出張買取(行商)のルールと「行商従業者証」|外で売買するなら絶対に知っておくべき制限

【結論】古物商の「行商」とは?
古物商における「行商」とは、自身の営業所(店舗)以外の場所に出向いて古物の取引(買取・販売)を行う営業形態を指します。出張買取や催事出店を行う場合、許可証の区分が「行商する」になっていることが絶対条件であり、さらに従業者は「行商従業者証」の携帯が義務付けられています。

行政書士 小野
こんにちは!
「会社設立のナビゲーター」兼「古物法務の番人」、行政書士の小野馨です。
今回は、古物ビジネスで最も逮捕リスクが高い【行商・出張買取】のルールについて、徹底的に解説します。

「お客様の自宅に行って買取をするだけだから、特別な許可はいらないでしょう?」
「許可証(手帳)をポケットに入れているから大丈夫」

もし、あなたがこのように考えているなら、今すぐ営業をストップしてください。

「行商」は、古物営業法だけでなく、消費者庁管轄の「特定商取引法」という別の法律も絡んでくる、非常に規制の厳しいエリアです。単に許可証を持っているだけでは不十分であり、「行商する」への変更届や、従業員一人ひとりに持たせる「行商従業者証」の作成が必須となります。

この記事では、行政書士として数多くの「出張買取トラブル」を見てきた私が、警察にも消費者センターにも指摘されないための、鉄壁の行商ルールと書類作成法を伝授します。

⚠️ 警告:古物商許可証(原本)を持ち歩いていませんか?
これはプロとして最大の悪手です。万が一紛失すれば始末書もの。現場で携帯すべきは、許可証ではなく『行商従業者証』です。その違いを解説します。

この記事でわかる4つのポイント

  • ✅ 許可証の「行商する・しない」の確認と変更方法
  • ✅ 許可証(原本)と「行商従業者証」の決定的な違い
  • ✅ 100均で自作NG?行商従業者証の正しい「様式・サイズ」
  • ✅ 逮捕事例あり!「アポなし訪問買取(押し買い)」の違法性

そもそも「行商」とは?許可証の「記載」を確認せよ

古物ビジネスを始める際、多くの人が申請書の「行商をしようとする者であるかどうかの別」という欄に、あまり深く考えずに丸をつけてしまいます。しかし、この選択は事業の拡張性を左右する極めて重要な分岐点です。

法律用語としての「行商」と、一般的なイメージのズレを解消し、ご自身の許可証が現在のビジネススタイルに適法な状態になっているか、直ちに確認する必要があります。

【読者の心の壁】: 「うちは店舗があるし、ネット販売がメインだから『行商しない』にしたはず。たまにお客さんに呼ばれて買取に行くけど、それはサービスの一環だから関係ないよね?」

💡 行政書士の現場メモ(失敗回避の知恵)

その「たまに行く買取」が命取りです。古物営業法違反で検挙されるケースの多くは、悪質な組織犯罪ではなく、このような『解釈の甘さ』から生まれます。「行商しない」という許可証を持っているのに、一歩でも営業所を出て取引を行えば、それは「許可の範囲外の営業」=無許可営業に近い違反行為とみなされます。警察は「知らなかった」を許してくれません。

営業所の外で取引するなら「行商する」が必須

まず、古物営業法における「行商(ぎょうしょう)」の定義を正確に理解しましょう。
これは、昔ながらの「風呂敷を背負って売り歩く姿」だけを指すのではありません。法律上は、「自身の営業所以外の場所で、古物の取引(買取・販売・交換・レンタル)を行うこと」すべてを指します。

具体的に、どのような行為が「行商」に該当するのか、現代のビジネスシーンに即して列挙します。

  • 1. 出張買取(訪問購入)
    お客様の自宅や会社に出向いて査定し、その場で買い取る行為。最も典型的な行商です。
  • 2. 催事場・イベントでの販売
    デパートの催事、フリーマーケット、骨董市などにブースを出して販売する行為。これを「デパートの支店扱い」と勘違いしている方がいますが、登録された営業所でない限り、全て行商扱いです。
  • 3. 他の古物商の市場(オークション)への参加
    古物市場(いちば)に出入りして取引を行う場合も、実は行商の許可が必要です。「市場主」が場所を提供しているから不要と思われがちですが、参加者自身の資格として行商権限が求められます。
  • 4. 同業者間取引(仕入れ)
    意外な盲点ですが、あなたが他のリサイクルショップに出向いて商品を仕入れる(買い取る)場合も、相手の店舗=あなたの営業所外での取引となるため、行商に含まれます。

つまり、完全に店舗の中(またはネット上)だけで完結し、一歩も外に出ずにビジネスを行う場合を除き、実質的にほぼ全ての古物商にとって「行商する」の選択は必須なのです。

お手元の「古物商許可証(手帳型の黒い表紙を開いたページ)」を見てください。
許可証の種類の欄に「行商する」と記載されていますか?
もしここに「行商しない」と書かれている状態で、上記のような活動を行っている場合、直ちに変更手続きが必要です。これは単なる記載ミスではなく、営業範囲の違反状態であり、是正指導や処分の対象となり得ます。

あとから「行商する」に変更する方法(書換申請)

もし許可証が「行商しない」になっていた場合、あるいはこれから出張買取を始めたい場合、警察署での手続きが必要です。

ここで注意すべきは、これが無料の「変更届」ではなく、手数料がかかる「書換申請(かきかえしんせい)」になるという点です。
なぜなら、「行商する・しない」という情報は、許可証の券面(表面)にハッキリと印字されている重要事項だからです。この文字情報を書き換えるために、新しい許可証の発行が必要となります。

【手続きの具体的ステップ】

  1. 申請書の作成(別記様式第5号)
    「書換申請・変更届出書」を使用します。「行商をしようとする者であるかどうかの別」という項目の「変更後」欄で「1.する」を選択(丸をつける)します。
  2. 手数料の準備
    書換申請には1,500円(都道府県の収入証紙)が必要です。申請時に警察署の会計窓口で購入します。
  3. 管轄警察署への提出
    主たる営業所を管轄する警察署の生活安全課へ、アポイントを取った上で提出します。原則として即日完了ではなく、新しい許可証ができあがるまで数週間かかります。
  4. 許可証の交換
    後日、新しい許可証が交付されたら、古い許可証と引き換えに受領します。これで晴れて大手を振って出張買取に行けるようになります。

「たかが1,500円、たかが1行の文字」と軽視してはいけません。
お客様の自宅で買取を行う際、お客様から「本当に許可を持っているんですか?」と許可証の提示を求められることがあります。その時、許可証に「行商しない」と書かれていたらどうなるでしょう?
お客様は不信感を抱き、最悪の場合、警察に通報されるリスクさえあります。ビジネスの信頼性(ブランディング)という観点からも、実態に合わせて「行商する」への書き換えを完了させておくことは、経営者の責務です。

📷 画像挿入指示

推奨画像: 「古物商許可証」の様式見本で、「行商する」の箇所を赤丸で強調した図。

生成用プロンプト: [Close-up photo illustration of a Japanese Antique Dealer Permit (Kobutsusho Kyokasho). A red circle highlights the text 'Gyosho-suru' (Do Peddling). Professional and clear documentation style.]

Alt属性: 古物商許可証 行商する 記載 確認 書換申請

📌 この章のポイント

  • 出張買取・催事出店・市場参加はすべて「行商」に含まれる。
  • ✅ 許可証に「行商しない」とある場合、外での取引は違法リスクあり。
  • ✅ 変更には1,500円の書換申請が必要。新しい許可証を作る手続きとなる。

社長もバイトも必携!「行商従業者証」の作成ルール

行商(出張買取や催事販売)を行う際、絶対に忘れてはならないのが、「古物商の氏名、許可番号等が記載された証票」の携帯義務です。

しかし、ここで多くの事業者が致命的な勘違いをしています。「古物商許可証(あの黒い手帳型の本証)」を全員で使い回したり、あるいはコピーを渡したりしていませんか? 法律は、従業員に対して全く別の身分証を持たせるよう義務付けています。それが「行商従業者証(ぎょうしょうじゅうぎょうしゃしょう)」です。

【読者の心の壁】: 「えっ、許可証のコピーじゃダメなの? 社員証や名刺は持たせてるけど、わざわざ専用のカードを作らないといけないの? 面倒くさい…」

💡 行政書士の現場メモ(失敗回避の知恵)

「コピーで代用」は通用しません。古物営業法施行規則第11条には、様式が厳格に定められています。以前、従業員が買取先で警察官に職質され、許可証のコピーを見せたところ、「これは無効だ」と署まで連行されかけたケースがあります。たかがカード一枚ですが、現場のスタッフを守るための「防弾チョッキ」だと思って、ケチらずに作成してください。

古物商許可証(原本)を持ち歩いてはいけない理由

まず、経営者(個人事業主または法人の代表者)自身と、従業員(アルバイト含む)とで、携帯すべきものが異なる点を整理しましょう。

1. 従業員の場合:許可証(本証)はNG
従業員が行商を行う場合、携帯しなければならないのは「行商従業者証」だけです。古物商許可証(本証)やそのコピーには、携帯義務を果たす法的効力はありません。
そもそも、許可証は「営業所」に保管すべき重要書類です(※厳密には営業所への掲示義務はありませんが、見せる義務はあります)。もし従業員がこれを持ち出し、出先で紛失したらどうなるでしょう? 再交付の手続きには始末書が必要となり、警察からの心証も最悪になります。リスク管理の観点からも、従業員に本証を持たせるのは絶対にやめてください。

2. 経営者(個人店主)の場合:許可証か従業者証
許可を受けた本人(個人事業主)が行商を行う場合は、「古物商許可証(本証)」または「行商従業者証」のいずれかを携帯すれば適法です。
しかし、私としては経営者も「行商従業者証(自分用)」を作成し、携帯することを強く推奨します。理由は前述の通り、本証の紛失リスクを回避するためです。本証は金庫にしまっておき、現場にはプラスチックカードの従業者証を持っていく。これがプロの運用です。

行商従業者証の様式(サイズ・材質・写真)と作り方

では、具体的にどのようなカードを作ればよいのでしょうか? 「適当に紙に書いてラミネートすればいい」というわけではありません。古物営業法施行規則(別記様式第13号)により、デザインや材質がミリ単位で指定されています。

【必須要件(様式第13号の規定)】

  • ① 材質
    「プラスチックその他これに準ずる堅固な材質」であること。つまり、ペラペラの紙ではダメです。紙に印刷してラミネート加工するか、プラスチックカードに印刷する必要があります。
  • ② サイズ
    縦5.5センチメートル、横8.5センチメートル(いわゆるクレジットカードサイズ)と定められています。
  • ③ 写真
    従業者の顔写真(縦2.5センチメートル以上、横2.0センチメートル以上)を貼り付ける必要があります。帽子をかぶっていない正面写真です。
  • ④ 表面の記載事項
    ・「行商従業者証」というタイトル
    ・氏名(従業者の名前)
    ・生年月日
    ・顔写真
  • ⑤ 裏面の記載事項
    ・古物商の氏名または名称(会社名)
    ・古物商の住所または居所
    ・許可証の番号(第〇〇号)
    ・主として取り扱う古物の区分(「衣類商」など)
    ・従業者の住所

【作成方法:自作 vs 業者発注】

A. 自作する場合(コスト優先)
家電量販店で「IDカード作成キット(プラスチックカードにインクジェットで印刷できるもの)」が販売されています。これを使えば、パソコンで様式通りにデザインして作成可能です。コストは1枚数百円で済みますが、様式の規定(文字の配置など)を間違えないよう注意が必要です。

B. 専門業者に発注する場合(品質優先)
ネットで「行商従業者証 作成」と検索すると、1枚1,000円〜2,000円程度で作ってくれる業者が多数ヒットします。法律の様式を熟知しているためミスがなく、耐久性も高いため、長く使うならこちらをお勧めします。行政書士事務所で作成代行を行っている場合もあります。

このカードは、取引の相手方(お客様)から提示を求められたら、直ちに提示する義務があります(古物営業法第26条第2項)。
「家に忘れました」は通用しません。違反すれば10万円以下の罰金です。財布や名刺入れに常に入れておくよう、スタッフ教育を徹底してください。

📷 画像挿入指示

推奨画像: 法定様式(別記様式第13号)に基づいた「行商従業者証」の表面・裏面のサンプル図。

生成用プロンプト: [Graphic illustration of 'Peddler Employee ID Card' (Gyosho Jugyoshasho). Front side shows Photo, Name, Birthdate. Back side shows Dealer Name, License Number, Category. Standard credit card size dimensions indicated as 5.5cm x 8.5cm.]

Alt属性: 行商従業者証 様式 サイズ 写真 見本

📌 この章のポイント

  • ✅ 従業員に「許可証のコピー」を持たせるのは法律違反。
  • ✅ 必ず法定サイズ(5.5cm×8.5cm)の「行商従業者証」を作成し携帯させる。
  • ✅ 経営者自身も、本証紛失防止のために従業者証を持つのがベター。

取引場所の制限(デパートの催事場・露店・相手の自宅)

古物商許可の「行商」を持っていれば、日本全国どこでも自由に買取ができると思っていませんか? 答えは「NO」です。

古物営業法第14条では、盗品流通防止のため、古物商が一般人から古物を受け取る(買い取る)ことができる場所を厳格に制限しています。原則として、以下の2箇所以外での買取は禁止されています。

  • 1. 自身の営業所(許可証に登録されている店舗や事務所)
  • 2. 相手方の住所または居所(お客様の自宅や会社)

つまり、これ以外の「第三の場所」での買取取引は、たとえお客様との合意があっても違法となります。

【読者の心の壁】: 「えっ、カフェやファミレスで待ち合わせして買い取るのはダメなの? ホテルのラウンジならちゃんとしてるから平気でしょ?」

💡 行政書士の現場メモ(失敗回避の知恵)

これが最も多い勘違いです。「カフェ」「ファミレス」「駅前のベンチ」「車の中(コンビニ駐車場)」での買取は、すべて法第14条違反となります。理由は『場所の特定性』がないからです。警察は盗品捜査の際、どこで取引が行われたかを追跡する必要がありますが、不特定多数が出入りする飲食店や路上ではそれが困難になります。「お客様が家に来られるのを嫌がったから」という理由は、警察には通用しません。その場合は「宅配買取」か「店舗への来店」を案内するのが正解です。

相手の自宅以外(カフェ・ファミレス)での買取は禁止

この場所制限は、主に「買受(仕入れ)」に対して適用されます。販売することについては、場所の制限は緩やかですが、買取に関しては非常に厳格です。

【NGとなる取引場所の例】
× 喫茶店、レストラン、フードコート
× 公園、路上、駅の構内
× コンビニやスーパーの駐車場(車内取引)
× 相手方の勤務先近くの貸会議室(※相手の会社内ならOKな場合あり)

例外として、相手方が「古物商(同業者)」である場合に限り、場所の制限はありません。業者間取引であれば、カフェで商談してその場で品物を受け取ることも可能です。しかし、相手が「一般消費者」である場合は、必ず「相手のテリトリー(自宅)」「自分のテリトリー(営業所)」のどちらかでなければなりません。

このルールを破ると、「場所の制限違反」として、懲役1年以下または罰金50万円以下の刑罰が科される可能性があります。手軽さの代償としてはあまりに大きすぎます。

仮設店舗(催事場)を出す場合の事前の届出

では、デパートの催事場や、お祭りの露店、フリーマーケットなどで買取を行うことはできないのでしょうか?
もちろん可能です。ただし、それには事前の手続きが必要です。これが「仮設店舗(かせつてんぽ)」の届出です。

営業所以外の場所に仮設の店舗(ブースなど)を設けて古物営業を行う場合、その場所を管轄する警察署へ、事前に届け出なければなりません。

【仮設店舗の3大ルール】

  • 1. 届出期限:3日前まで
    正確には「営業を開始する日の3日前まで」です。これには土日祝日もカウントされますが、警察署が閉まっている場合のリスクを考えると、「1週間前」には提出するのが安全です。「明日からイベントに出ます」といって前日に持っていっても、受理してもらえません。
  • 2. 提出先:開催地を管轄する警察署
    自分の店の近くの警察署ではありません。イベント会場(例:東京ビッグサイトなら東京湾岸警察署)を管轄する署の生活安全課へ提出します。遠方の場合は、郵送や、自社の管轄署経由での提出(経由届出)も可能ですが、その場合は期限が早まることもあるため確認が必要です。
  • 3. 標識の掲示義務
    仮設店舗であっても、営業所と同じように「古物商のプレート(標識)」を見やすい場所に掲示する義務があります。仮設用にもう一枚プレートを作っておくか、持参することを忘れないでください。

なお、単に「商品を販売するだけ」で、買取を一切行わない場合は、この仮設店舗の届出は不要(免除)とされています。
しかし、現場でお客様から「これ下取りしてくれない?」と頼まれる可能性があるなら、念のため届出をしておくのがプロの危機管理です。届出なしで買い取ってしまったら、その瞬間に違反となります。

📷 画像挿入指示

推奨画像: 「買取OKな場所」と「買取NGな場所」のイラスト図解。

生成用プロンプト: [Illustration chart showing permitted transaction locations. Circle (OK): 'Your Shop', 'Customer's House'. Cross (NG): 'Cafe', 'Park', 'Car'. Special condition: 'Event Booth' requires 'Notification'.]

Alt属性: 古物商 買取場所 制限 カフェ 喫茶店 違法 仮設店舗

📌 この章のポイント

  • ✅ 一般客からの買取は「営業所」か「客の自宅」のみ。カフェ・路上は違法。
  • ✅ イベントで買取をするなら、「3日前」までに仮設店舗届出が必須。
  • ✅ 販売のみなら届出不要だが、下取り(買取)をする可能性があるなら出すべき。

【最重要】「アポなし訪問買取」は違法!特商法の罠

「不用品はありませんか?」と突然訪問し、強引に貴金属などを安値で買い叩く「押し買い」が社会問題化したことを受け、2013年(平成25年)に特定商取引法が改正されました。

これにより、古物商許可を持っていても、「アポイントなしの訪問買取(飛び込み営業)」は原則として全面的に禁止されています。

ここが多くの古物商が陥る最大の落とし穴です。「古物営業法」では、行商従業者証を持っていれば行商(出先での取引)が可能とされています。しかし、「特定商取引法」という別の法律が、その営業スタイル(勧誘方法)に強力なブレーキをかけているのです。

【読者の心の壁】: 「でも、近所を回って『何でも買います』ってチラシを配ったり、インターホンを鳴らして営業するのは、ビジネスの自由じゃないの?」

💡 行政書士の現場メモ(失敗回避の知恵)

ビジネスの自由は、消費者の平穏な生活を脅かさない範囲でしか認められません。「ちょうど不用品処分に困っていたから助かった」と言ってくれるお客様もいるでしょう。しかし、法律は『結果』を見ません。『プロセス(勧誘の手順)』を見ます。お客様から「来てください」と呼ばれていないのに、こちらから訪問して勧誘すること自体が、実は違法行為(不招請勧誘の禁止)なのです。知らなかったでは済まされない、特商法の鉄則を解説します。

古物営業法はOKでも「特定商取引法」でアウトになるケース

まず、この「ダブルスタンダード(二重規制)」の構造を理解してください。

  • ① 古物営業法(警察管轄)の視点
    「許可証の行商欄が『する』になっており、行商従業者証を携帯していれば、営業所外で取引してもよい。」
    → これはあくまで「盗品流通防止」の観点からの許可です。
  • ② 特定商取引法(消費者庁管轄)の視点
    「事業者は、消費者から『査定に来てほしい』という事前の要請がない限り、自宅を訪問して買取の勧誘をしてはならない。」
    → これが「訪問購入(ほうもんこうにゅう)」の規制です。

つまり、たとえ警察署で正式に行商の許可を得ていたとしても、特商法の規制を守らなければ違法となります。この「訪問購入」規制の対象となるのは、一般消費者(個人)の自宅での買取です(※相手が事業者である場合や、常連客との取引を除く)。

特に注意すべきは、「自転車や家具などの大型家電を除く物品」です。具体的には、本、CD、DVD、ゲームソフト、衣類、そして最も規制が厳しい「貴金属・ブランド品」などが対象となります。
これらの品物を買い取るために、アポなしで訪問することは法律で固く禁じられています。

禁止されている「不招請勧誘(飛び込み営業)」とは

特商法第58条の6では、「不招請勧誘(ふしょうせいかんゆう)の禁止」が定められています。
これは、「契約を締結する意思を有しない者に対して、契約の締結について勧誘をしてはならない」というルールです。訪問買取においては、さらに厳しく解釈されます。

NG事例1:飛び込み営業(ドア・ノック)
「ご不用な衣類や靴はありませんか?」とインターホンを鳴らして回る行為。これは、お客様が「来てください」と言っていないため、その時点で違法です。たとえお客様が玄関先に出てきて話を聞いてくれたとしても、入り口(勧誘の端緒)が違法であるため、アウトです。

NG事例2:電話勧誘(テレアポ)からの訪問
電話で「何でも買い取ります」と勧誘し、アポを取って訪問する行為。実はこれも、電話口で明確に「〇〇を売りたいので来てください」と依頼されない限り、不招請勧誘とみなされるリスクが高いです。単に「いいよ、来て」と言わせるような誘導尋問的な勧誘は規制対象です。

NG事例3:ついで買い(目的外勧誘)
これが最も摘発されやすいケースです。
お客様から「古本を売りたいから来て」と呼ばれて訪問したとします。これは適法な訪問です。
しかし、査定中に業者が「ところで、使っていない指輪やネックレスはありませんか?」と持ちかけること。これは違法です。

なぜなら、お客様は「本」の査定を依頼したのであって、「貴金属」の勧誘は招請(リクエスト)していないからです。この場合、貴金属については「不招請勧誘」となり、勧誘すること自体が禁止されています。
もしお客様の方から「実は指輪もあるんだけど…」と言い出した場合のみ、査定が可能ですが、その事実を記録に残す(後述の書面に記載する)必要があります。

このように、訪問買取(行商)においては、「お客様からの明確な事前リクエスト(要請)」が全てのスタートラインです。こちらから押しかける営業スタイルは、現代の法律では完全に封じられていると認識してください。

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推奨画像: 「適法な訪問買取」と「違法な押し買い」のフローチャート比較。

生成用プロンプト: [Comparison flowchart. Path A (Legal): Consumer calls -> Dealer visits -> Assessment of requested item. Path B (Illegal): Dealer cold calls -> Visits uninvited -> Solicits jewelry -> Warning sign. Simple icon style.]

Alt属性: 訪問買取 特定商取引法 不招請勧誘 押し買い 違い

📌 この章のポイント

  • アポなし訪問(飛び込み)は、特商法で完全に禁止されている。
  • ✅ 「本を売りたい」と呼ばれて訪問し、「貴金属」を勧誘するのは違法
  • ✅ 警察の許可(行商)があっても、消費者庁の規制(特商法)は免れない。

出張買取における「クーリングオフ」の8日間ルール

「お客様から買い取った商品を、その日のうちに古物市場で売却して現金化した。数日後、お客様から『やっぱりあの指輪、返してほしい』と連絡が来た。」

さて、あなたならどう対応しますか?
「もう売ってしまったので無理です」と断れるでしょうか?

答えは「No(断れない)」です。
特定商取引法により、訪問購入(出張買取)には「クーリング・オフ制度」が適用されます。契約書面を交付してから8日間は、消費者は無条件で契約を解除し、物品の返還を求めることができます。

店舗での買取にはクーリングオフはありませんが、お客様のテリトリー(自宅)で行う行商においては、消費者が冷静な判断ができなくなる可能性があるため、このような保護規定が設けられています。

💡 行政書士の現場メモ(失敗回避の知恵)

最も恐ろしいのは、買い取った品物をすぐに第三者(市場や他の業者)へ転売してしまっているケースです。もしクーリングオフを行使されたら、あなたは転売先からその品物を買い戻してでも、お客様に返さなければなりません。当然、差額や違約金が発生すれば全て自腹です。だからこそ、プロの出張買取業者は『8日間は在庫として保管(寝かせる)』という鉄則を徹底しています。

買取でもクーリングオフ?事業者が渡すべき法定書面

出張買取の現場では、単にお金を渡して品物を受け取るだけでは不十分です。必ず、法律で定められた記載事項(第37条の2)を網羅した「法定書面(契約書)」をお客様に交付しなければなりません。

この書面には、主に以下の内容を記載する必要があります。

  • 1. 物品の特徴(種類、数量、商標など特定できる情報)
  • 2. 買取価格(支払時期・方法)
  • 3. クーリングオフに関する事項(赤枠赤字で目立つように記載)
  • 4. 物品の引渡し拒絶権の告知
  • 5. 事業者の氏名・住所・電話番号・担当者名

特に重要なのが「引渡し拒絶権」の告知です。
お客様は、クーリングオフ期間中の8日間は、業者に対して「品物を渡さない(手元に置いておく)」権利を持っています。「お金は受け取るけど、8日間は気が変わるかもしれないから品物は家で預かっておくね」ということが認められているのです。事業者はこの権利があることを書面で伝えなければなりません。

もし、この法定書面を交付していなかったり、記載内容(赤字枠など)に不備があった場合はどうなるでしょうか?
恐ろしいことに、「クーリングオフ期間のカウントダウン(8日間)」が始まりません。つまり、買取から1年経っても、10年経っても、お客様は「書面をもらっていないからクーリングオフします」と言えば、無条件で契約解除が可能になってしまうのです。

クーリングオフの対象外となる物品(自動車・家電など)

「すべての出張買取で、8日間在庫を抱えなければならないのか?」というと、実は例外があります。
政令により、消費者の利益を損なう恐れが少ないと判断された以下の物品は、クーリングオフ(訪問購入規制)の対象外とされています。

1. 自動車(二輪車を除く) 中古車査定などは金額も大きく、消費者が慎重に判断するため対象外。
2. 家具 タンスやソファなど。大型で持ち運びが困難なため。
3. 大型家電 エアコン、冷蔵庫、洗濯機、テレビなど(※小型家電は対象内)。
4. 本・CD・DVD・ゲーム 古本屋やゲームショップの出張買取など。これらは対象外です。
5. 有価証券 株券など。

つまり、古本屋さんが自宅に来て本の買取をする場合や、リサイクルショップが冷蔵庫を引き取りに来る場合は、クーリングオフを気にする必要はありません。

逆に言えば、「貴金属(指輪・ネックレス)」「ブランドバッグ」「時計」「着物」「美術品」「小型家電(PC・スマホ・カメラ等)」などは、クーリングオフのド真ん中の対象品目です。
これらの商材を扱う場合は、法務リスク管理として「8日間の保管」と「法定書面の交付」を絶対的な業務フローに組み込む必要があります。

📷 画像挿入指示

推奨画像: 「法定記載事項」を含んだ出張買取契約書のサンプル図(特に赤字枠のクーリングオフ告知を強調)。

生成用プロンプト: [Close-up image of a 'Visiting Purchase Contract' (Houmon Kounyu Keiyakusho). Highlights the section 'Cooling-off Notice' enclosed in a red frame with red text. Professional legal document style.]

Alt属性: 訪問購入契約書 クーリングオフ 法定書面 赤枠

📌 この章のポイント

  • ✅ 出張買取(貴金属・ブランド品等)は、契約日から8日間クーリングオフ可能。
  • ✅ 買い取った商品はすぐに転売せず、8日間保管(寝かせる)のが鉄則。
  • ✅ 自動車、大型家電、本・CDなどは対象外(クーリングオフなし)

違反時のペナルティとまとめ

ここまで、古物商の行商・出張買取に関するルールを解説してきましたが、これらを守らなかった場合の代償は、単なる「注意」では終わりません。事業の存続に関わる重大なペナルティが科される可能性があります。

古物営業法違反と特定商取引法違反、この2つの側面からリスクを直視してください。

営業停止と罰金のリスク(警察法と特商法のダブルパンチ)

1. 古物営業法違反のペナルティ
警察署が管轄する古物営業法においては、以下の違反が特に重く処罰されます。

  • 🚨 場所の制限違反(法第14条)
    カフェや路上、許可されていない場所で買取を行った場合。
    【罰則】懲役1年以下 または 罰金50万円以下
    「ちょっとカフェで取引しただけ」で、前科がつく可能性があります。
  • 🚨 行商従業者証の不携帯(法第26条)
    従業員に適切な証票を持たせずに営業させた場合。
    【罰則】罰金10万円以下
    金額は低く見えますが、警察のブラックリスト(要注意業者)に入り、立ち入り検査の頻度が跳ね上がります。
  • 🚨 無許可営業(変更届未提出)
    「行商しない」の許可証で勝手に行商を行った場合、「許可の範囲外」として無許可営業に準ずる厳しい指導が入ります。

2. 特定商取引法違反のペナルティ
消費者庁が管轄する特商法違反(押し買い、不招請勧誘、書面不交付など)のペナルティは、社会的な信用を完全に破壊します。

  • 💀 業務停止命令(最長2年)
    数ヶ月〜年単位で、訪問買取業務ができなくなります。買取が止まれば仕入れが止まり、事業は死にます。
  • 💀 事業者名の公表
    消費者庁や都道府県のホームページに、「違反業者」として会社名・代表者名が晒されます。一度ネット上に名前が出れば、デジタルタトゥーとして残り続け、銀行融資や他社との取引は絶望的になります。

💡 行政書士の現場メモ(最後の助言)

「バレなきゃいい」は大間違いです。訪問買取の違反発覚ルートの9割は、お客様(消費者)からの通報です。「強引に居座られた」「帰ってくれなかった」「クーリングオフに応じない」。これらはお客様が消費者センターへ電話一本入れるだけで発覚します。警察と消費者庁、両方からマークされる前に、足元のコンプライアンス(許可証の書換・従業者証の作成・契約書の整備)を固めてください。

📌 記事の総まとめ

  • 行商をするなら、許可証の「書換申請(1,500円)」をケチらない。
  • ✅ 従業員にはコピーではなく、法定様式の「行商従業者証」を持たせる。
  • アポなし訪問は違法。必ずお客様からの要請を受けてから訪問する。
  • ✅ 貴金属等の買取は8日間のクーリングオフ期間、在庫を動かさない。

【経営者様へ】その出張買取、法的に「シロ」と言い切れますか?

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