特定金属くず買受業の届出を済ませた後は、実際の買取時に本人確認・本人確認記録・取引記録を適切に行う必要があります。
ココがポイント
金属盗対策法に基づく特定金属くず買受業の本人確認・記録等に関する措置は、2026年6月1日から施行されています。
※この記事は2026年9月時点の制度に基づいています。
「運転免許証を確認すればそれでよいのか」
「法人から買い取る場合は誰を確認するのか」
「本人確認記録と取引記録は何が違うのか」
「記録は何年間保存すればよいのか」
など、実際に営業を始める段階になると、届出手続とは別の疑問が出てきます。
特定金属くず買受業では、本人確認書類を見るだけで買取実務が完了するわけではありません。
原則として相手方を本人確認し、その内容について本人確認記録を作成します。
さらに、買い受けた特定金属くずについて取引記録を作成し、それぞれ保存する必要があります。
大阪府警も、本人確認、本人確認記録、取引記録、3年間の保存を一連の義務として案内しています。
大阪府警:盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(金属盗対策法)の概要について
また、古物商を兼業している事業者は注意が必要です。古物営業には1万円未満の取引について別のルールがありますが、特定金属くず買受業では、「1万円未満だから本人確認不要」と単純に判断することはできません。 古物側と特定金属くず側は分けて考える必要があります。警視庁:1万円未満の買受時に本人確認と帳簿等へ記載が必要な物品の追加
この記事では、
個人・法人から買い取る場合の本人確認、対面・非対面での確認方法、1万円未満の考え方、常連客との再取引、本人確認記録と取引記録の違い、記録事項、保存期間とその起算点、盗品由来の疑いがある場合の対応、営業開始前に整えておきたい社内運用
まで、1件の買取業務の流れに沿って解説します。
最後まで読むことで、「1件の特定金属くずの買取について、誰を確認し、何を記録し、いつまで保存すればよいのか」を整理できるようになります。
この記事のポイント
- 特定金属くずの買受けでは、原則として相手方の本人確認が必要
- 本人確認後は、本人確認記録を直ちに作成する
- 買受け後は、別に取引記録を直ちに作成する
- 本人確認記録と取引記録は、どちらも各買受日から3年間保存する
- 1万円未満だから本人確認不要という古物商側の考え方を、そのまま適用しない
- 法人取引では、法人だけでなく実際に取引の任に当たる自然人についても確認する
- 常連客・再取引でも、一定条件を満たさなければ本人確認を省略できない
- 盗品由来の疑いがあると認めた場合は、警察官への申告が必要
特定金属くずの本人確認は誰について行う?
個人から買い取る場合
個人から特定金属くずを買い取る場合は、相手方の本人特定事項を確認します。
基本となるのは、
氏名・住居・生年月日
です。
店舗やヤードなどで直接相手方と会う対面取引では、運転免許証、マイナンバーカード、在留カードなど、顔写真付きの本人確認書類の提示を受ける方法が代表的です。大阪府警も、これらを本人確認方法の例として案内しています。Osaka Prefectural Police
ただし、
本人確認書類を見ること
と、
本人確認記録を作成すること
は別です。
本人特定事項を確認した後は、誰をどのような方法で確認したのかについて、本人確認記録を作成します。
法人から買い取る場合
法人との取引では、会社名だけを確認すれば終わりというわけではありません。
法人については、法人の名称、本店または主たる事務所の所在地などを確認します。
さらに、法人のために実際に取引の任に当たっている自然人がいる場合は、その取引担当者についても本人確認を行います。大阪府警も、取引担当者の本人確認に加えて、登記事項証明書等による法人確認を行う方法を具体例として示しています。大阪府警:盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(金属盗対策法)の概要について
例えば、
法人を確認する書類
+
取引担当者の本人確認書類
という形で確認します。
法人名が記載された名刺や請求書だけを確認して、本人確認がすべて終了したと考えないことが重要です。
本人確認・本人確認記録・取引記録の具体的な実務例は、大阪府警の公式案内で確認できます。
対面取引と非対面取引では本人確認方法が異なる
対面で買い取る場合
店舗・ヤードなどで相手方と直接会う場合は、顔写真付き本人確認書類の提示を受ける方法が代表的です。
現場では、
本人確認書類を確認
→ 本人特定事項を確認
→ 本人確認記録を直ちに作成
までを一続きの受付業務にしておくと、「身分証は見たが記録を作っていない」といった漏れを防ぎやすくなります。
宅配・オンラインなど非対面の場合
宅配買取やオンライン買取では、対面と同じ本人確認方法をそのまま使えるとは限りません。
本人の容貌画像、写真付き本人確認書類の画像、本人確認書類のIC情報などを利用する方法が規則で定められています。
したがって、
「免許証をスマートフォンで撮影し、メールで送ってもらえば本人確認完了」
と一律に考えることはできません。
非対面で特定金属くずを買い受ける場合は、自社で採用する本人確認方法をあらかじめ決め、その方法が現行の法定方法に適合しているか確認してから運用してください。
1万円未満でも古物商のルールをそのまま使わない
古物商を兼業している事業者が、特に間違えやすいポイントです。
古物営業では、総額1万円未満の買受けについて相手方確認等が原則免除される制度があり、一定の品目については1万円未満でも確認等が必要です。
警視庁:1万円未満の買受時に本人確認と帳簿等へ記載が必要な物品の追加
しかし、これは古物営業法側のルールです。
特定金属くず買受業について、
「5,000円の買取だから本人確認しなくてよい」
というように、1万円未満であることだけを理由に本人確認を省略することはできません。
古物として買い取る場合の少額取引ルールについては、別の記事で詳しく確認してください。
常連客・2回目以降の取引では本人確認不要になる?
「以前にも取引したことがある」だけでは、無条件に本人確認不要にはなりません。
本人確認が不要となる代表的な例外として、本人確認記録に記録されている過去の取引相手との2回目以降の取引で、代金をその者名義の預貯金口座へ振り込む場合があります。Osaka Prefectural Police
この場合でも、本人確認記録に記録された相手方と同一であることを確認し、その取引に必要な事項を記録します。その記録は、その買受けが行われた日から3年間保存します。Osaka Prefectural Police
したがって、
初回に免許証を確認した
→ 2回目からは現金買取でも永久に本人確認不要
という仕組みではありません。
なお、特定金属くず買受業者が特定金属くずを自ら輸入する場合も、本人確認不要の例外として規定されています。
本人確認後は「本人確認記録」を直ちに作成する
本人確認を行った場合は、本人確認記録を直ちに作成します。
記録内容は本人確認方法によって異なりますが、主に、
- 本人確認を行った者
- 記録を作成した者
- 相手方の本人特定事項
- 必要な場合の取引担当者の本人特定事項
- 本人確認方法
- 使用した本人確認書類
- 本人確認書類の提示・送付等を受けた日
などです。
本人確認方法によっては、本人確認書類の写し等を本人確認記録へ添付します。大阪府警は、添付した本人確認資料を本人確認記録の一部として扱うことも案内しています。
したがって、
身分証のコピーだけ保管すれば本人確認記録が完成する
とは限りません。
「直ちに」は後日まとめて作成する運用にしない
「直ちに作成」という点は、実際の運用でも重要です。
1週間分や月末分をまとめて後から入力することを前提にするのではなく、各取引で本人確認をした後、その都度記録を作成する運用にしておく方が制度に沿った管理になります。
大阪府警も、本人確認記録について「その都度直ちに作成」と案内しています。
本人確認記録は紙でも電子データでも作成できる
本人確認記録は、文書または電磁的記録で作成できます。大阪府警も、紙媒体だけでなくPC等による保存が可能と案内しています。
ただし、
電子管理できる=必要な記録事項を省略できる
という意味ではありません。
表計算ソフトや業務システムを利用する場合も、必要事項や必要な添付資料を保持できるようにしてください。
特定金属くずの取引記録には何を記録する?
本人確認記録とは別に、特定金属くずを買い受けた場合は取引記録も直ちに作成します。法律上も、買受けを行った場合には直ちに取引記録を作成する仕組みです。
主な記録事項は、
- 相手方の氏名または名称
- 買受けの日付・時刻
- 特定金属くずの量
- 特定金属くずの特徴
- 価額
- 代金の支払方法
です。大阪府警は、特徴について「銅線」「銅板」「金属管」などの例を示し、写真で記録する方法も認められると案内しています。
「特徴」は、後から見たときに、
どの特定金属くずについての取引なのか
を確認できる内容にすることが重要です。
本人確認記録と取引記録の違い
両方とも買受けに関係する記録ですが、役割は異なります。
| 比較 | 本人確認記録 | 取引記録 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 誰をどのように確認したか残す | 何をどのように買い受けたか残す |
| 作成時期 | 本人確認後、直ちに | 買受け後、直ちに |
| 主な内容 | 本人特定事項・確認方法・確認書類等 | 日時・量・特徴・価額・支払方法等 |
| 保存期間 | 各買受日から3年間 | 各買受日から3年間 |
大阪府警の案内でも、本人確認記録と取引記録は別の記録として整理されています。
そのため、
古物台帳があるから自動的に特定金属くず側の記録義務も満たす
あるいは、
本人確認記録と取引記録を1枚にすれば必ず問題ない
とは一律に判断しない方が安全です。
既存の帳票や業務システムを利用する場合は、特定金属くず買受業で必要となる事項をすべて記録できるか確認してください。
本人確認記録・取引記録は「各買受日から3年間」保存する
ここはこの記事の中でも特に重要です。
本人確認記録は、その本人確認に係る買受けが行われた日から3年間保存します。
取引記録についても、その取引に係る買受けが行われた日から3年間保存します。
したがって、
「3年保存」
だけではなく、
「各買受日から3年間」
までセットで理解してください。
「その顧客との最後の取引日から3年間」ではない
例えば、同じ相手と、
4月1日
6月1日
9月1日
にそれぞれ買受けを行った場合を考えます。
このとき、
最後の9月1日から過去の記録を全部まとめて3年間保存する
という考え方ではありません。
それぞれの買受けに係る記録について、それぞれの買受日を基準に保存期間を管理します。
社内マニュアルや業務システムでも、
「保存期間3年」ではなく「買受日+3年」
までルール化しておくと、保存期限の誤解を減らしやすくなります。
1件の特定金属くず買取を6ステップで処理する
ここまでの内容を、実際の買取業務へまとめます。
STEP1 相手方を確認する
個人なのか法人なのか、法人であれば誰が実際の取引を担当するのかを整理します。
STEP2 取引形態に合った本人確認を行う
対面・非対面などに応じた本人確認方法を使います。
STEP3 本人確認記録を直ちに作成する
本人特定事項、本人確認方法、確認書類等を記録します。
STEP4 取引記録を直ちに作成する
買受けの日時、量、特徴、価額、支払方法等を記録します。
STEP5 各買受日から3年間保存する
本人確認記録・取引記録の保存期限を、それぞれの買受日を基準に管理します。
STEP6 盗品由来の疑いがあれば通常処理で終わらせない
必要に応じて警察官への申告へ進みます。
この流れを受付業務として決めておくことで、
「本人確認はしたが、本人確認記録を作っていない」
「取引記録はあるが、本人確認記録が残っていない」
といった運用漏れを防ぎやすくなります。
盗品由来の疑いがある場合は警察へ申告する
取引態様その他の事情から、買い受ける特定金属くずが盗難特定金属製物品に由来する疑いがあると認めた場合は、直ちに警察官へ申告する必要があります。Osaka Prefectural Police
ただし、
本人確認を拒否した=直ちに盗品
という意味ではありません。
本人確認を拒否されたり、持込み状況等に不自然な点があったりした場合に、そのまま通常の買取処理へ流すのではなく、状況を確認します。
大阪府警も、本人確認を拒否するなど怪しいと感じた場合には、警察への申告・相談を案内しています。Osaka Prefectural Police
営業開始前に本人確認・記録方法を社内で統一する
法律上のルールを理解していても、店舗やヤードで担当者ごとに処理方法が違えば、本人確認漏れや記録漏れにつながります。
営業開始前に、
誰が本人確認するか
どの本人確認方法を採用するか
本人確認記録をどこへ残すか
取引記録をどこへ残すか
買受日から3年間の保存期限をどう管理するか
不審な取引があったとき誰が対応するか
まで社内で整理しておくと、運用を統一しやすくなります。
特に古物商を兼業している場合は、
古物として買い取る取引
と、
特定金属くずとして買い取る取引
を区別し、どの制度の本人確認・記録ルールで処理するのかを共有しておくことが重要です。
そもそも、自社で買い取る物が古物なのか特定金属くずなのか判断できていない場合は、先に対象判定を確認してください。
届出がまだ終わっていない方へ
この記事は、主に特定金属くず買受業の届出後の営業実務を解説しています。
まだ営業開始届出が終わっていない場合は、本人確認・記録の運用を整える前に、開始届出の期限・必要書類・図面等を確認してください。
すでに特定金属くずの買受営業をしているにもかかわらず、届出をしていない場合は、これから営業を始める方とは状況が異なります。
まとめ|本人確認・記録・保存までを1件の買取業務として管理する
特定金属くず買受業では、本人確認書類を見るだけでは買取実務は完了しません。
基本は、
本人確認
→ 本人確認記録
→ 取引記録
→ 各買受日から3年間保存
です。
1万円未満であることや、以前取引した常連客であることだけを理由に、本人確認を省略しないようにします。本人確認の例外を使う場合も、それぞれの条件を確認する必要があります。
また、本人確認記録は本人確認後、取引記録は買受け後に直ちに作成し、後日まとめて記録することを前提にしない運用にしておくことが重要です。
そして、本人確認記録・取引記録とも、保存期間は単なる「3年」ではなく、それぞれの買受日から3年間です。
本人確認や取引記録だけでなく、古物商、産業廃棄物、ヤード規制など、金属スクラップ事業全体の許認可も確認したい場合は、全体記事で整理できます。

