金属スクラップ買取に必要な許可・届出は?開業前に確認する制度と順番

旧 古物商として金属製品を買い取っている方の中には、

「古物商許可があれば、金属盗対策法の届出は必要ないのでは?」

金属スクラップの買取業を始めようとすると、

「古物商許可を取れば営業できるのか」

「銅くずを買うなら、特定金属くず買受業の届出も必要なのか」

「トラックで引き取りに行くなら産業廃棄物の許可も必要なのか」

と、複数の制度が出てきます。

結論からいうと、「金属スクラップ買取」という業種名だけでは、必要な許可・届出は決まりません。

先に整理したいのは、制度名ではなく次の4点です。

  1. 何を扱うのか
  2. どのような状態の物を扱うのか
  3. 買取・回収・運搬・処理のどこまで行うのか
  4. どの地域で営業するのか

この4点を整理すると、古物商許可、特定金属くず買受業、地域の金属くず営業規制、廃棄物処理法など、確認すべき制度を絞りやすくなります。

この記事では、個別の申請書類を網羅するのではなく、金属スクラップ買取を始める前に、どの制度をどの順番で確認すればよいかを整理します。

金属スクラップ買取に必要な許可は事業内容によって変わる

最初に押さえておきたいのは、全国共通の一つの「スクラップ買取許可」を取得すれば終わるわけではないということです。

同じ金属を扱う事業でも、

  • まだ製品として使用できる中古機械を買い取る
  • 使用できなくなった銅線や金属くずを買い取る
  • 顧客先へ出向いて引き取る
  • 回収した物を運搬する
  • 切断・選別・処理する
  • 営業地域に独自の金属くず条例がある

といった違いによって、確認する制度が変わります。

そのため、いきなり「古物商許可を取ればよい」「産廃許可が必要だ」と決めず、自分の事業を分解してから制度を当てはめることが重要です。

開業前はこの順番で整理する

確認順序確認すること主に確認する制度
1何を買い取るか古物営業法・金属盗対策法
2本来の用途で使用できる状態か古物か金属くずか
3その物が廃棄物に当たるか廃棄物処理法
4買取・回収・運搬・処理のどこまで行うか各種許可・届出
5営業所・ヤードはどこか都道府県等の条例
6関係制度が分かったら個別手続を確認許可・届出の詳細

この順番で見ると、「必要そうな許可を片っ端から調べる」状態から抜け出しやすくなります。

まず「何を買い取るのか」を整理する

最初に整理したいのは取扱品です。

同じ金属製品でも、まだ本来の用途で使える物なのか、スクラップとして扱われる状態なのかによって確認する制度が変わります。

使用できる中古機械・金属製品なら古物商許可を確認する

古物営業法では、使用された物品や、使用のために取引された未使用品、それらに幾分の手入れをした物などを「古物」としています。

古物の売買・交換などを営業として行う場合には、公安委員会の許可が必要です。

たとえば、

  • 中古機械
  • 中古工具
  • まだ使用できる金属製品
  • 中古設備

などを仕入れて再販売する事業を予定しているなら、古物営業法側の確認が必要になります。

ここで重要なのは、

「金属でできているか」ではなく、「その物が古物として取り扱われる状態か」

を見ることです。

古物そのものの定義や、古物商許可が必要な取引については、別の詳細記事で確認した方が分かりやすいでしょう。

使用できなくなった金属くずなら別の確認へ進む

一方、加工・切断・分離などによって、本来の用途で使用できなくなった金属製品は「金属くず」として扱われる可能性があります。

金属盗対策法の警察庁解釈でも、金属くずは、状態の変化や物品からの分離などによって、本来用途での使用ができなくなったものと整理されています。

この場合は古物商許可だけを見るのではなく、次に特定金属くず買受業に当たるかを確認します。

銅くずを扱うなら「特定金属くず買受業」を確認する

2026年6月1日から、特定金属くず買受業に関する制度が施行されています。

2026年9月現在、対象となる特定金属は銅です。

ただし、

「銅を含むスクラップを扱う=すべて特定金属くず」

ではありません。

金属盗対策法上の「特定金属くず」は、主として特定金属で構成される金属くずから、製造工程で生じるものや古物を除いたものです。

警察庁は「主として」について、重量または価格の2分の1以上を占めることとしています。

そのため、銅を扱う予定がある場合は、

  • 本来用途で使えない金属くずか
  • 重量または価格の2分の1以上を銅が占めるか
  • 製造工程で生じた端材ではないか
  • 古物に該当しないか

などを確認します。

特定金属くずに該当し、その買受けを営業として行うのであれば、特定金属くず買受業の制度確認へ進みます。

小野馨の一言

スクラップ業を始めるときは、最初から「何の許可を取ればいいか」と考えるより、予定している取扱品を一度一覧にして、「まだ使える物」「スクラップ状態の物」に分ける方が整理しやすくなります。そのうえで制度を当てはめると、確認漏れや不要な手戻りを減らしやすくなります。

特定金属くず買受業は古物商許可とは別に確認する

特定金属くず買受業とは、特定金属くずの買受けを行う営業です。

古物と特定金属くずは、同じ物が両方に重複するという整理ではありません。警察庁は、本来の目的に従って使用できる物は古物に当たり、金属くずである特定金属くずとの重複は概念上想定されないとしています。

一方、一つの事業者が、

  • 使用できる中古金属製品
  • 使用できなくなった対象の銅くず

の両方を取り扱うことはあります。

そのため、

「古物商許可を持っているから特定金属くず買受業は関係ない」

とは判断できません。

古物と特定金属くずの境界そのものを詳しく確認したい場合は、別の記事へ分ける方が理解しやすくなります。

営業地域によっては金属くず条例も確認する

金属スクラップ事業では、国の法律だけを確認すれば終わるとは限りません。

金属盗対策法は、地方公共団体が金属くずの買受けについて条例で必要な規制を設けることを妨げていません。

つまり地域によっては、

  • 国の金属盗対策法上の届出
  • 都道府県等の金属くず営業条例による許可・届出

が別々に関係する可能性があります。

したがって、取扱品だけではなく、営業所やヤードを置く都道府県も開業前に確定しておく必要があります。

全国記事だけで地域ごとの手続を断定せず、最終的には営業所所在地を管轄する警察・自治体の最新情報を確認してください。

「買い取るなら有価物だから産廃許可はいらない」とは限らない

金属スクラップ事業で特に注意したいのが、廃棄物処理法との関係です。

ここでは、

「お金を払って買い取れば有価物なので、廃棄物処理法は関係ない」

と単純に考えない方が安全です。

環境省は、ある物が廃棄物に当たるかどうかについて、

  • 物の性状
  • 排出の状況
  • 通常の取扱い形態
  • 取引価値の有無
  • 占有者の意思

などを総合的に勘案して判断するとしています。

つまり、有償譲渡契約がある、買取代金を支払っているという一つの事情だけで、直ちに廃棄物ではないと判断できるわけではありません。

先に「その物が廃棄物なのか」を確認する

顧客先まで引き取りに行く場合でも、

引き取りに行く
= 産業廃棄物収集運搬業の許可が必要

と直結させることはできません。

まず、運ぶ物がそもそも廃棄物に該当するのかを確認します。

そのうえで廃棄物に当たるのであれば、

  1. 一般廃棄物か産業廃棄物か
  2. 他人の廃棄物を収集・運搬する業務か
  3. 許可の対象となるか
  4. 例外に当たらないか

という順番で確認します。

廃棄物として金属くずを収集・運搬する場合は許可を確認する

廃棄物処理法上、産業廃棄物の収集・運搬を業として行おうとする者は、原則として産業廃棄物収集運搬業の許可が必要です。

また、金属くずは産業廃棄物の種類の一つとして扱われる場合があります。

ただし、ここでも、

事業者から出た金属=すべて産業廃棄物

ではありません。

そもそも廃棄物に当たるかどうかを先に確認する必要があります。

さらに、廃棄物処理法には「専ら再生利用の目的となる廃棄物」、いわゆる専ら物に関する例外があります。

環境省は、古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維について、再生利用を目的とする一定の取扱いでは、廃棄物処理業の許可対象から外れる場合があるとしています。

一方、専ら物であっても、実際に再生利用されないと認められる場合には許可が必要とされています。

したがって、

「金属くずだから専ら物で許可不要」

とも一律には判断できません。

家庭から不要品を回収する事業は別の確認が必要

家庭等から不要品として回収する事業を予定している場合は、事業者から排出される金属スクラップとは別に考える必要があります。

一般廃棄物の収集・運搬を業として行う場合には、市町村長の許可制度があります。

そのため、

「スクラップ買取店だから家庭の不要金属も自由に回収できる」

とは考えず、実際の事業内容ごとに制度を確認しましょう。

買取後に切断・加工・処理する場合も事業内容を確認する

買い取ったスクラップを、

  • 切断する
  • 圧縮する
  • 選別する
  • 中間処理する

といった事業まで行う場合も、単に「スクラップ買取業」とだけ考えない方がよいでしょう。

扱っている物が廃棄物であり、その処分を業として行うのであれば、産業廃棄物処分業の許可制度が関係する可能性があります。

ただし、前提となるのは、その物が廃棄物に該当することです。

処理の内容や専ら物等の例外によっても扱いが変わるため、

「切断・加工するなら必ず産廃処分業許可」

と一律に判断することはできません。

金属スクラップ買取で確認する制度を整理

ここまでを一覧にすると、次のように考えられます。

予定している事業まず確認する制度
使用できる中古機械・金属製品を仕入れて売る古物営業法
対象となる銅くずを買い受ける金属盗対策法
地域独自の金属くず営業規制がある都道府県等の条例
廃棄物に当たる金属くずを収集・運搬する廃棄物処理法
家庭の不要品・廃棄物を回収する一般廃棄物関係の制度
廃棄物を処分・中間処理する産業廃棄物処分業等

この表は「この事業なら必ずこの許可」という一覧ではありません。

次に何を確認すべきかを絞るための入口として使ってください。

開業前は6つのステップで確認する

STEP1 取扱品を一覧にする

まず、予定している取扱品を書き出します。

たとえば、

  • 中古機械
  • 中古工具
  • 鉄スクラップ
  • アルミスクラップ
  • 銅線
  • 銅管
  • 室外機
  • 解体された金属部品

などです。

「金属全般」とまとめず、できるだけ具体的に整理します。

STEP2 使用可能品とスクラップ状態を分ける

次に、

  • 本来用途でまだ使える物
  • 本来用途で使用できなくなった物

に分けます。

ここで古物側と金属くず側の確認先が見えやすくなります。

STEP3 廃棄物に当たる可能性を確認する

顧客が「捨てたい物」を回収する、処理料金を受け取る、通常の有価物取引とは異なる形で引き取るなどの場合は、廃棄物処理法の確認が重要になります。

ただし、取引名目や価格だけで決めず、実態を整理します。

STEP4 事業で何をするかを決める

買取だけなのか、

  • 引取
  • 収集
  • 運搬
  • 保管
  • 選別
  • 切断
  • 処理

まで行うのかを決めます。

事業範囲が曖昧なままだと、必要な許認可も絞れません。

STEP5 営業所・ヤード・営業地域を決める

国の制度だけでなく、地域の金属くず条例等が関係する場合があります。

どこで営業するのかを決めたうえで、対象地域の警察・自治体の最新情報を確認します。

STEP6 関係制度が分かったら個別手続へ進む

確認する制度が絞れたら、それぞれの詳細手続へ進みます。

たとえば、

  • 古物商許可
  • 特定金属くず買受業の届出
  • 地域の金属くず業の許可・届出
  • 廃棄物処理業関係の許可

などです。

この段階で初めて、必要書類、申請先、届出時期等を確認すると効率的です。

ケース別|自分はどこを確認すればよい?

中古機械とスクラップの両方を買いたい

中古機械としてまだ使える物を買い取り、再販売するのであれば、古物商許可を確認します。

同時に、使用できなくなった対象の銅くず等も買い取るのであれば、特定金属くず買受業も別に確認します。

一つの事業者が複数制度に関係することはあります。

銅線や銅くずを中心に買いたい

まず、特定金属くずの条件を確認します。

現在対象となっている特定金属は銅ですが、銅が含まれているだけで対象になるわけではありません。

物の状態、銅の割合、古物や製造端材に当たらないかなどを確認します。

鉄やアルミのスクラップを中心に買いたい

2026年9月現在、金属盗対策法上の特定金属は銅です。

したがって、鉄やアルミであることだけを理由に特定金属くず買受業の対象になるわけではありません。

ただし、

  • 地域の金属くず条例
  • 古物営業法
  • 廃棄物処理法

など、別制度が関係しないかは引き続き確認します。

顧客先までスクラップを取りに行きたい

まず、

その物が廃棄物なのか、有価物として流通する物なのか

を確認します。

顧客先へ取りに行くという事実だけで、産業廃棄物収集運搬業の許可が必要とは決まりません。

廃棄物に該当するのであれば、収集運搬業許可や専ら物等の例外を含めて確認します。

家庭から不要な金属製品を回収したい

「買い取る」のではなく、家庭から不要品・廃棄物として回収する事業まで予定しているなら、一般廃棄物関係の制度を別に確認する必要があります。

古物商許可は、家庭の廃棄物を自由に回収するための許可ではありません。

よくある質問

金属スクラップ買取には必ず古物商許可が必要ですか?

必ずとは限りません。

何をどの状態で買い取るのか、その取引が古物営業法上の古物営業に当たるのかを確認します。

使用可能な中古品・機械等の売買を営業として行う場合には、古物商許可の確認が重要です。

鉄くずやアルミくずだけなら許可はいりませんか?

「特定金属くず買受業だけ」を見ると、2026年9月現在の特定金属は銅です。

しかし、鉄・アルミだから何の制度も関係しないとは限りません。

古物営業法、地域条例、廃棄物処理法等を、実際の取扱いに応じて確認してください。

スクラップを買い取りに行くなら産業廃棄物収集運搬業の許可が必要ですか?

一律にはいえません。

まず、その物が廃棄物に当たるかを確認します。

廃棄物に該当する産業廃棄物の収集・運搬を業として行う場合は原則として許可制度がありますが、専ら再生利用されるくず鉄・古銅等には例外もあります。

お金を払って買えば廃棄物ではありませんか?

必ずしもそうとはいえません。

環境省は、取引価格だけでなく、物の性状、排出状況、通常の取扱い形態、取引価値、占有者の意思などを総合して廃棄物該当性を判断するとしています。

金属くずなら「専ら物」で産廃許可は不要ですか?

一律にはいえません。

くず鉄(古銅等を含む)は専ら再生利用の目的となる廃棄物として扱われる場合がありますが、実際に再生利用されないと認められる場合には許可が必要です。

まとめ|許可名を探す前に事業内容を分解しよう

金属スクラップ買取を始めるとき、最初に、

「古物商許可を取ればいいのか」

「産廃許可が必要なのか」

と制度名から考え始めると、かえって分かりにくくなることがあります。

まずは、

何を扱うか
↓
どの状態か
↓
廃棄物に当たるか
↓
何をする事業か
↓
どこで営業するか

という順番で整理してください。

そのうえで、

  • 古物営業法
  • 金属盗対策法
  • 地域の金属くず営業規制
  • 廃棄物処理法

のどこを確認すべきかを絞ります。

自分で進める場合でも、最初に事業内容を整理しておけば、公的窓口へ何を確認すればよいかが明確になります。

一方、

  • 古物と金属くずの両方を扱う
  • 銅くずも買い取る
  • 顧客先から引き取る
  • 複数地域で営業する
  • 廃棄物か有価物か判断しにくい

など、複数制度が重なりそうな場合は、営業開始前に関係する行政窓口や、対応可能な許認可専門家へ整理を相談する方法もあります。

大切なのは、許可を一つ探すことではなく、自分の事業全体に確認漏れがない状態を作ることです。