「古物商許可を持っているから、銅線や金属スクラップもそのまま買い取れるのでは?」
金属スクラップの買取を行っている事業者の中には、このように考えている方もいるでしょう。
ココがポイント
2026年6月1日から、金属盗対策法に基づく特定金属くず買受業に関する制度が施行されています。
2026年9月時点では、特定金属くずの買受けを営業として行う場合、届出などの制度を確認する必要があります。現在、特定金属として指定されているのは銅です。
結論からいうと、古物商許可を持っているという理由だけで、特定金属くず買受業の届出が不要になるわけではありません。
確認するときに重要なのは、持っている許可証ではなく、実際に何を、どのような状態で買い取るのかです。
もっと詳しく
まず、その物が古物として扱う物なのか、それとも本来の用途では使用できない金属くずなのかを確認しましょう。
金属くずであれば、次に銅が重量または価格の2分の1以上を占めるか、さらに特定金属くずから除かれる物ではないかを確認します。
警察庁も、古物と特定金属くずは同じ物について概念上重複しない一方、同じ事業者が両方を扱うことはあり得るといっています。
警視庁:盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律等の解釈運用基準について(通達)
この記事では、古物商と特定金属くず買受業の違い、古物と金属くずを分ける考え方、銅の重量・価格基準、除外対象、切断された銅線やエアコン室外機の具体例まで、判断する順番に沿って解説します。
最後まで読むことで、自社で買い取っている物について、古物側を確認するのか、特定金属くず買受業の届出を確認するのかを整理できるようになります。
この記事のポイント
- 古物商許可があるだけでは、特定金属くず買受業の届出が不要とは判断できない
- 最初に確認するのは銅の割合ではなく、古物なのか金属くずなのか
- 2026年9月時点で特定金属として指定されているのは銅
- 「主として銅」とは、銅が重量または価格の2分の1以上を占める場合
- 古物に該当する物や、新品の製造工程で発生する端材などは対象から除かれる
- 銅線や室外機も、品名や「故障」という言葉だけでは判断しない
古物商許可があっても特定金属くず買受業の届出が不要とは限らない
まず押さえておきたいのは、古物商と特定金属くず買受業は別の制度だということです。
| 比較する点 | 古物商 | 特定金属くず買受業 |
|---|---|---|
| 根拠制度 | 古物営業法 | 金属盗対策法 |
| 手続 | 許可 | 届出 |
| 主な対象 | 古物 | 特定金属くず |
| 確認の中心 | 買い取る物が古物に該当するか | 買い取る物が特定金属くずに該当するか |
警察庁の解釈運用基準では、本来の目的に従って使用できる物は古物側で考え、金属くずである特定金属くずと古物が同じ物について重複することは概念上想定されないと整理されています。
一方、同じ事業者が両方を扱うことはあります。
例えば、
中古機械などを古物として買い取り、別の取引では対象となる銅くずを買い取る事業は考えられます。
したがって、
「古物商許可を持っているから大丈夫か」ではなく、「今回買い取る物は何に該当するのか」から判断する
ことが重要です。
古物か特定金属くずかは「許可証」ではなく買い取る物で判断する
では、実際の商品については何から確認すればよいのでしょうか。
最初に見るのは、銅が何%含まれているかではありません。
先に、
その物が古物なのか、それとも金属くずなのか
を確認します。
まず古物に該当する物かを確認する
ココに注意
古物営業法上の古物には、一度使用された物、使用されていなくても使用のために取引された物、それらに「幾分の手入れ」をした物などが含まれます。
警察庁は「幾分の手入れ」を、物品本来の性質・用途に変化を及ぼさない形で行う修理等としています。
また、社会通念上、本来の使用目的で使用できなくなった物は原則として古物に該当せず、単に所有者が「使えない」「不要だ」と考えているだけではなく、客観的な状態で判断するとしています。
そのため、
正常に動く=古物
故障している=金属くず
という単純な二択では判断できません。
ココがポイント
「故障品」「ジャンク品」「スクラップ」と呼んでいるという理由だけで判断しないで、客観的に、本来の使用目的で使用できる状態かを確認することが重要です。
古物でなければ金属くずに該当するかを確認する
ココがポイント
古物側ではない場合は、次に金属盗対策法上の「金属くず」に該当するかを確認します。
警察庁は、加工などによって金属製物品そのものの状態が変化したり、物品から分離されたりして、本来の用法に従って使用することができなくなった物を金属くずとして整理しています。
例えば、
切断されて電線として使用できなくなった物や、破壊されて室外機として使用できなくなった物などでは、金属くず側を確認します。
ただし、
金属くず=特定金属くず
ではありません。
金属くずに該当することを確認した後で、次に材質と構成を見ます。
2026年9月時点の特定金属は「銅」
金属くずに該当することが分かったら、次に何の金属で構成されているかを確認します。
さらに詳しく
2026年9月時点で、特定金属として指定されているのは銅です。
警察庁の解釈運用基準では、現時点では銅以外の金属を特定金属として追加指定していないとされています。
そのため、鉄だけ、アルミだけで構成されている金属くずだからという理由で、現在の特定金属くず買受業の対象になるわけではありません。
一方で、銅が少しでも入っていれば対象になるというわけでもありません。
次に、「主として銅により構成されているか」を確認します。
特定金属くずは銅が「重量または価格の2分の1以上」か確認する

ココがポイント
警察庁は、「主として特定金属により構成されている」とは、物品の重量または価格の2分の1以上を特定金属が占めていることとしています。
つまり、
重量の50%以上が銅
または、
価格の50%以上を銅が占める
場合です。
ここで特に重要なのは、
重量と価格の両方を満たす必要はない
という点です。
重量が半分未満でも対象になる場合がある
参考
例えば、ある金属くずについて、重量に占める銅が40%、価格に占める銅が70%だったとします。
この場合、重量だけを見れば2分の1未満ですが、価格では2分の1以上です。
したがって、
「銅の重量が半分未満だから対象外」
とは判断できません。
警察庁は、エアコン室外ユニットのくずについても、銅の重量が全体の2分の1以上でなくても、価格では2分の1以上を占める場合には特定金属くずに該当すると説明しています。
ここまで確認したら、次に対象から除かれる物ではないかを確認します。
銅を多く含んでも特定金属くずから除かれる物がある

「銅が重量または価格の2分の1以上なら、必ず特定金属くずになる」
わけではありません。
古物に該当する物
古物に該当する物は、特定金属くずから除かれます。
そのため、判断するときは最初に銅の割合を調べるのではなく、まず古物なのか金属くずなのかを確認するという順番が重要です。
新品を製造する工程で発生した端材
新品の金属製品などを製造する段階で発生する金属くず、いわゆる製造端材についても、特定金属くずから除かれています。
つまり、
銅を多く含む金属くず=すべて届出対象
ではありません。
古物か特定金属くずかを6ステップで確認する
ここまでの内容を、自社の商品へ当てはめる順番に整理します。
STEP1 古物に該当するか
本来の用途で使用する物なのかを確認します。「動く・動かない」だけでは判断しません。
STEP2 金属くずに該当するか
加工・破壊・切断・分離などによって、本来の用途で使用できない状態になっているか確認します。
STEP3 銅を含んでいるか
2026年9月時点の特定金属は銅です。
STEP4 銅が重量または価格の2分の1以上か
重量または価格のどちらか一方が2分の1以上であれば、構成基準を満たします。
STEP5 除外対象ではないか
古物や、新品の製造工程で発生する端材などに該当しないか確認します。
STEP6 業として買い受けるのか
対象となる特定金属くずの買受けを営業として行うのであれば、特定金属くず買受業の届出を確認します。
この順番で考えると、
「古物商許可があるから大丈夫か」
ではなく、
「自社で買い取っているこの物は何に当たるのか」
という形で整理できます。
切断された銅線は古物?特定金属くず?
ここからは、判断を迷いやすい具体例で確認します。
まずは電線・銅線です。
電線として本来の用途で使用する物で、古物に該当するのであれば、古物側を確認します。
一方、大阪府警は、切断された銅線について、本来の用途では使用できない物と解釈されるとして、特定金属くずの具体例を示しています。Osaka Prefectural Police
判断の順番は、
電線として使用する物か
↓
切断等によって金属くずになっているか
↓
銅の構成基準を満たすか
です。
したがって、
「銅線だから必ず特定金属くず」
とは判断しません。
エアコン室外機は古物?特定金属くず?

室外機も、古物と特定金属くずの判断を迷いやすい品目です。
「室外機だから古物」
でも、
「故障した室外機だから特定金属くず」
でもありません。
まず室外機として本来用途で使用できる状態か確認する
最初に、その室外機が客観的に本来の用途で使用できる物なのか、それとも破壊等によって金属くずの状態になっているのかを確認します。
大阪府警は、破壊された室外機を特定金属くずの具体例として示しています。Osaka Prefectural Police
ただし、「故障している」という言葉だけで直ちに金属くずと決めるのではなく、実際の状態を確認する必要があります。
金属くずなら銅の重量または価格を見る
室外機が金属くずに該当する場合は、次に銅の構成を確認します。
警察庁は、エアコン室外ユニットのくずについて、銅の重量が2分の1以上でなくても、価格では2分の1以上を銅が占める場合には特定金属くずに該当すると説明しています。National Police Agency
そのため、
「鉄やアルミの方が重いから対象外」
と重量だけで判断することはできません。
室外機では、
古物か金属くずか
↓
金属くずなら銅が重量または価格の2分の1以上か
という二段階で整理すると分かりやすくなります。
銅線・室外機の公的な具体例を確認したい場合だけ、次の公式ページを参照してください。
特定金属くずに該当したら、次は届出手続を確認する
ここまで確認して、自社が特定金属くずを業として買い受けると整理できた場合は、対象判定は一度終了です。
次に必要なのは、実際の届出手続です。
これから特定金属くず買受業を始める場合は、必要書類・期限・提出先・図面などを確認してください。
届出がすでに済んでおり、実際に買取を始める段階であれば、次に本人確認・本人確認記録・取引記録の運用を確認します。
一方、すでに対象となる営業をしているのに未届出の場合は、これから営業を始める事業者とは状況が異なります。
この3つは読者の状況が異なるため、自分に当てはまるものだけ確認すれば十分です。
まとめ|古物商許可ではなく、買い取る物から判断する
古物商許可を持っているからといって、それだけで特定金属くず買受業の届出が不要になるわけではありません。
確認するときの中心は、持っている許可ではなく、実際に買い取る物の状態と構成です。
基本的には、
古物に該当するか
↓
金属くずに該当するか
↓
銅を含むか
↓
重量または価格の2分の1以上か
↓
除外対象ではないか
↓
業として買い受けるのか
という順番で整理します。
特に重要なのは、銅の基準が「重量または価格」の2分の1以上**であり、重量だけでは決まらないことです。
また、銅線や室外機についても、品名や「故障」という呼び方だけで判断せず、まず客観的に本来の用途で使用できる物なのかを確認してください。
金属スクラップ事業について、古物商・特定金属くずだけでなく、産業廃棄物やヤード規制なども含めて全体を確認したい場合だけ、次の記事へ進んでください。
よくある質問
古物商許可があれば特定金属くず買受業の届出は不要ですか?
一律にはいえません。
古物商許可の有無ではなく、実際に買い取る物が古物なのか、特定金属くずなのかを確認します。
同じ物について古物と特定金属くずが重複するという整理ではありませんが、同じ事業者が別々の商品として古物と特定金属くずの両方を扱うことはあります。
鉄くずやアルミくずも特定金属くずですか?
2026年9月時点で、特定金属として指定されているのは銅です。
現時点では鉄やアルミは特定金属として追加指定されていません。
故障した室外機は必ず特定金属くずですか?
一律には判断できません。
まず、客観的に本来の用途で使用できる状態なのか、金属くずの状態になっているのかを確認します。
金属くずに該当する場合は、さらに銅が重量または価格の2分の1以上を占めるかを確認します。
切断された銅線は特定金属くずですか?
大阪府警は、切断されて本来用途で使用できない銅線を、特定金属くずの具体例として示しています。
大阪府警:盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(金属盗対策法)の概要について
ただし、「銅線」という名称だけですべてを一律に判断するのではなく、物の状態 → 銅の構成 → 除外条件の順に確認します。


