法人の古物商許可で定款の事業目的はどうする?今の記載の確認方法と目的変更

法人で古物商許可を申請しようとして、

「定款に『古物商』と書いていないけれど大丈夫?」
「中古品の販売とは書いてある。このまま申請できる?」
「すでに会社を設立しているけれど、今から事業目的を変更する必要がある?」

と迷っていないでしょうか。

先に結論をいうと、「古物営業法に基づく古物商」という一文が書いてあるかどうかだけで判断するのではありません。

法人の古物商許可申請では、定款と登記事項証明書が添付書類になります。さらに山梨県警察の公式案内では、法人として古物営業を営む意思を確認するため、目的欄から古物営業を営む内容が読み取れる記載が必要とされ、「○○の買取、販売」「○○の売買」が例示されています。

つまり、最初にするべきなのは「正解の文例」を探すことではありません。

現在の事業目的と、これから実際に行う古物営業を照らし合わせることです。

なお、この記事は主にすでに設立されている株式会社・合同会社が、古物商許可申請前に現在の事業目的を確認する場面を想定しています。これから会社を設立する場合は、申請前の修正ではなく、会社設立時の事業目的設計から考える方が自然です。

古物商許可の定款・事業目的は、まずこの3段階で考える

現在の定款を見つけたら、いきなり「変更する・しない」を決める必要はありません。

まずは次のように整理すると、自社がどの段階にいるか分かりやすくなります。

現在の状態次に考えること
「○○の買取、販売」「○○の売買」など、予定する古物営業との関係を読み取りやすい申請予定地域の公式案内と照らし合わせ、必要な確認を進める
「各種物品の販売」「通信販売」など、古物営業との関係を自分では判断しにくいすぐ変更せず、現在の文言と予定事業を具体的にして申請先へ確認する
現在の目的と予定する古物営業との関係が読み取りにくい目的変更が必要かを確認し、必要なら定款変更・変更登記を検討する

これは許可の可否を判定する表ではありません。

重要なのは、文言だけを見て自己判断するのではなく、現在の目的と予定する事業との関係を整理することです。

法人申請では「現在の定款」と「登記事項証明書」を確認する

法人の古物商許可申請では、法人の定款と法人の登記事項証明書が添付書類として案内されています。警視庁では、その根拠として古物営業法施行規則第1条の3第3項第2号イを示しています。

そこで、まず確認したいのは「手元に定款があるか」だけではありません。

その定款が現在の会社の内容を反映しているかが重要です。

会社設立後に事業目的を変更している場合、会社設立時に作った原始定款だけを見ても、現在の目的を正しく把握できないことがあります。

現在の定款と登記事項証明書を手元に置き、

「今、会社の事業目的はどうなっているのか」

を確認するところから始めましょう。

古物商の事業目的には何と書く?公的な記載例

検索すると、

「古物営業法に基づく古物商」

という文言をよく見かけます。

このような表現を検討すること自体に問題はありませんが、この一文だけが唯一の記載方法であると考える必要はありません。

山梨県警察は、法人の目的欄について「古物営業を営む」旨を読み取れる記載が必要としており、具体例として「○○の買取、販売」「○○の売買」を掲載しています。

したがって、少なくとも公的な案内上、

「古物商」という単語そのものが入っているかだけを見るのではなく、目的欄から予定する古物営業の内容を読み取れるかを見る

という考え方ができます。

ただし、ここには重要な注意点があります。

山梨県警察の例を、そのまま全国一律の許可基準へ置き換えることはできません。

「この文章なら全国どこでも必ず申請できる」

「この単語がなければ必ず変更が必要」

という一覧表を作るより、自社の文言と実際に予定している事業をセットで確認する方が安全です。

文例ではなく「実際に何をする会社なのか」から確認する

たとえば、自社が中古家電を仕入れて販売する予定なのであれば、「中古品を扱う会社」という抽象的なイメージだけで考えず、

何を取り扱うのか、何を買い取るのか、何を販売するのか、誰から仕入れて誰へ販売するのか、といった予定事業を整理します。

そのうえで、現在の事業目的を見ます。

ここで大事なのは、

文例との文字列比較ではなく、現在の目的と実際の事業との関係を見ること

です。

公的な記載例と一字一句違うからといって、それだけで変更が必要とは判断できません。

反対に、意味の広そうな表現があるからといって、「これなら古物商許可でも問題ない」と自己判断するのも避けた方がよいでしょう。

文例は、答えそのものではありません。

自社の現在の目的を確認するための比較材料として使います。

ネット販売と「古物競りあっせん業」は別に考える

中古品をインターネットで販売する予定の方は、「古物競りあっせん業」という文言を見ることがあります。

ここは混同しやすい部分です。

大阪府警察は、古物競りあっせん業者について、いわゆるインターネット上のオークションサイトの運営者と説明しています。また、自ら古物を売買するのではなく、売買の場を提供する点で、古物商がウェブサイト等で古物を取引する場合とは異なると明示しています。

したがって、

「ネットで中古品を売るから、古物競りあっせん業も事業目的に入れる」

と機械的に考えるのではなく、自社が行う事業の実態から整理しましょう。

定款に古物営業の記載がない・判断しにくい場合はどうする?

現在の目的を確認しても、

「この内容で古物営業を行うことが読み取れるのか分からない」

という場合があります。

そのときは、いきなり目的変更へ進むのではなく、確認する質問を具体化します。

たとえば、

「この定款で大丈夫でしょうか?」

だけではなく、

「現在の目的は○○です。今後は△△の中古品を買い取り、販売する予定ですが、この事業目的について古物商許可申請前に変更が必要でしょうか」

というところまで整理します。

この形にするためには、現在の目的の文言、取り扱う予定の商品、予定する取引内容、主たる営業所の予定地が分かれば十分です。

自分で答えを出せなくても、何を確認すればよいかは分かる状態になります。

「確認書を出せば変更しなくてよい」と一律に考えない

インターネット上には、事業目的に古物営業の記載がない場合でも「確認書」などを提出すれば申請できるという説明もあります。

しかし、今回確認した公的情報からは、確認書を提出すれば全国共通で目的変更をしなくてもよい、という取扱いまでは確認できません。

そのため、確認書を全国一律の代替手段として考えない方が安全です。

申請予定地域でそのような書面の案内を受けた場合には、

「その書面は古物商許可申請上どのような意味を持つのか」

「会社側の定款変更や変更登記も別途必要なのか」

を分けて確認してください。

古物商許可の申請上どう扱われるかと、会社の定款・登記をどう整えるかは別の論点です。

目的変更が必要な場合は、定款の文章を書き換えるだけでは終わらない

確認した結果、事業目的を追加・変更する必要がある場合は、保存してあるWordやPDFの定款を書き換えるだけではありません。

会社として定款変更の手続きを行い、目的は登記事項でもあるため変更登記を行います。

株式会社では、定款変更には原則として株主総会の特別決議が必要です。合同会社では、定款に別段の定めがある場合を除き、原則として総社員の同意が必要です。

また、法務局は株式会社・合同会社ともに「目的の変更」の変更登記手続きを案内しています。

変更登記は「変更から2週間以内」

会社・法人の登記事項に変更があった場合、変更登記は原則として登記の事由が発生したときから本店所在地で2週間以内とされています。

ここで注意したいのは、

2週間=登記が完了するまでの期間

ではないことです。

2週間は変更登記を申請すべき期間です。

「定款の目的変更には2週間かかる」と読み替えないようにしてください。

目的変更の登録免許税は1件3万円

法務局が公開している株式会社の目的変更登記申請書の記載例では、登録免許税は3万円とされています。国税庁の登録免許税の税額表でも、会社の「登記事項の変更、消滅または廃止の登記」は申請件数1件につき3万円です。

これも、

「定款変更にかかる総費用が3万円」

という意味ではありません。

3万円は変更登記にかかる登録免許税です。

専門家へ依頼する場合の報酬や、その他の費用とは分けて考えてください。

設立時の定款認証をやり直す必要はない

すでに会社が成立した後に定款を変更する場合、公証人による定款認証を再度受ける必要はありません。

日本公証人連合会も、公証人の認証が必要なのは設立当初の定款で、その後の定款変更では認証は必要ないと説明しています。また、合同会社などの持分会社については、設立時から定款認証を必要としません。

ただし、

再認証が不要
=
定款変更や変更登記も不要

ではありません。

ここは別々に考えましょう。

古物商許可申請前の確認は、この5ステップで進める

  1. 現在の定款を確認する。 設立時の定款だけではなく、現在の内容を反映しているかを確認します。
  2. 登記事項証明書の目的を確認する。 現在登記されている事業目的を把握します。
  3. 予定する古物営業を具体化する。 何を買い取り、何を販売し、どのような取引をするのかを整理します。
  4. 現在の目的と予定事業を照らし合わせる。 文例との完全一致ではなく、予定する古物営業との関係を確認します。
  5. 判断できない部分だけ確認する。 現在の文言と予定事業を具体的にして、申請予定地域の公式案内や管轄窓口で確認します。

警視庁では、古物商許可の申請場所を主たる営業所の所在地を管轄する警察署と案内しています。登記上の本店と古物営業上の主たる営業所が必ず一致するとは限らないため、「本店所在地の警察署」と決めつけず、実際の主たる営業所を基準に申請予定地域の公式情報を確認してください。

結局、古物商の定款・事業目的で一番大切なこと

古物商許可のために定款を確認すると、

「正しい文例は何だろう」

という疑問から入りがちです。

しかし、設立済み法人の場合は、文例を探すより先に、

今の会社の事業目的は何か

そして、

これから実際に何をするのか

を確認する方が重要です。

この2つが整理できれば、

そのまま申請準備を進めるために何を確認するか、

申請先へ文言を確認した方がよいのか、

目的変更を検討する必要があるのか、

という次の行動が見えてきます。

文例は「コピーする答え」ではなく、自社の状態を確認する材料として使いましょう。

よくある質問

定款に「古物商」という文字がなければ、必ず目的変更が必要ですか?

「古物商」という文字がないことだけで、一律に目的変更が必要とは判断できません。

山梨県警察では「○○の買取、販売」「○○の売買」といった記載も例示されています。まず現在の目的から予定している古物営業を読み取れるかを確認し、判断しにくければ申請予定地域へ確認してください。

個人で古物商許可を申請する場合も定款が必要ですか?

定款は法人の書類です。警視庁の申請案内でも、法人申請では定款と登記事項証明書が必要書類として挙げられていますが、個人許可申請の必要書類には法人の定款は含まれていません。

これから会社を設立する場合も同じ考え方ですか?

基本になるのは「実際に予定する事業を目的へ反映する」という点ですが、設立前であれば、すでにある目的を修正するのではなく、会社設立時から予定する古物営業を踏まえて事業目的を設計することができます。

そのため、設立済み法人向けのこの記事とは分けて考える方が分かりやすいでしょう。

自分で進めるか、専門家へ相談するか

現在の事業目的と予定する古物営業との関係を整理でき、申請予定地域の公式情報を自分で確認できるのであれば、そのまま申請準備を進める方法があります。

一方、現在の文言の読み方が分からない、目的変更が必要か判断しにくい、定款変更・変更登記・古物商許可申請をどの順番で整理すればよいか迷う場合は、個別に確認できる専門家へ相談する方法もあります。

相談する場合には、現在の定款、登記事項証明書、予定する商品・取引内容、主たる営業所の予定地を用意しておくと、問題を具体的に整理しやすくなります。

当事務所への相談を検討される場合は、古物商許可や定款に関する実際の対応業務をご確認のうえ、お問い合わせください。

自分で進める場合も、相談する場合も、最初の一歩は同じです。

文例を探す前に、現在の目的と、これから行う事業を整理する。

そこから必要な確認へ進みましょう。

公式情報を確認する

古物商許可の法人申請に必要な書類や申請先は、警視庁の「古物商許可申請」で確認できます。
警視庁「古物商許可申請」

事業目的の公的な記載例は、山梨県警察の「古物営業申請」で確認できます。
山梨県警察「古物営業申請」

目的変更登記の申請様式は、法務局の商業・法人登記の申請書様式から確認できます。
法務局「商業・法人登記の申請書様式」

登録免許税については国税庁の税額表で確認できます。
国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」