古物商の管理者は兼任できる?複数営業所の例外条件と確認方法

「2店舗目を出したいけれど、今の管理者を新しい営業所の管理者にもできないだろうか」

「営業所を増やすたびに、別の管理者を用意しなければならないのか」

複数の営業所で古物営業を行う場合、このような疑問が出てきます。

結論からいうと、古物商の管理者は営業所ごとに1人選任するのが基本です。

ただし、同じ人が複数営業所の管理者を兼任することが一律に禁止されているわけではありません。

警察庁の現行の解釈運用基準では、複数の営業所等が近接しており、同じ人が双方を実質的に統括管理でき、管理者の業務を適正に行える場合には、同一人が複数営業所の管理者を兼任することも許容されています。

大切なのは、「何km離れているか」だけで判断しないことです。

この記事では、複数営業所で管理者を兼任できる条件と、自分の場合に何を整理して確認すればよいのかを解説します。

この記事のポイント

1.管理者は営業所ごとに選任するのが基本
古物営業法では、営業所または古物市場ごとに管理者を1人選任する仕組みになっています。警察庁の解釈運用基準でも、営業所等ごとの選任と常勤が基本として示されています。

2.一定の場合は複数営業所を同じ人が兼任できる
近接しているだけでは足りず、双方を実質的に統括管理でき、管理者業務を適正に行える必要があります。

3.警察庁の現行基準には「○km以内」などの数値は示されていない
距離だけで自動的に兼任可否が決まる制度として説明するのは適切ではありません。

4.自分の場合は「位置関係+実際の管理体制」を整理する
判断が難しい場合は、誰がどのように双方を管理するのかまで具体化して確認することが重要です。

古物商の管理者は複数営業所で兼任できる?

古物営業法第13条では、古物商または古物市場主は、営業所または古物市場ごとに、その業務を適正に実施するための責任者として管理者を選任することが定められています。

そのため、まず出発点になるのは、

営業所ごとに管理者を選任する

という考え方です。

ただし、「営業所が2つなら必ず別人を2人用意しなければならない」という意味ではありません。

警察庁の解釈運用基準では、管理者はそれぞれの営業所等に常勤して管理者業務に従事できる状態を基本としながら、例外として、

複数の営業所等が近接しており、双方を実質的に統括管理でき、管理者の業務を適正に行える場合

には、同一人による複数営業所の兼任も許容しています。

つまり、

状況考え方
1つの営業所に管理者を置く基本となる形
同じ人が複数営業所を管理する一定条件を満たせば兼任の余地がある
営業所同士が近い近いだけでは足りない
○km・○分以内だから大丈夫と判断する警察庁の現行基準にはそのような数値は示されていない

という整理になります。

「管理者の兼任」には2つの意味がある

「古物商の管理者を兼任できるか」と調べると、異なる2つの話が混ざっていることがあります。

一つは、古物商本人や法人の代表者・役員が、その営業所の管理者も務めるケースです。

警察庁の解釈運用基準では、古物商等自身がその営業所等の業務を実質的に統括管理できる場合には、自らを管理者として選任することも許容されています。

もう一つが、今回の記事で中心となる、同じ人が2つ以上の営業所の管理者を務めるケースです。

たとえば、社長自身が1店舗目の管理者になれるとしても、

「社長だから2店舗目も当然に兼任できる」

ということにはなりません。

複数営業所間の兼任では、次の条件を別に確認します。

複数営業所の管理者を兼任するときの3つの条件

1.複数の営業所等が近接している

まず、複数の営業所等が近接していることです。

ここで注意したいのは、警察庁の現行基準の管理者に関する箇所には、

「500m以内」
「徒歩5分以内」
「車で10分以内」

といった数値が示されていないことです。

したがって、

「同じビルだから必ず大丈夫」

「隣の店舗だから自動的に兼任できる」

「ネットで見た距離の目安以内だから問題ない」

と決めつけるのは避けましょう。

位置関係は重要ですが、それだけでは結論は決まりません。

2.双方の営業所等を実質的に統括管理できる

次に、同じ人が双方の営業所等を実質的に統括管理できることです。

警察庁の解釈運用基準では、管理者は、営業所等の業務を統括管理し、従業者等を指揮監督し、古物営業関係法令を守らせて業務を適正に実施させられる者でなければならないとされています。

つまり、管理者は単に申請書へ名前を書くための人ではありません。

営業所同士が近くても、

実際には片方の営業所しか管理できない

のであれば、「近い」という事情だけで兼任できるとはいえません。

3.管理者の業務を適正に行える

さらに、複数営業所を兼任した状態でも、管理者としての業務を適正に行えることが必要です。

そのため、兼任を考えるときの問いは、

「同じ人の名前を2店舗に置けるか」

ではなく、

「その人が2店舗について管理者としての責任を現実に果たせるか」

です。

この視点を持つと、「店舗同士が何km離れているか」だけでは判断できない理由が分かります。

兼任できるか確認するときは「近さ×管理実態」で考える

自分のケースへ当てはめるときに、最も重要なのはこの部分です。

兼任できるかどうかを考えるときは、

近接しているか

だけではなく、

実際に双方を統括管理できる体制か

までセットで整理します。

「近いか、遠いか」という一本の物差しではなく、位置関係と管理実態の両方を見ると考えると分かりやすいでしょう。

自分の場合は、この順番で整理する

STEP1 対象となる営業所を明確にする

まず、

  • 各営業所の所在地
  • 営業所同士の位置関係
  • 現在の管理者
  • 新しく誰を管理者にしようとしているのか

を整理します。

「近いと思う」という感覚ではなく、どの営業所とどの営業所の兼任を考えているのかを具体化します。

STEP2 誰を兼任させるのか確認する

次に、兼任予定者を整理します。

個人事業主本人なのか、法人代表者・役員なのか、従業員なのか。

ただし、肩書が結論を決めるわけではありません。

重要なのは、その人が双方を実質的に統括管理できる立場と状態にあるかです。

STEP3 双方をどう管理する予定なのか具体化する

ここが兼任判断で最も重要です。

少なくとも、

  • 双方の営業所をどのように管理する予定なのか
  • 従業者等をどのように指揮監督するのか
  • それぞれの営業所について管理者の役割を果たせる体制なのか

を説明できるようにしておきます。

個別に警察へ確認するのであれば、実際の管理状況を説明する材料として、営業時間、兼任予定者の勤務予定、従業者の配置、営業所間の移動・連絡方法なども整理しておくと状況を伝えやすくなります。

ただし、これらが警察庁によって全国共通の固定審査項目として列挙されているわけではありません。

あくまで、

「本当に双方を実質的に統括管理できるのか」

を具体的に説明するための整理材料です。

STEP4 判断が微妙なら、事情を具体的に示して確認する

警察庁の現行基準には「近接」という表現がありますが、該当箇所に一律の距離数値はありません。

したがって、境界的なケースをインターネットの記事だけで自己判断するのは避けた方がよいでしょう。

各都道府県警の案内で古物営業の窓口を確認し、

「この2つの営業所について、この人がこのような体制で双方を管理する予定です」

と具体的な事情を示して確認する方が、単に「兼任できますか」と尋ねるより状況を伝えやすくなります。

2店舗目を出すなら、管理者は出店準備の段階で確認する

2店舗目など新しい営業所を予定している場合、店舗の準備が終わってから管理者を考えると、兼任できないことが分かったときに人員配置を見直す必要が生じます。

そのため、

出店場所と管理者候補が見えてきた段階で、兼任できる体制かを確認する

のがよいでしょう。

また、営業所を新設する場合には、管理者配置とは別に変更届出等の手続も関係します。たとえば警視庁では、営業所の新設に関する事前届出と、新設営業所の取扱古物の区分・管理者に関する届出を案内しています。

全国記事であるため、具体的な提出期限や様式は、実際に手続する地域の警察案内で確認してください。

まとめ|「何km以内か」ではなく「本当に両方を管理できるか」

古物商の管理者は、営業所ごとに選任するのが基本です。

一方で警察庁の現行基準では、

複数の営業所等が近接し、同じ人が双方を実質的に統括管理でき、管理者業務を適正に行える場合

には、同一人が複数営業所の管理者を兼任することも許容されています。

したがって、兼任を検討するときに最初から、

「何km以内なら大丈夫か」

という数字だけを探すのは適切ではありません。

確認するべきなのは、

どの営業所を、誰が、どのような体制で管理するのか

です。

営業所の所在地と位置関係、兼任予定者、実際の管理体制を整理し、それでも判断が難しい場合は、対象地域の古物営業窓口へ具体的な事情を示して確認しましょう。

管理者配置だけでなく、営業所追加に伴う手続全体も整理したい場合は、古物商手続を扱う行政書士へ相談することも選択肢です。