に処理業許可が不要となる制度です。
環境省も、専ら物は「有価物だから許可不要」という整理ではないことを明示しています。
「専ら再生利用の目的となる廃棄物の取扱いについて(通知)」に関する報道について
また、金属を含む製品なら何でも「くず鉄」として専ら物になるわけではありません。
具体的に何が専ら物に該当するかについては、自治体判断が関係する場合があります。
ヤードで保管・選別・切断する場合は運搬とは別に確認する
顧客先から回収し、ヤードへ運んだ後に、
保管、選別、解体、切断、分離、再生処理などを行う場合は、収集・運搬だけとは別の論点が生じます。
特に、その物が産業廃棄物であり、その処分を業として行う場合には、産業廃棄物処分業等の制度が関係します。
ただし、
切断する=必ず産業廃棄物処分業許可
と一律には判断しません。
先に、その物が廃棄物なのかを確認し、その後でヤード内の作業内容を整理します。
また、入口で有価物だった金属スクラップでも、加工・分離によって生じる残さが廃棄物になる場合があります。
したがってヤード事業では、何を持ち込むかだけでなく、加工後に何が発生し、それをどのように搬出するかまで確認することが重要です。
使用済み電気電子機器では有害使用済機器制度も確認する
ここまで廃棄物を中心に見てきましたが、廃棄物でなければ規制がないとは限りません。
使用を終了し収集された電気電子機器等のうち、廃棄物ではない物でも、一定の「有害使用済機器」を保管・処分する事業者には、都道府県知事等への届出や処理基準の遵守が求められる場合があります。制度は2018年4月から施行されています。
一方、再使用可能なリユース品だけを扱う場合は、この制度の届出対象ではないと環境省は案内しています。
室外機等の電気電子機器をヤードで扱う場合は、古物・特定金属くず・廃棄物だけでなく、この制度も確認対象に入ります。
営業地域によって金属くず営業・ヤード規制が加わることがある
全国共通の法律だけ確認すれば、すべて終了するとは限りません。
地域によっては、金属くず営業やスクラップヤードについて独自の条例が設けられている場合があります。
参考
例えば大阪府では、大阪府金属くず営業条例による許可を持つ事業者でも、対象となる特定金属くずの買受営業を行う場合は、国の金属盗対策法上の届出が必要と案内されています。
特定金属くずに該当することが分かり、これから営業開始届出を準備する段階なら、必要書類・期限・提出先・図面を確認します。
地域によって制度は異なるため、
他県で営業できているから、自社の地域でも同じ
とは判断しません。
営業所やヤードの所在地が決まった段階で、その地域を管轄する警察・自治体の最新制度を確認してください。
2026年公布の新しい全国ヤード制度にも注意する

ヤード事業を予定している場合は、今後の制度変更にも注意が必要です。
2026年6月19日に改正法が公布され、使用を終了し収集された金属・プラスチック物品を保管等する事業者に対する、新しい許可制度が導入されることになりました。
ココに注意
ただし、2026年9月時点では、すでに全国のヤード事業者へ全面適用されている現行制度として説明する段階ではありません。
環境省では、施行に向けて保管基準やガイドライン等の制度詳細を検討しており、2026年9月15日にも第3回の技術検討会が開催されています。
令和8年度スクラップヤード環境対策技術検討会(第3回)の開催について
現在は、
現行の廃棄物処理法
+ 有害使用済機器制度
+ 地域条例等
を確認しながら、今後施行される全国制度の最新情報も確認する、という整理になります。
開業前は6つのステップで確認する
ここまでの制度を、実際の開業準備へ落とし込むと次の順番になります。
STEP1 取扱品を具体的に書き出す
「金属全般」とまとめず、中古機械、中古工具、鉄スクラップ、アルミスクラップ、銅線、銅管、室外機、解体された金属部品など、実際に扱う予定の物を書き出します。
STEP2 物の状態を整理する
それぞれについて、古物として扱う物か、金属くずの状態か、廃棄物となる可能性があるかを整理します。
この段階で判断できない物は、無理に分類せず「追加確認が必要な物」として分けて構いません。
STEP3 回収・運搬方法を決める
持込みだけなのか、顧客先へ引き取りに行くのか、他人の廃棄物を運ぶのか、家庭から回収するのかを整理します。
STEP4 ヤードで何をするか決める
保管、選別、切断、解体、分離、再生処理など、ヤード内で行う作業を整理します。
STEP5 営業所・ヤードの地域を決める
全国制度だけでなく、地域独自の金属くず営業・ヤード規制がないか確認します。
STEP6 関係する制度だけ個別手続へ進む
ここまで整理して初めて、自社に関係する許可・届出の詳細を確認します。
必要そうな手続を片っ端から調べるより、事業を分解してから必要な制度だけ調べる方が、確認漏れと手戻りを減らしやすくなります。
よくある3つの事業パターンで確認する
中古品と金属スクラップの両方を買い取る
古物に該当する中古機械等を扱いながら、別の取引では対象となる銅くずを買い取ることがあります。
この場合は、古物営業法と特定金属くず買受業の両制度を確認します。
古物なのか特定金属くずなのか自体が判断できない場合は、先ほどの対象判定記事へ進んでください。
顧客先から不要な金属を回収する
顧客先へ出向くという事実だけで、産業廃棄物収集運搬業の許可が必要になるわけではありません。
最初に引き取る物が廃棄物なのかを確認します。
廃棄物に該当する場合に、一般廃棄物・産業廃棄物、収集運搬、専ら物等の確認へ進みます。
ヤードで保管・切断・選別する
ヤードを使う場合は、
入口の物が廃棄物か
→ ヤードで何をするか
→ 有害使用済機器に該当する物があるか
→ 地域規制があるか
→ 今後の全国制度がどう施行されるか
まで整理します。
単に「金属スクラップを置いておく場所」とだけ考えないことが重要です。
特定金属くずに関係する記事は、今の状況に合わせて選ぶ
手続きを進めるにあたり関連ページをすべて順番に読む必要はありません。
今の自社がどこで止まっているかに合わせて、必要な記事へ進んでください。
古物か特定金属くずか判断できない段階では、まず対象判定を先に行います。
特定金属くずに該当することが分かり、これから営業開始届出を準備する段階なら、必要書類・期限・提出先・図面を確認します。
届出が済み、実際の買受けを開始する段階では、本人確認・本人確認記録・取引記録・保存の運用へ進みます。
すでに対象となる営業をしているのに届出をしていない場合は、これから開業する人と同じ手順で考えず、経過措置終了後の対応を先に確認してください。現在の専用記事でも、2026年8月31日の経過措置終了後の対応を整理しています。
通常の届出方法まで理解したうえで、自分で手続を進めるか、書類・図面等の準備を行政書士へ依頼するか比較したい場合は、その段階で代行記事を見ると判断しやすくなります。
まとめ|許可名ではなく「事業の流れ」から確認する
金属スクラップ買取に必要な許可・届出は、一つではありません。
確認するときは、
何を・どの状態で扱うか
↓
廃棄物に該当するか
↓
誰の物をどこから運ぶのか
↓
ヤードで何をするのか
↓
どの地域で営業するのか
という順番で整理します。
古物に該当する中古品の取引なら古物営業法、対象となる銅くずの買受けなら金属盗対策法、廃棄物の収集運搬なら廃棄物処理法というように、同じ金属スクラップ事業でも、取扱品や事業工程によって確認する制度は変わります。
また、有償で買い取っていることだけで廃棄物ではないと判断せず、「専ら物だから何でも許可不要」と考えないことも重要です。
ヤードで保管・加工する場合は、有害使用済機器制度や地域独自の規制も確認します。さらに、2026年に公布された新しい全国ヤード制度についても、施行に向けた最新情報を確認していく必要があります。
最初からすべての法律や手続を詳しく調べる必要はありません。
自社の買取から搬出までの流れを整理し、関係する制度だけを順番に確認する。
これが、金属スクラップ事業を始めるときの許可・届出確認の出発点です。
古物商許可や買取実務について、金属スクラップ以外の記事も含めてサイト全体から探したい場合は、TOPページへ戻って必要なテーマを選べます。
金属スクラップを買い取りのよくある質問
金属スクラップを買い取るなら古物商許可があれば十分ですか?
一律にはいえません。
古物に該当する物を営業として買い取る場合は古物商許可を確認しますが、対象となる特定金属くずの買受け、廃棄物の収集運搬、ヤードでの保管・処理など、事業内容によって別の制度が関係する場合があります。
お金を払ってスクラップを買えば廃棄物ではありませんか?
必ずしもそうとはいえません。
物の性状、排出状況、通常の取扱形態、取引価値、占有者の意思などを総合して判断します。代金を支払っていることだけでは決まりません。
金属くずならすべて「専ら物」で許可不要ですか?
いいえ。
くず鉄(古銅等を含む)は専ら再生利用の目的となる廃棄物に含まれますが、専ら物は廃棄物ではなくなる制度ではありません。
また、具体的に何が専ら物に当たるかは、実際の状態や再生利用の実態を確認する必要があります。
2026年の新しいヤード許可制度はすでに始まっていますか?
2026年6月19日に新制度を含む改正法が公布されていますが、2026年9月時点では、施行に向けて保管基準・ガイドライン等の具体化が進められている段階です。
現在適用されている制度と、今後施行される全国制度を分けて確認する必要があります。


