古物商の立入検査では何を見られる?確認される内容と備え方

「古物商の立入検査では、実際に何を見られるのだろう」

「警察から連絡が来たけれど、何を準備すればいいのか分からない」

「古物台帳や本人確認の方法に不備がないか心配」

古物商許可を取得して営業していても、立入検査を経験したことがなければ、不安になるのは自然です。

先に結論をいうと、古物営業法上、警察職員は必要があると認めるとき、営業時間中に営業所や古物の保管場所などへ立ち入り、古物そのものや帳簿等を検査し、関係者へ質問することができます。

さらに、警察庁の最新の解釈運用基準では、立入検査は盗品等が古物取引市場へ流入していないかを確認するだけでなく、古物商の営業実態や、帳簿記載等を含む各種義務が守られているかを調査することも目的とされています。

そのため、立入検査への備えは「台帳だけ用意しておけばよい」というものではありません。

現在の営業実態と、許可・届出・在庫・取引記録・本人確認・表示などの運用が一致しているかを、日頃から確認できる状態にしておくことが基本です。

この記事では、「何を見られるのか」という疑問に答えたうえで、自分の営業では何を確認すればよいのか、実際に警察が来たらどう対応すればよいのかまで順番に整理します。

すでに立入検査の連絡を受けている方へ

すでに警察署から立入検査の連絡を受けている場合は、まず次の順番で整理すると状況を把握しやすくなります。

  1. 連絡を受けた日時・担当部署・担当者を確認する
  2. 現在の営業所や古物の保管場所を整理する
  3. 古物台帳・電子記録を実際に開いて確認する
  4. 現在行っている本人確認方法を整理する
  5. 許可取得後に営業所・管理者・URLなどを変更していないか確認する
  6. 分からない点や不備と思われる点をメモする

分からない内容を推測で取り繕うより、現在の状態を正確に把握することを優先してください。


古物商の立入検査では法律上、何を確認できる?

まず、「警察が法律上何を確認できるのか」と、「立入検査に備えて古物商が何を点検しておくべきか」は分けて考えると分かりやすくなります。

古物営業法第22条では、警察職員が必要があると認めるとき、営業時間中に一定の場所へ立ち入り、古物や帳簿等を検査し、関係者へ質問できるとされています。

整理すると、基本的な範囲は次のとおりです。

区分法律上の内容
立入りの対象営業所、仮設店舗、古物の保管場所、古物市場など
検査できるもの古物、帳簿等
できること関係者への質問
実施時間営業時間中
警察職員身分を証明する証票を携帯し、関係者へ提示する

警察庁の2026年5月14日付「古物営業法等の解釈運用基準について」では、立入検査は証票の交付を受けた警察職員が行い、営業所等の責任者またはこれに代わる者の立会いを得て行うことも示されています。

また、この立入検査の権限自体は、犯罪捜査のために認められたものではないとされています。

したがって、

「警察が来た=違反が確定している」

と考える必要はありません。

一方で、個別の事業者に対してなぜ立入検査が行われるのかを、外部から一律に判断することもできません。

「定期的な検査だから問題ない」「必ず何か疑われている」と決めつけず、現在の営業状態を確認したうえで対応することが大切です。

「古物の保管場所」は営業所だけとは限らない

ここは見落としやすいポイントです。

警察庁の運用基準では、「古物の保管場所」について、現に古物が置かれている場所として説明されています。

そのため、「許可上の営業所だけを整理しておけばよい」と考えるのではなく、実際に古物をどこで保管しているのかも整理しておく必要があります。


立入検査に備えて確認したい6つのポイント

法律上の直接的な検査対象を理解したら、次は自分の営業へ引き直します。

日頃のセルフチェックでは、次の6つを確認すると整理しやすくなります。

確認ポイント自分で確認したいこと
古物・在庫と保管場所現在どこに何を保管しているか把握できているか
古物台帳・取引記録必要な取引を正しく記録し、保存しているか
本人確認現在の買取方法に合った確認方法になっているか
営業所・管理者・標識現在の営業実態と届出・表示にずれがないか
許可取得後の変更必要な変更手続を済ませているか
ネット取引URLの届出やウェブ上の必要表示を確認しているか

これは、全国すべての立入検査で必ず同じ順番に確認される「検査票」ではありません。

立入検査で慌てないために、現在の営業を自分で点検するための軸です。


1.古物・在庫と保管場所を整理する

古物営業法第22条では、帳簿だけでなく古物そのものも検査対象として明記されています。

そのため、まずは現在扱っている古物について、

  • 何を取り扱っているか
  • どこに保管しているか
  • 帳簿上の取引と実際の在庫・取引を確認できる状態か

を整理しておきましょう。

特に営業所とは別の場所に古物を保管している場合は、「どこに何を置いているのか」を把握しておくことが大切です。

立入検査への備えというと書類に目が向きがちですが、実際の営業と記録が対応していることが重要です。


2.古物台帳は「あるか」ではなく、中身と保存状態を確認する

立入検査への備えで重要なのが、古物台帳などの取引記録です。

記録義務の対象となる取引では、取引年月日、古物の品目・数量・特徴、相手方の住所・氏名・職業・年齢、本人確認の措置に関する事項などを記録します。

警察庁の解釈運用基準では、必要な記録は対象となる取引について**「その都度」**行うこととされています。

つまり、対象となる古物を受け取ったり譲り渡したりするたびに記録する必要があり、1週間分や1か月分をまとめて後から記載するという考え方ではありません。

紙と電子記録では3年間の起算点が違う

記録は紙の帳簿だけに限らず、要件を満たせば電磁的方法でも行えます。

ただし、保存期間は「3年間」という数字だけで覚えないようにしてください。

管理方法保存期間・状態
帳簿等最終の記載をした日から3年間、営業所等に備え付ける
電磁的方法による記録その記録をした日から3年間保存し、営業所等で直ちに書面に表示できる状態にする

紙と電子では、3年間の起算点の表現が異なります。

また、帳簿等を毀損・亡失した場合や電子記録が滅失した場合には、直ちに営業所等の所在地を管轄する警察署長へ届け出る規定があります。

帳簿やデータが見当たらないからといって、検査に備えて記憶だけで内容を作るのではなく、

  • 何が失われているのか
  • どの期間・取引が対象なのか
  • 残っている資料は何か

を整理して必要な対応を確認しましょう。


3.本人確認は「身分証のコピーがある」だけでは足りない場合がある

古物を買い受ける場合などには、適用除外に該当する場合を除き、相手方の真偽を確認するための措置が必要です。

特に注意したいのが、インターネットや郵送などによる非対面取引です。

警視庁は、非対面取引について、運転免許証等のコピーや住民票の写しを送ってもらうだけでは足りないと明示しています。非対面取引では、法令で定められた方法によって、申告された住所・氏名等が真正なものか、なりすましではないかを確認する必要があります。

したがって、

「免許証の画像を保存しているから問題ない」

と判断するのではなく、

現在の買取方法と、実際に行っている本人確認方法をセットで確認すること

が重要です。

店舗での対面買取、宅配買取、オンライン取引など複数の方法を使っている場合は、それぞれ分けて整理してみてください。


4.「1万円未満なら本人確認も記録も不要」と一律に考えない

古物の買受けでは、物品の対価の総額が1万円未満の場合、本人確認や帳簿等への記載義務が原則として免除される場面があります。

ここでまず注意したいのは、

「1万円以下」ではなく「1万円未満」

という点です。

さらに、総額1万円未満であっても、本人確認や帳簿等への記載が必要となる古物があります。

現行の制度を整理すると、次の7区分です。

  • 自動二輪車・原動機付自転車(一定の部分品を含む)
  • 家庭用コンピュータゲーム用のプログラムを記録した物
  • CD・DVDなど、光学的方法により音や映像を記録した物
  • 書籍
  • エアコンディショナーの室外ユニット・電気温水機器のヒートポンプ
  • 電線
  • 金属製のグレーチング

後ろの3区分は、2025年10月1日施行の古物営業法施行規則改正で追加されました。

したがって、

「少額だから本人確認や記録はいらない」

と金額だけで判断するのは危険です。

まず取扱品を確認し、そのうえで取引金額と必要な対応を照らし合わせましょう。


5.営業所・管理者・標識・ウェブ上の表示を現在の状態と照合する

古物商には、営業所ごとの管理者の選任や、営業所等への標識掲示などの義務があります。

許可を取得した当時は問題がなくても、その後、

  • 管理者が変わった
  • 営業所を移転した
  • 営業所を追加・廃止した
  • 店舗だけでなくインターネットでも取引するようになった

といった変化があれば、現在の営業実態と届出内容・表示内容にずれが生じる可能性があります。

ネット取引を行っている古物商については、ウェブサイト上の表示も確認しておきましょう。

一定の場合には、

  • 氏名または名称
  • 許可した公安委員会の名称
  • 許可証番号

をウェブサイト上で公衆の閲覧に供する必要があります。

「許可を取得した当時どうだったか」ではなく、現在どのように営業しているかを基準に確認することが重要です。


6.許可取得後に変更した事項がないか洗い出す

古物商の変更手続は、すべて同じ期限ではありません。

一定の営業所の名称・所在地等の変更については、変更の日の3日前までに行う事前届出があります。

一方、事後届出の対象となる一定の変更については原則として変更の日から14日以内で、届出書に登記事項証明書を添付する必要がある場合には20日以内となる扱いがあります。

そのため、「変更届を出したかどうか」だけではなく、

  1. 許可を取得してから何を変更したか
  2. その変更は事前届出か事後届出か
  3. 必要な手続を実際に済ませたか

という順番で確認すると整理しやすくなります。

具体的な変更事項によって必要な手続は異なるため、該当する変更がある場合は、最新の警察公式情報や管轄警察署で確認してください。


立入検査前のセルフチェック

ここまでを、実際の確認行動へ落とし込むと次のようになります。

営業実態

  • 現在の営業所を説明できる
  • 古物を保管している場所を把握している
  • 店頭・出張・ネットなど現在の取引方法を整理している
  • 実際に扱っている古物と営業内容を把握している

古物台帳・記録

  • 記録が必要な取引を記録している
  • 必要な事項が入っている
  • 対象取引についてその都度記録している
  • 保存期間を確認している
  • 電子記録なら必要なときに書面へ表示できる

本人確認

  • 買取方法ごとに本人確認方法を整理している
  • 非対面取引で身分証コピーだけに依存していない
  • 1万円未満の例外対象品を金額だけで判断していない

許可・届出・表示

  • 管理者や営業所の変更を確認した
  • 許可取得後の変更事項を洗い出した
  • 必要な変更届を確認した
  • 標識を確認した
  • ネット取引をしている場合はウェブ上の表示を確認した

すべてにチェックを付けること自体が目的ではありません。

途中で、

「これは自分の場合、どう扱うのだろう」

という項目が見つかれば、そこが次に確認すべきポイントです。


実際に警察の立入検査が来たらどう対応する?

実際に警察職員が来ても、必要以上に慌てる必要はありません。

警察庁の最新運用基準では、立入検査について、

  • 証票の交付を受けた警察職員が行う
  • 証票を携帯し、関係者へ提示する
  • 営業時間中に行う
  • 営業所等の責任者またはこれに代わる者の立会いを得て行う

ことが示されています。

実際の対応では、

  1. 用件と証票を確認する
  2. 営業内容・帳簿管理等を説明できる担当者が対応する
  3. 求められた古物や帳簿等を確認できる状態にする
  4. 分からないことを推測で答えない
  5. 指摘や確認事項があれば内容を記録する

という順番で考えるとよいでしょう。

立入りや帳簿等の検査を拒否・妨害した場合

古物営業法第35条では、第22条第1項による立入りまたは帳簿等の検査を拒み、妨げ、または忌避した場合、10万円以下の罰金が定められています。

そのため、

「よく分からないから対応しない」

という方向ではなく、何を求められているのかを確認しながら対応することが大切です。

ただし、この10万円以下の罰金を、

「警察職員からの質問に一つ答えなかった場合にも同じように適用される」

などと、法律上別の行為へ広げて考えないようにしてください。


不備や違反を指摘されたら、すぐ許可取消しになる?

立入検査で何らかの問題を指摘されたからといって、その時点で直ちに古物商許可が取り消されるわけではありません。

反対に、

「初めてだから注意だけで終わる」

「小さな不備だから問題ない」

とも一律には言えません。

重要なのは、何を指摘され、どのような対応を求められているのかを区別することです。

その場の注意と、法律上の「指示」は区別する

古物営業法第23条には、一定の場合に公安委員会が古物商等へ必要な措置をとるよう**「指示」**できる規定があります。

警察庁の解釈運用基準では、この「指示」は行政処分であり、理由や内容などを記載した公安委員会名の文書によって行うとされています。

そのため、現場で何らかの注意を受けたことと、法令上の「指示」を受けたことは同じではありません。

営業停止・許可取消しにも条件がある

古物営業法第24条には、一定の法令違反などについて、許可取消しや6か月を超えない範囲で営業の全部または一部の停止を命じることができる規定があります。

ただし、実際にどの処分になるかは違反内容や個別事情によって異なります。

したがって、

  • 初回なら必ず注意だけ
  • この程度なら処分されない
  • 不備が一つあれば必ず営業停止
  • 指摘→指示→営業停止→取消しの順番で必ず進む

といった固定的な理解は避けましょう。

指摘を受けた場合は、

  • 何が問題とされたのか
  • どの状態へ是正する必要があるのか
  • 期限が示されているか
  • 報告を求められているか
  • 別途、変更届等の手続が必要なのか
  • 正式な行政処分なのか、それ以外の指摘なのか

を整理することが重要です。


古物商の立入検査についてよくある質問

立入検査は事前連絡なしで来ることがありますか?

全国の古物商について、

「必ず事前連絡がある」

「必ず抜き打ちで行われる」

とする一律のルールは、今回確認した公的資料では確認できません。

そのため、事前連絡を前提に準備するのではなく、日頃から必要な記録や届出を整理しておく方が確実です。

実際に警察署から連絡を受けた場合は、日時・担当部署・担当者などを確認しておきましょう。

立入検査は何年に1回来ますか?

全国一律に「○年に1回」と決まっていることを示す公的根拠は、今回確認した資料では確認できません。

民間記事や個人の経験談にある頻度を、全国共通のルールとして自分の営業へ当てはめないようにしてください。

自宅を営業所にしている場合も対象になりますか?

古物営業法第22条では、営業所だけでなく、古物の保管場所などへの立入りも規定されています。

したがって、自宅で営業しているという理由だけで立入検査と無関係になるわけではありません。

一方で、

「自宅ならすべての場所が無条件に検査対象になる」

という意味でもありません。

まず、自宅のどの部分を営業所として使い、どこに古物を保管しているのかを整理してください。

ネット専門の古物商なら立入検査は関係ありませんか?

インターネットだけで取引している場合でも、古物商として必要となる本人確認、取引記録、届出・表示等がなくなるわけではありません。

また、営業所や古物の保管場所などは法律上の立入り対象になり得ます。

ネット取引中心の古物商では、特に、

  • 非対面本人確認
  • 古物台帳・電子記録
  • URL等の変更届
  • ウェブサイト上の必要な表示

を確認しておくことが重要です。


立入検査への備えは「検査対策」より、今の営業を説明できる状態にすること

古物商の立入検査について、「何を見られるのか」を知ることは大切です。

ただし、本当に重要なのは検査項目を暗記することではありません。

今、自分がどのような方法で古物を仕入れ、どこに保管し、どのように本人確認・記録・販売を行っているのかを整理し、その運用が現在のルールと合っているか確認できる状態を作ることです。

まずは、

  • 古物・在庫と保管場所
  • 古物台帳・電子記録
  • 本人確認方法
  • 営業所・管理者・標識
  • 許可取得後の変更
  • ネット取引時の届出・表示

を順番に確認してください。

確認していくと、

「宅配買取の本人確認方法が現在のルールに合っているか分からない」

「以前営業所を変更したが、必要な届出をしたか分からない」

「一部の台帳データが見つからない」

など、漠然とした不安が具体的な確認事項に変わってきます。

そこまで整理できれば、自分で公式情報を確認する場合も、管轄警察署へ問い合わせる場合も、専門家へ相談する場合も、次に何を確認すべきかが明確になります。

専門家へ相談する場合は、

  • 古物商許可証
  • 現在の営業所・保管場所
  • 主な取扱品
  • 買取・販売方法
  • 本人確認方法
  • 帳簿・電子記録の管理方法
  • 許可取得後の変更事項
  • 警察から連絡・指摘を受けている場合はその内容

を整理しておくと相談しやすくなります。

立入検査を必要以上に怖がるのではなく、まずは現在の営業を正確に説明・確認できる状態にすることから始めましょう。

主な公的根拠

  • 警察庁「古物営業法等の解釈運用基準について(通達)」(2026年5月14日)
  • 古物営業法
  • 古物営業法施行規則
  • 警視庁「非対面取引における確認の方法」
  • 警視庁「古物営業法施行規則の一部改正について(令和7年10月1日施行)」
  • 警視庁「書換申請・変更届出」