特定金属くず買受業について、
「古物商許可があるので、新しい届出は必要ないと思っていた」
「2026年8月31日までの経過措置を知らなかった」
「9月になってから、自社も届出対象だった可能性に気付いた」
という場合、何から確認すればよいのでしょうか。
まず重要なのは、慌てて通常の営業開始届出書を書き始めることではありません。
注意ポイント
2026年6月1日時点ですでに特定金属くず買受業を営んでいた事業者には、開始届出について3か月の経過措置がありましたが、その期限は2026年8月31日で終了しています。
2026年9月1日以降は、届出をしていないまま特定金属くず買受業を営むことはできません。
そのため、届出忘れに気付いた場合は、
自社が本当に対象だったか
→ 現在も対象となる営業をしていないか
→ 9月1日以降に買受けをしていたか
→ 6月1日以降の本人確認・記録はどうだったか
→ 事実を整理して管轄警察へ確認する
という順番で整理することが大切です。
この記事では通常の届出方法を最初から説明し直すのではなく、「期限を過ぎたことに気付いた事業者が、今から何を確認してどう動くか」に絞って解説します。
この記事のポイント
- 既存事業者の開始届出に関する経過措置は2026年8月31日で終了
- 2026年9月1日以降は、未届出のまま対象となる営業を続けることはできない
- まず、自社が本当に特定金属くず買受業の対象だったか確認する
- これからの営業とすでに行った取引を分けて整理する
- 開始届出に猶予があっても、本人確認・取引記録等の義務は2026年6月1日から発生
- 「今から届出すればすぐ営業できる」と自己判断しない
- 現在の営業・過去の取引・記録状況を整理して、管轄警察へ確認する
特定金属くず買受業の届出の2026年8月31日の経過措置はすでに終了している

金属盗対策法の特定金属くず買受業に関する制度は、2026年6月1日に施行されました。
ココがダメ
施行日の時点ですでに特定金属くず買受業を営んでいた事業者については、開始届出に3か月の経過措置が設けられ、2026年8月31日までに届出をする必要がありました。
現在は、この経過措置を利用できる期間ではありません。
警視庁も、2026年6月1日時点ですでに営業していた事業者について、届出をしていない場合は2026年9月1日以降、特定金属くず買受業を営むことができないと案内しています。
したがって、
期限を過ぎたけれど、営業を続けながら後で届出すればよい
という前提では考えないことが重要です。
では、届出をしていなかった可能性に気付いた場合、何から確認すればよいのでしょうか。
届出忘れに気付いたら、まず3つを確認する

最初から必要書類を集めるのではなく、対象・現在・過去の3つに分けると整理しやすくなります。
1.そもそも特定金属くず買受業の対象だったか
最初に確認するのは、自社が本当に特定金属くず買受業を営んでいたのかです。
金属を扱っている事業者がすべて対象になるわけではありません。
また、
古物商許可を持っている=特定金属くず買受業の届出は不要
とも判断できません。
取り扱っていた物が、
- 古物なのか
- 金属くずの状態なのか
- 特定金属くずに該当するのか
によって判断が変わります。
ここが分からないまま、「自分は届出を忘れた」と決めつける必要はありません。
古物と特定金属くずの境界自体が分からない場合は、まず対象判定を確認してください。
この記事では、銅の割合や個別品目の判定までは重複して説明しません。
2.現在も未届出のまま買受営業をしていないか
対象だったことが分かったら、次に確認するのは現在の営業状態です。
確認したいのは、
- 現在も対象となる買受けを行っているか
- すでに買受けを停止しているか
- どの営業所で買受けをしていたか
- 複数の営業所がある場合、それぞれの届出状況はどうなっているか
です。
特定金属くず買受業の開始届出は、営業所ごとに必要です。
そのため、
「会社として一度どこかで届出したと思う」
だけではなく、実際に特定金属くずを買い受けていた営業所について確認します。
3.2026年9月1日以降に買受けをしていたか
現在の営業状態を確認したら、次に過去の取引を時系列で整理します。
特に重要なのが、
2026年9月1日以降に、対象となる特定金属くずを買い受けていたか
です。
ここでは、すぐに自分で法的評価を決めるのではなく、
- いつ
- どの営業所で
- 何を
- どのくらいの期間
- どのように買い受けていたか
を事実として整理します。
後で管轄警察へ状況を説明するときにも、この整理が役立ちます。
「これからの営業」と「すでに行った取引」を分けて考える

届出忘れに気付いた場合、すべてを一つの問題として考えると混乱しやすくなります。
特に分けたいのが、
これからどうするか
と、
これまでに何があったか
です。
| これから確認すること | 過去について整理すること |
|---|---|
| 現在の営業状態 | 9月1日以降の買受けの有無 |
| 管轄警察への確認 | 買受けを行った期間 |
| 今後必要となる届出 | 買受けを行った営業所 |
| 営業再開についての確認 | 実際に扱った品目 |
| 今後の本人確認・記録体制 | これまでの本人確認・記録状況 |
ここで特に注意したいのは、
「今から開始届出を出せば、過去の未届出状態もなかったことになる」
とは考えないことです。
一方で、期限を過ぎたというだけで、個別の処分結果まで自分で決めつける必要もありません。
まず、今後の営業と過去の事実を分けて整理することが先です。
8月31日まで猶予されていたのは「開始届出」
ここは、届出忘れの記事で特に重要なポイントです。
既存事業者については、開始届出に2026年8月31日までの経過措置がありました。
しかし、
本人確認や取引記録等も8月31日までしなくてよかった
という意味ではありません。
警察庁の解釈・運用基準では、開始届出について経過措置がある一方、本人確認や取引記録の作成等については猶予期間がなく、2026年6月1日から履行する必要があるとされています。
つまり、2026年6月1日から8月31日までについても、
「開始届出はまだ出していなかったから、本人確認や記録もしなくてよかった」
とはなりません。
したがって、届出忘れに気付いた場合は、
開始届出の状況
と、
2026年6月1日以降の本人確認・記録状況
を別々に点検します。
本人確認方法、本人確認記録、取引記録、保存期間などの通常ルールについては、別記事で確認できます。
「届出したつもり」の場合も実際の届出状況を確認する
届出忘れというと、
「何も提出していなかった」
場合だけを想像しがちですが、それだけではありません。
例えば、
「書類は警察署へ持って行ったはず」
「担当者に任せていた」
「開始届出書だけは出したと思う」
という場合も考えられます。
警察庁の解釈・運用基準では、形式上の要件に適合した届出が提出先へ到達したときに、届出義務が履行されたものと整理されています。
一方、形式上の要件を満たしていない場合や、必要な添付書類がない場合には、届出義務を履行したことにならないとされています。
そのため、
「提出した記憶がある」ことと、「正式に届出済みである」ことは分けて確認する
ことが重要です。
まず手元にある届出の控えなどを確認し、それでも分からなければ管轄警察へ届出状況を確認してください。
管轄警察へ連絡する前に「事実メモ」を作る
ここまで確認したら、次は管轄警察へ状況を説明できる形に整理します。
この段階で、必要書類を完璧にそろえる必要はありません。
まず、次のような事項を一枚にまとめておくと、現在の状態を説明しやすくなります。
- 事業者名・法人名
- 営業所所在地
- 特定金属くずの買受けを始めた時期
- 実際に買い受けていた品目
- 2026年9月1日以降の買受けの有無
- 現在も対象となる買受けを行っているか
- 開始届出を提出した記憶や控えの有無
- 複数営業所がある場合、それぞれの営業状況
- 2026年6月1日以降の本人確認・本人確認記録・取引記録の状況
これは、法律上定められた「期限超過者用の提出書類一覧」という意味ではありません。
現在の状況を正確に説明するための整理メモです。
分からない部分を無理に埋める必要もありません。
確認できない事項は、
「現時点では確認できていない」
と分けておくと整理しやすくなります。
管轄警察では「今後」と「過去」を分けて確認する
事実関係を整理したら、営業所所在地を管轄する警察へ確認します。
このときも、質問を一つにまとめず、
これからどうするか
と、
これまでの取引をどう確認するか
を分けると整理しやすくなります。
今後について確認すること
- 現在の営業状態をどのように取り扱うか
- 営業開始届出をどのように進めるか
- 期限を過ぎた現在の状況で、どのような届出・書類準備が必要になるか
- 営業を再開できる時点をどのように確認するか
過去について確認すること
- 2026年9月1日以降に買受けをしていた場合に確認すべきこと
- 2026年6月1日以降の本人確認・記録状況について確認すべきこと
ここで大切なのは、
「遅れて開始届出を出せば、提出した瞬間から営業できる」
と自己判断しないことです。
期限を過ぎた既存事業者について、全国一律の詳細な期限後処理や営業再開時点は、確認できている主要公式資料では明示されていません。
したがって、通常の新規開始ルールをそのまま自分へ当てはめず、現在の状況を伝えたうえで管轄警察へ確認するのが適切です。
管轄警察から届出を進めるよう案内されたら、通常の届出準備へ進む
管轄警察へ確認した結果、営業開始届出を進めることになったら、そこで通常の届出準備へ進みます。
この段階では、
- 営業開始届出書
- 添付書類
- 営業所等の図面
などを確認することになります。
ただし、それらをこの記事で詳しく説明すると、通常の届出方法の記事と役割が重なります。
「何を準備すればよいか」を確認する段階まで進んだ方は、必要書類・提出先・図面の準備を次の記事で確認してください。
無届営業には罰則があるが、個別の処分結果は決めつけない
金属盗対策法では、届出をしないで特定金属くず買受業を営んだ場合について、
6か月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、またはその併科
が定められています。
ただし、この規定があることと、
「届出を忘れたら必ず100万円の罰金になる」
ということは同じではありません。
反対に、
「今から届出すれば、過去について何の問題もなくなる」
とも判断できません。
実際にどのような対応・処分となるかは個別事案によって異なるため、この記事で予測することはできません。
この記事では処分結果を予測するのではなく、現在の営業状況や過去の取引など、確認できる事実を正確に整理することを優先します。
行政書士への依頼を考えるのは、状況確認のあとでよい
期限を過ぎていると、
「行政書士へ依頼すれば、すべて対応してもらえるのでは」
と考えることもあるでしょう。
ただし、
期限を過ぎた事実や過去の営業状況をどう取り扱うか
と、
開始届出の書類や図面を作成すること
は同じ問題ではありません。
まず、
対象だったか
→ 現在の営業状態
→ 期限後の取引
→ 本人確認・記録状況
→ 管轄警察への確認
まで進めます。
そのうえで、届出書類や図面の準備を自分で進めるか、行政書士への依頼を検討する、という順番が自然です。
届出作業を自分で行うか依頼するか比較したい段階になったら、代行記事で確認できます。
よくある質問
古物商許可があれば、特定金属くず買受業の届出は不要ですか?
古物商許可を持っていることだけでは判断できません。
実際に何を、どのような状態で買い受けていたかを確認し、特定金属くず買受業に該当するか判断する必要があります。
対象自体が分からない場合は、古物と特定金属くずの対象判定を先に確認してください。
2026年9月1日以降は買受けをしていません。それでも確認は必要ですか?
2026年6月1日時点ですでに特定金属くず買受業を営んでいた場合、開始届出は8月31日までに行う必要がありました。
また、本人確認や取引記録等については6月1日から義務が発生していました。
そのため、9月1日以降に営業していない場合でも、6月1日以降の営業・届出・本人確認・記録の状況を一度整理しておくことが重要です。
そのうえで、届出状況や過去の取扱いについて不明な点がある場合は、整理した事実をもとに管轄警察へ確認するとよいでしょう。
期限を過ぎても開始届出を出せば、すぐ営業できますか?
期限を過ぎた既存事業者について、全国一律の営業再開時点は、確認できている主要公式資料では明示されていません。
通常の新規開始手続をそのまま当てはめず、現在の状況を管轄警察へ説明し、届出方法と営業再開について確認してください。
届出を忘れたら必ず100万円の罰金ですか?
その意味ではありません。
無届営業について法律上、6か月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、またはその併科という罰則がありますが、これは法定刑です。
個別の処分結果をこの記事で予測することはできません。
まとめ|届出忘れに気付いたら「今」と「過去」を分けて確認する
特定金属くず買受業について、既存事業者の開始届出に設けられていた経過措置は2026年8月31日で終了しています。
2026年9月1日以降は、届出をしないまま対象となる特定金属くず買受業を営むことはできません。
届出忘れに気付いた場合は、
本当に特定金属くず買受業の対象だったか
↓
現在も未届出で営業していないか
↓
2026年9月1日以降の買受けがあったか
↓
2026年6月1日以降の本人確認・記録状況はどうだったか
↓
営業所ごとの届出状況を確認する
↓
事実を整理して管轄警察へ確認する
↓
案内に沿って必要な届出・準備へ進む
という順番で整理します。
大切なのは、
「今から届出書を出せば全部解決する」と自己判断しないこと
です。
一方で、期限を過ぎたという一点だけから、自分で処分結果まで決めつける必要もありません。
まずは、
「いつから・どの営業所で・何を買い受けていたか」
「2026年9月1日以降の取引があるか」
「2026年6月1日以降、本人確認や記録をどのように行っていたか」
を一枚に整理してください。
そのうえで、現在の営業状態と過去の取引を分けて管轄警察へ説明し、今後必要となる対応を確認する。
これが、特定金属くず買受業の届出忘れに気付いたときの最初の一歩です。


