古物台帳をExcelで管理したいものの、
「どんな項目を作ればいい?」
「無料テンプレートをそのまま使って大丈夫?」
「1万円未満なら記録しなくていい?」
と迷っていないでしょうか。
古物営業法では、帳簿への記載だけでなく電磁的方法による記録も認められています。警察庁も、フラッシュメモリなどの記録媒体やコンピュータのハードディスク等への入力を例として示しています。したがって、必要な記録事項や保存条件を満たす形でExcelを利用することができます。
ただし、重要なのは「Excelを使っているか」ではありません。
自分の取引で必要な事項を、必要なタイミングで記録し、適切に保存できているかが重要です。
古物台帳のExcelテンプレート
今回のテンプレートには、次のシートを用意しています。
- 受入れ台帳
- 払出台帳
- 記入例
- 本人確認・記録義務の判断早見表
- 使い方・公式根拠
- 入力候補
通常の買受けについては、古物の種類と対価総額を入力すると、本人確認・買取記録について参考判定を表示するようにしています。
また、法定事項を中心とする欄、任意の管理欄、参考判定用の欄を見分けやすくしています。
注意点として、参考判定は最終的な法律判断を自動化するものではありません。 委託、交換、自分が売却した物品の買戻しなど、条件が異なる取引については個別に確認してください。
まず押さえたい4つのポイント
Excelを使い始める前に、次の4点を理解しておくと迷いにくくなります。
- 法定の記録事項と、自分で追加する管理項目を分ける
- 受入れと払出しでは記録義務の範囲が同じとは限らない
- 1万円未満でも本人確認・買取記録が必要な古物がある
- Excelで記録した場合も保存方法まで考える
特に注意したいのが、「1万円未満なら何も記録しなくてよい」と一律に判断しないことです。
古物台帳の法定記録事項
古物営業法第16条では、帳簿等へ記載・記録する事項として、次の内容が定められています。
| 分類 | 記録内容 |
|---|---|
| 取引日 | 取引の年月日 |
| 古物 | 品目・数量 |
| 特徴 | 古物の特徴 |
| 相手方 | 住所・氏名・職業・年齢 |
| 確認措置 | 法第15条第1項によりとった措置の区分等 |
ただし、すべての取引で常にこの全項目を記録するという意味ではありません。
古物の種類や取引金額、受入れか払出しかなどによって、本人確認・記録義務の範囲が変わります。
一方、
- 管理番号
- 仕入価格
- 販売価格
- 在庫状況
- 保管場所
- 社内備考
などは、Excel上で管理するために追加することができます。
「価格」や「管理番号」は、古物営業法第16条に掲げられた法定記録事項そのものではありません。
したがってテンプレートでは、
法律上の記録事項
と
業務管理のための任意項目
を分けて考えることが大切です。
受入れ台帳はこのように作る
古物営業法施行規則の古物商用帳簿は別記様式第15号です。
警視庁が公開する様式には、「受入れ」と「払出し」が分けて設けられています。
受入れ側のExcelでは、たとえば次のように整理できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取引年月日 | 古物を受け入れた日 |
| 区別 | 買受け・委託など |
| 品目 | 腕時計、書籍など |
| 数量 | 1個、3冊など |
| 特徴 | メーカー、型式、番号、傷など |
| 確認措置 | 実際に行った確認措置 |
| 住所 | 相手方の住所 |
| 氏名 | 相手方の氏名 |
| 職業 | 相手方の職業 |
| 年齢・生年月日 | 相手方の年齢等 |
今回のExcelにはさらに、判定の補助として、
- 古物の判定区分
- 対価総額
- 本人確認の参考判定
- 買取記録の参考判定
を設けています。
これらの判定補助欄そのものは法定記録事項ではありません。
「法律上記録する内容」と「自分が判断しやすくするための列」を混同しないことがポイントです。
年齢の代わりに生年月日を記録することもできる
警察庁の現行の解釈運用基準では、生年月日を記録すれば相手方の年齢が明らかになることから、生年月日の記載を年齢の記載とみなすことができるとしています。
そのためExcelでは、
年齢/生年月日
という欄にしておく方法もあります。
「品目」「特徴」はどこまで書く?
公式様式では、「品目」は原則として1品ごとに記載するものとされています。
「特徴」についても、たとえば時計ならメーカー・型・番号・傷、自動車なら登録番号・車名・車台番号など、古物を特定するための具体的な情報を記載する例が示されています。
たとえば腕時計なら、
腕時計|1個|オメガ・○○型・製造番号○○・文字板に傷あり
のように、後から見てもどの古物か分かる情報を残します。
一方、例外的な取扱いもあります。
警察庁は、書籍については同一人から同時に受け取ったものを一定の方法でまとめて記録できるとしています。また、個別査定せず重量だけで取引される衣類も一定の場合にまとめて記録できます。
CD・DVD等は原則どおり1品ごとに記録します。
1万円は「1品の値段」ではなく取引全体で判断する
ここは特に誤解しやすいポイントです。
警察庁は、1万円基準となる「対価の総額」について、
一度に持ち込まれた物品の対価をすべて足し合わせた額
を基準とするとしています。
個々の商品が1万円未満かどうかで判断するものではありません。
たとえば、同じ人が一度に3点を持ち込み、
- 4,000円
- 3,000円
- 4,000円
で買い取る場合、1品ずつは1万円未満でも、対価の総額は11,000円です。
また警察庁は、この1万円について消費税を含まない額で判断するとしています。
Excelで価格を記録する場合は、
「対価総額(税抜)」
という判定用の欄を用意しておくと整理しやすくなります。
1万円未満でも本人確認・買取記録が必要な古物がある
通常は、対価の総額が1万円未満の取引について、本人確認と帳簿等への記載が免除される範囲があります。
しかし、一部の古物は例外です。
現在、1万円未満でも本人確認・買取記録の対象となるものには、
- オートバイ本体
- 一定のオートバイ部分品
- コンピュータゲームソフト等
- CD・DVD等
- 書籍
- エアコンディショナーの室外ユニット
- 電気温水機器のヒートポンプ
- 電線
- 金属製グレーチング
があります。
室外ユニット・ヒートポンプ、電線、金属製グレーチングは、2025年10月1日の規則改正で対象に追加されました。
そのため、古いExcelテンプレートを使い続けている場合は、現在の制度に対応しているか確認した方がよいでしょう。
自分の取引で記録が必要かは「3つの順番」で見る
Excelを使うときは、先に表のセルを見るのではなく、次の順番で確認すると分かりやすくなります。
1.受入れか払出しか
まず、古物を受け取る側の取引なのか、売却等によって払い出す側なのかを確認します。
2.何を取引するのか
オートバイ、自動車、美術品、時計・宝飾品、書籍など、古物の種類によって義務範囲が変わります。
3.対価総額はいくらか
1万円以上か未満かを確認します。
ただし、先ほど説明した「金額にかかわらず対象となる古物」もあります。
警察庁の現行基準では、本人確認・買取記録・売却記録について次のように区分されています。
| 主な区分 | 金額 | 本人確認 | 買取記録 | 売却記録 |
|---|---|---|---|---|
| 美術品類・時計宝飾品類 | 1万円以上 | ○ | ○ | ○ |
| 美術品類・時計宝飾品類 | 1万円未満 | × | × | × |
| 書籍・ゲームソフト・CD/DVD等・電線等 | 金額を問わず | ○ | ○ | × |
| 上記以外の一般的な古物 | 1万円以上 | ○ | ○ | × |
| 上記以外の一般的な古物 | 1万円未満 | × | × | × |
オートバイ・自動車とその部分品については、さらに細かな分岐があります。
今回のExcelには、警察庁の現行別表をもとにした**「判断早見表」シート**を入れているので、該当する区分を確認してください。
買取時と売却時では記録義務が違う
「買ったときに記録するなら、売ったときも全部記録する」と考えやすいですが、売却側の記録義務は同じではありません。
古物営業法施行規則では、売却時の記録義務が残る古物として、
- 美術品類
- 時計・宝飾品類
- 自動車とその部分品
- 自動二輪車・原動機付自転車と一定の部分品
などが定められています。
一方、書籍、ゲームソフト等、CD・DVD等、電線、金属製グレーチングなどは、一定の場合に買取時の確認・記録が必要でも、売却時の記録義務まではありません。
したがって、
「すべての取引ですべての列を埋めるExcel」
ではなく、
受入れと払出しを分けて管理する
方が制度上の違いを把握しやすくなります。
本人確認と古物台帳への記録は同じではない
本人確認と台帳記録も分けて考える必要があります。
相手方の確認義務は古物営業法第15条、帳簿等への記録義務は第16条です。
台帳には、法第15条に基づいて行った確認措置の区分等も記録します。
つまり、
本人確認を行う
ことと、
確認した内容を含め必要事項を帳簿へ記録する
ことは関係していますが、同じ手続ではありません。
「住所と氏名をExcelへ入力したので本人確認も完了」とは考えないようにしましょう。
Excelだから後でまとめて入力してよいわけではない
警察庁は、古物営業法第16条の「その都度」について、
古物を受け取り、または譲り渡したそのたびごと
という意味だとしています。
1週間分や1か月分をまとめて入力することは認められず、少なくともその日に記録すべきものはその日のうちに記載するのが原則です。
Excelを使う場合も、
取引
↓
本人確認等
↓
必要事項を入力
までを日常業務の流れにしておくと、記録漏れを防ぎやすくなります。
Excelの古物台帳は3年間保存する
古物台帳は作成したら終わりではありません。
古物営業法第18条では、帳簿等や電磁的記録について3年間の保存が定められています。
警察庁の運用基準では、本来記録すべき日と実際の入力日が異なった場合、記録すべき日を基準として保存期間を算定するとしています。
また、Excel等で電子保存する場合は、各営業所等で記録を直ちに印刷できる状態にしておく必要があります。
各営業所で印刷可能であれば、データ自体を本社・本部で一括管理することも認められています。
そのためExcel管理では、
- 必要な期間データを保持する
- 営業所で記録を確認できる
- 必要なときにすぐ印刷できる
- 誤削除やデータ消失を防ぐ
ところまで含めて運用を考えておきましょう。
バックアップ等は実務上有用ですが、「古物営業法で特定のバックアップ方法が義務付けられている」という意味ではありません。
古物台帳Excelを使い始める7ステップ
最後に、実際に使い始める順番を整理します。
- Excelテンプレートを用意する
- 受入れ・払出しを分ける
- 法定記録事項を確認する
- 管理番号や価格など必要な任意項目を追加する
- 自分が扱う古物について本人確認・記録義務を確認する
- 取引の都度入力する
- 必要期間保存し、すぐ印刷できる環境を整える
ポイントは、テンプレートの列数ではなく、自分の取引について必要な情報を正しく残せるかです。
よくある質問
古物台帳に価格の記録は必須ですか?
古物営業法第16条には、取引価格そのものは法定記録事項として列挙されていません。
ただし、1万円基準によって本人確認・記録義務が変わるため、Excelで対価総額を管理しておくことには実務上の意味があります。
今回のテンプレートでは、価格を判定・管理用の任意項目として設けています。
1万円未満なら古物台帳は不要ですか?
一律には言えません。
通常は免除される範囲がありますが、書籍、ゲームソフト等、CD・DVD等、室外ユニット・ヒートポンプ、電線、金属製グレーチング、一定のオートバイ等は1万円未満でも対象になります。
金額だけでなく古物の種類も確認してください。
古物台帳は紙に印刷して保存する必要がありますか?
法律上は電磁的方法による記録が認められているため、常に紙だけで保存する必要はありません。
ただし、電子記録を営業所等で直ちに書面表示・印刷できる状態にして保存する必要があります。
公式様式とまったく同じExcelでなければいけませんか?
古物営業法は電磁的方法による記録を認めており、施行規則でも法定事項を取引順に記載できる書類等を帳簿に準ずる書類として定めています。警察庁も、必要事項を網羅したPOSシステムを電磁的方法による記録の例として示しています。
したがって、重要なのは公式様式と見た目を完全一致させることではなく、必要事項を正確に記録できることです。
古物台帳は「Excelを作ること」より、正しく使い続けることが重要
古物台帳は、必要な条件を満たせばExcelで管理できます。
ただし、
ファイルを作った=古物台帳の管理が完了
ではありません。
重要なのは、
何を取引したか
↓
本人確認・記録が必要か
↓
何を記録するか
↓
いつ記録するか
↓
どのように保存するか
まで一続きで考えることです。
今回のExcelテンプレートには、単なる入力欄だけでなく、現行の警察庁基準を確認しやすい判断早見表と記入例も入れています。
まずは自分が扱う古物の種類と取引方法を整理し、1件目から正しく記録できる状態を作りましょう。
個別の取引について判断が難しい場合は、古物の種類、金額、取引方法、現在の台帳を整理したうえで、最新の公式情報や所轄警察署で確認してください。
行政書士へ相談する場合も、これらを整理しておくと相談内容を具体化しやすくなります。
主な公式情報
- e-Gov「古物営業法」
- e-Gov「古物営業法施行規則」
- 警察庁「古物営業法等の解釈運用基準について(令和8年5月14日)」
- 警視庁「帳簿の様式」
- 警視庁「古物営業法施行規則の一部改正について(令和7年10月1日施行)」

